第105話 ギルドへ行ってみよう

文字数 827文字



 酒場ではだいたい話が聞けた。
 もういいかな。
 次はギルドだ。

 僕はビールの代金を払って、ぽよちゃんを抱っこすると、酒場をあとにする。もふもふ感がなんとも心地よい。ぽよちゃんは、うちのミャーコみたいに、ミディアムロングくらいの中途半端な長毛種だね。

 外へ出ると、街灯が淡く光を放っている。街の夜はキレイだなぁ。
 霧がうっすらと出ていた。霧に街灯の光が反射して、景色がおぼろに見える。

 ん? なんだろう。
 何かがついてくるような……。
 ふとふりかえると、霧のなか、ゆらゆらと、ゆらゆらと……。

「ギャー! 人魂ー!」

 ゆらり。
 赤いリボンがヒラヒラ。クマのヨダレかけ。

「なんだ。たまりんか」

 ふわ〜ゆらゆらと、たまりんがついてくる。

「た、たまりんもいっしょにおでかけする?」

 ゆら〜り。
 たぶん、肯定したらしい。
 これは、なつかれてるんだろうか?
 ヨダレかけ買ってあげたから?

 幻想的な霧の夜道を僕らは歩いていく。
 ひ、人魂が……オバケがついてくる。
 仲間なのに怖い。
 この奇妙な緊張感……。

 霧のなかですれちがった人たちが何か話していた。
「おい。この街に到着したらしいぞ」
「探そう」
「今度こそ……」
「…………さまはお怒りだ」

 ん? なんか今、イヤ〜な感じしたんだけど。
 気のせいかなぁ?
 ふりかえってみても、二人の男は闇と霧にまぎれて姿が見えなくなっていた。

「かーくん? どげしたかね?」
「あっ、なんでもないよ」

 僕らはギルドへと急いだ。
 二十四時間営業とは言え、早めに宿に帰って、僕らも休みたい。山越えてきたんだから。

 ギルドは街の中心部にあった。
 となりは役所だ。
 商工会議所もある。

 ミルキー城がネズミの国なら、ここは志摩スペイン村っぽい。
 絶妙に作り物くさい、あの感じ。

 僕らは二階建て赤レンガ造りの冒険者ギルドへと入っていった。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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