309 ______________ ‐2nd part‐
文字数 1,148文字
──ふと、空の色が気になって、空を見上げたつもりだったけれど、そのオレの視界には、前後に、左右へと、つんのめり続けながら踊り狂うヴィーの姿が、チョイ斜めの逆様 に映っていた。
なんか、声も出さずに叫んでいるような形相でやんの。
……あはは、あいつ、とうとう本当に気が触れやがったかぁ?
あぁ、そっか……。ヴィーの奴、オレから逃げようとして、セイレーンたちの歌声に捕まったんだ……。
でも、やっぱアホだねぇ。指紋がバッチリ付いてるはずのナイフだけでなく、たぶん、更新したばかりの学生証が入ったバッグまで投げ捨てたまんま。
これでは完全にオレが有利。成り上がりの親どもを、泣かすことになっちまうぜヴィー。
笑うと、息が苦しくなるけれど、ヴィーの乱舞は、まるで無声映画を見ているよう。
ザマァないねぇ、オレも葉植さんの前で、あんな具合に足掻いていたわけか、なるほどね。
ミラノにも、ちゃんとわかっているはずだけれど、できれば直接見せてやりたかった。きっと、おもしろさが違う。
……ほら、あんな、急角度のギネス記録をもつウォータースライダー、『フェルークト』みたいなハイヒールなんか履くもんだから、今にもコケて思いきり捻挫をしそう。
もっと愉しんでいたいのに、ヴィーは、だしぬけに大きくフラついたと思ったら、最後にバタフライみたいな動きを見せて忽然と、テラスの縁から吸い込まれるカンジで消えた──。
どうやら、テラスから下へダイヴしちまったらしい。
やっぱ、手摺りがないと危険だね。あの位置からだと、下にはゴツゴツした大きな庭石があったんじゃないか?
……ドアホゥめが。ったく、オレの折角の配慮をムダにし腐りやがって。余計な気づかいなんかせずに、ブン投げてやればよかった。
それで、今を時めくトリックスター、ヴィヴィアン西木の無言劇はズィ・エンド。
でもまあ、結構愉快だった──。
……視線を正面へ戻すと、ライルブルー、そこには水色に灰色が多く混じった空があった。
そして、その視野の隅っこでは、セイレーンが、オレの行き先を案じてか、祈りを捧げてくれている……。
再び、背後からスマホが鳴った。
倒れ込んだ衝撃でイカレちまったのか、その上オレが押し潰したままでいるせいもあって、音が飛びまくるだけでなく、くぐもり、軽快さまで損なった曲調になっているのが、また滑稽だけれど……。
ゴメンねミラノ。体なんか動かせない、また電話には出られないよ……。
≪──んじゃダメなんだよ楯っ! 今ジェレが――≫
一瞬、ミラノの声が聞こえたような気がした……また、この前みたいに。
それと同時に、ジェレさんが現在、展覧会場の警備員に助けを求めてくれていることも、なんとなくわかった。
会場には、有勅水さんが来ていたことまで。
なんか、声も出さずに叫んでいるような形相でやんの。
……あはは、あいつ、とうとう本当に気が触れやがったかぁ?
あぁ、そっか……。ヴィーの奴、オレから逃げようとして、セイレーンたちの歌声に捕まったんだ……。
でも、やっぱアホだねぇ。指紋がバッチリ付いてるはずのナイフだけでなく、たぶん、更新したばかりの学生証が入ったバッグまで投げ捨てたまんま。
これでは完全にオレが有利。成り上がりの親どもを、泣かすことになっちまうぜヴィー。
笑うと、息が苦しくなるけれど、ヴィーの乱舞は、まるで無声映画を見ているよう。
ザマァないねぇ、オレも葉植さんの前で、あんな具合に足掻いていたわけか、なるほどね。
ミラノにも、ちゃんとわかっているはずだけれど、できれば直接見せてやりたかった。きっと、おもしろさが違う。
……ほら、あんな、急角度のギネス記録をもつウォータースライダー、『フェルークト』みたいなハイヒールなんか履くもんだから、今にもコケて思いきり捻挫をしそう。
もっと愉しんでいたいのに、ヴィーは、だしぬけに大きくフラついたと思ったら、最後にバタフライみたいな動きを見せて忽然と、テラスの縁から吸い込まれるカンジで消えた──。
どうやら、テラスから下へダイヴしちまったらしい。
やっぱ、手摺りがないと危険だね。あの位置からだと、下にはゴツゴツした大きな庭石があったんじゃないか?
……ドアホゥめが。ったく、オレの折角の配慮をムダにし腐りやがって。余計な気づかいなんかせずに、ブン投げてやればよかった。
それで、今を時めくトリックスター、ヴィヴィアン西木の無言劇はズィ・エンド。
でもまあ、結構愉快だった──。
……視線を正面へ戻すと、ライルブルー、そこには水色に灰色が多く混じった空があった。
そして、その視野の隅っこでは、セイレーンが、オレの行き先を案じてか、祈りを捧げてくれている……。
再び、背後からスマホが鳴った。
倒れ込んだ衝撃でイカレちまったのか、その上オレが押し潰したままでいるせいもあって、音が飛びまくるだけでなく、くぐもり、軽快さまで損なった曲調になっているのが、また滑稽だけれど……。
ゴメンねミラノ。体なんか動かせない、また電話には出られないよ……。
≪──んじゃダメなんだよ楯っ! 今ジェレが――≫
一瞬、ミラノの声が聞こえたような気がした……また、この前みたいに。
それと同時に、ジェレさんが現在、展覧会場の警備員に助けを求めてくれていることも、なんとなくわかった。
会場には、有勅水さんが来ていたことまで。