097 これから殺人が起きるんですけど~ ‐1st part‐
文字数 1,839文字
──「ども。久しぶり……ってのも変かもな? まぁとり敢えず、こちらがミラノ・僊河・ヴァケラッタさんだよ」
「ヴェンデェッタでしょ。失礼じゃない、しっかりしてよ」
「ホント困るわ、私たちまで水埜レヴェルと思われたりしたら」
相変わらずおキツいことで……。
それも、阿形 と我利我利 の、連係ツッコみまでが、今もってとはね。
それから、みっちりと仕込んできたんだろう。流暢そうなイタリア語で、早速五人は、ミラノさんへ自己紹介を始めやがった。
剣橋理知華 、初等から中高課程において、トップの成績と生徒会長の地位を連覇しきった上、国際科学オリンピックにも数学で連続出場し、いずれも金に輝いているウィッチ@マス(数学の魔女)と呼ばれた、名実ともに在栖川の女帝だ。
宝婁センパイ同様、附属校生の間で囁かれる
そして、その同胞ども……。
剣橋を守護する阿吽 とも隠喩される内の一人、万年実行委員長で、文部科学大臣杯を手にした元ディベート部部長、阿形の草豪眞弓 。
全国は当然のこと、もはや地球を網羅していると言われる国際的論敵たちと築く、ハイパー
・インフルエンシャルなネットワークまでもっていやがる。
そして、絶巧な表現力で、生徒会の権勢を書記として顕示したばかりか、数数のフォトコンテストで賞を総ナメ。俳句甲子園でも、難なく優勝をかっ攫った新聞部と文芸部の絶対的エースであった吽形 の江陣原梓 。
それから、阿吽たちと、テスト毎に入れ代わり立ち代わり、四天王の座を争っていたのが残る二人。
生徒会副会長だった川溜咲実 は語学の超人。GATTおよび、IMFに加盟する先進工業国の言語はベラベラ。
国際朗読会の日本代表にも選出され、パリ大会において東洋人初の決勝進出。
ロンドン大会では、チョーサーなんぞを吟嘯 し、犇く英語圏の代表を押さえて、世界二位に輝きやがった実績を誇る。
殿 が、生徒会で会計をしていた金樟 りん。
七歳でデイトレーダーを始め、その儲けを資本に一〇歳で起業してもらい、ECサイト運営会社の社長に就任。
初年度に、三億もの純益まであげて、現在も尚、ウェブビジネスの寵児ともて栄やされ続ける我利我利亡者。
……よくもまあ、こんな錚錚 どころか、この国屈指の顔ぶれが、ウチなんかの前にそろったもんだ。
リアクション潰しの仏頂面、威圧的なオーラは、まだまだ衰えを知らないらしい。
あらためて、文科学部の五大明王とでも呼ばせてもらおうか……今更ながら、セイレネスとV&MというWネーム、コラボパワーの絶大さに感服しちゃうね。
ミラノさんは、明王たち五人と握手を交わしつつも、もう片方では、オレの手を離すのを忘れているというおマヌケな絵ヅラ。
そこでオレも、五人の面前で臆面もなくという事実に気づく。
けれど、まぁそれも今更なんで、慌てて手を離すのはやめにした。別に、こいつらにも、どう思われようがかまいやしないんだし。
「とにかく中へ入ってくれよ。実はオレたち、まだ朝メシ喰ってないんだ。だから会の方はそれからね。招いておいてなんだけれど、五人が本当に来てくれるなんて思わなかったもんだから」
「いえ、私たちも、九時は早すぎたかなとは思ったんだけど、昨日は集まれなかったもんだから。その、何て言うか……」
あれま? 草豪が謙虚じみた態度までとるとは……水星が、周回軌道をはずれて突っ込んでこなけりゃいいんだけれど。
「そりゃそうだよな。オレだって、こうしてエスコートしてる自分が、まだ夢を見ているカンジだし──」オレは、ミラノさんとつないでいる手を上げて見せる──「でも、来てくれて嬉しいよね、ミラノさん?」
「ウンッ、嬉しい嬉しい」
「妹のトリノさんも、英語ほどではないにしろ日本語はフツウに大丈夫だから。それと、もう調べはついてるんだろうけれど、今ウチ、下宿屋みたいになっててさ。宝婁センパイの仲間を筆頭に、色んな人の出入りがあるんだ。だから全然、玄関が開いてさえいれば、いつでも遠慮なく上がってくれてかまわないから」
「……そ。了解しておくわ」
誰も応じないと見て、やはり草豪が答えた。
まったく、やっぱ全然、変わってないやこいつらは。
「バレる前に謝っておくと──」オレは、左側の門柱を指差して続ける──「これも、センパイがとり付けたイタズラ用のインターフォンなんで、返答どおりに、行儀よくここで待ってても、全く無意味なんだよな」
「ヴェンデェッタでしょ。失礼じゃない、しっかりしてよ」
「ホント困るわ、私たちまで水埜レヴェルと思われたりしたら」
相変わらずおキツいことで……。
それも、
それから、みっちりと仕込んできたんだろう。流暢そうなイタリア語で、早速五人は、ミラノさんへ自己紹介を始めやがった。
宝婁センパイ同様、附属校生の間で囁かれる
生きる伝説
、リヴィング在栖川レジェンズの仲間入りを果たしていることは間違いない。そして、その同胞ども……。
剣橋を守護する
全国は当然のこと、もはや地球を網羅していると言われる国際的論敵たちと築く、ハイパー
・インフルエンシャルなネットワークまでもっていやがる。
そして、絶巧な表現力で、生徒会の権勢を書記として顕示したばかりか、数数のフォトコンテストで賞を総ナメ。俳句甲子園でも、難なく優勝をかっ攫った新聞部と文芸部の絶対的エースであった
それから、阿吽たちと、テスト毎に入れ代わり立ち代わり、四天王の座を争っていたのが残る二人。
生徒会副会長だった
国際朗読会の日本代表にも選出され、パリ大会において東洋人初の決勝進出。
ロンドン大会では、チョーサーなんぞを
七歳でデイトレーダーを始め、その儲けを資本に一〇歳で起業してもらい、ECサイト運営会社の社長に就任。
初年度に、三億もの純益まであげて、現在も尚、ウェブビジネスの寵児ともて栄やされ続ける我利我利亡者。
……よくもまあ、こんな
リアクション潰しの仏頂面、威圧的なオーラは、まだまだ衰えを知らないらしい。
あらためて、文科学部の五大明王とでも呼ばせてもらおうか……今更ながら、セイレネスとV&MというWネーム、コラボパワーの絶大さに感服しちゃうね。
ミラノさんは、明王たち五人と握手を交わしつつも、もう片方では、オレの手を離すのを忘れているというおマヌケな絵ヅラ。
そこでオレも、五人の面前で臆面もなくという事実に気づく。
けれど、まぁそれも今更なんで、慌てて手を離すのはやめにした。別に、こいつらにも、どう思われようがかまいやしないんだし。
「とにかく中へ入ってくれよ。実はオレたち、まだ朝メシ喰ってないんだ。だから会の方はそれからね。招いておいてなんだけれど、五人が本当に来てくれるなんて思わなかったもんだから」
「いえ、私たちも、九時は早すぎたかなとは思ったんだけど、昨日は集まれなかったもんだから。その、何て言うか……」
あれま? 草豪が謙虚じみた態度までとるとは……水星が、周回軌道をはずれて突っ込んでこなけりゃいいんだけれど。
「そりゃそうだよな。オレだって、こうしてエスコートしてる自分が、まだ夢を見ているカンジだし──」オレは、ミラノさんとつないでいる手を上げて見せる──「でも、来てくれて嬉しいよね、ミラノさん?」
「ウンッ、嬉しい嬉しい」
「妹のトリノさんも、英語ほどではないにしろ日本語はフツウに大丈夫だから。それと、もう調べはついてるんだろうけれど、今ウチ、下宿屋みたいになっててさ。宝婁センパイの仲間を筆頭に、色んな人の出入りがあるんだ。だから全然、玄関が開いてさえいれば、いつでも遠慮なく上がってくれてかまわないから」
「……そ。了解しておくわ」
誰も応じないと見て、やはり草豪が答えた。
まったく、やっぱ全然、変わってないやこいつらは。
「バレる前に謝っておくと──」オレは、左側の門柱を指差して続ける──「これも、センパイがとり付けたイタズラ用のインターフォンなんで、返答どおりに、行儀よくここで待ってても、全く無意味なんだよな」