303 ________ ‐2nd part‐

文字数 1,299文字

 とにかく、スカートの裾から伸びた長すぎて逆に奇っ怪なナマ脚が、最も人目を惹きそう。
 同時に、爪先立っているみたいなハイヒールのせいで、またなんか異様なデカさ。今日は、二メートルを超えていやがるんじゃないだろか?
 オマケに、浮き輪と見間違いそうな三日月型のバッグを提げていて、もう、何をどうしたいのか理解ができない。

 有名になって雰囲気が変っても、まるで方向性が見い出せない点は、相も変わらずってカンジ……。

 まぁ、メジャーデビューを果たした現在、話題沸騰中のモデルときているんだから、オレには何の言い分もない。
 でもその、ヴィヴィアン西木サマが、こんな所で何をなさっているのやら?
 それも、たった一人のとり巻きもなく。

 限定スーツから、ヴィーまでが、セイレネスに開眼してしまった可能性もなくはないんだけれど……ま、それだけはあり得ないかぁ。

 ところが、オレがヴィーへ近寄ろうとすると、ヴィーは逃げ出すみたいに、菜箸を思わせる脚の長い大股で、ビルの陰へと入って行きやがった。

 そっちには、ぬけ道の階段があるから、とり敢えず跡を追うしかない。
 この歩道では、話し込むにも人目があるから、オレとしても好都合だし。

 でも先週といい、ヴィーの奴、何で一言もないんだろう?
 
 オレも、軽くジョギングの速度でビルの角を曲がり、右手にわずかに残る去年のままの樹影へ目をやりつつ、階段口に到着。
 そこからは、ヴィーが高すぎるヒールのせいで、横歩き気味の上、緩やかすぎる段に、却って手こずりながら降りているのが見下ろせた。

 ヴィーなりに急いではいるようだけれど、何の苦もなく追い着けそう。ガチでオレから逃げようってのなら、昏昧‐愚行も甚だしいね。

「なぁヴィー、何で逃げるんだよ? オレは別に、サインやナマ写させろなんて要求はしないっての」

「…………」

 ヴィーは、全くのノーリアクション、コケないようにするだけで精一杯とも思えないんだけれど。
 とにかく、傍まで行ってみようと降りだすと、段一つの高さに比べて踏面の幅が広すぎるから、なんだかハードルを跳んでいるようなカンジになる。

 それでも、一気に駆け下って距離をつめたのに、ヴィーはオレを返り見もしない。それはそれでムカついてくる。

「ヴィーってば、すっかりスターだな。大学でも、結構な騒ぎだったらしいじゃんか。ほらこれ、この間の年鑑の代わりだ、持ってけよ。代わりと言っても全く同じモノだけれどさ」

「…………」

 ヴィーに並んで、年鑑を差し出してみるも、受けとろうとはしてくれない。
 オレへ向けた目も、メイクのせいでわかり難いけれど、また思いっきり睨んでいるみたいだし……オレの、以前同様の気安い口調にムカついたとか?

「あ、その節はどうもありがとう御座いました。ヴィヴィアン西木サマのお蔭で、オレまで前期の学費が浮いちゃいました。その上、奨励金までもらえるらしくて、半年間はどうにか生きて行けそうです」

「…………」

 ヴィーは無言ながら、言葉にできない口汚さで冷罵しまくってるカンジ。オレから逸らしなおした目は、もうチラとも向けやしない。
 ──ダメだなこりゃ、知らんけれど。
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登場人物紹介

登場人物につきましてはイントロ的に一覧で掲載しておりますぅ


当作は主人公:楯の一人称書きをしておりますので、本編内で紹介されるプロフィール情報のムラは、楯との関係性によるところが大きくなりまっす


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