200 ムーヴィ~ン・スナッチ! ‐1st part‐
文字数 1,660文字
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超常的だった昨夜が、まるで嘘っぽいながらも、今日もいつものように、ミラノと二人でTVを眺めながら、朝食を黙黙モグモグ摂っていると、この時間には珍しく、自力でトリノさんが起きて来た。
「おはよトリノさん。どうしたの今朝は、また夢見でも悪かったとか?」
「おは。……今日のキミのテスト、私も参加することになったのでヨロシク。出かける前に、それを言っておこうと思って」
「へっ、トリノさんが?」
昨晩、あのあと、センパイがOKを出してくれた実戦テストに、トリノさんが関わってきちゃうだなんて。
まさかオレ、センパイに気取られるほど、快楽殺人女の存在を仄めかしちまっていたとか?
それで、その役目をトリノさんに頼んだってことなのか? いや、まさかぁ……。
ミラノがまた、わかっていながら黙ってたのかと睥睨してみるも、今朝もワイドショーに釘づけ──いや、知るわけないかぁ。
トリノさんはオレよりも宵っ張りだけれど、ミラノは、ビューティースリーパーもいいトコだから。
二階に上がってしまったあとは、日付が変わろうかという時刻に、起きていられるはずがなかった。
「心配は要らないわ。私には、ミラノと同じチカラはないので」
「そうなの? ……いやでも危ないって。オレは、ガチもマジに全力で臨むんだよっ」
「では、私もガチマジでってことだね? 勿論ポールは、何も知らずに、身近な私へ協力を求めたのだから、危険の心配も要らないわ」
「だから、そうじゃなくて──」
「楯、見る見るっヴィーだよヴィー!」
「へ?」
ミラノが指差すLDに置くには小さすぎるTV画面、それは、どうやらスマホのコマーシャル……。
かなり露出度の高いサイバーチックな衣裳とメイクで踊り動き、
「終わっちゃった~。ヴィーったら、見せ見せの大サーヴィスだよ」
……でも、ヴィーってあんなにバツグンなプロポーションだったかぁ?
なんか全身、一肉削げて本物のプロのモデルってカンジに映ってた。
「今の提供企業、V&Mとは競合関係なので、唏の反応が愉しみだわ」
って、トリノさんは、全然違うトコに目がいっちゃってたみたいだし。
「あぁっ、何だよヴィーの奴、また親のコネだきっと。アラッキニは、ウチの大学ともつながりがある財団系の通信事業会社だから」
「ヴァージョンアップしててよかったんだよ。もうワタシだって、今日はジェレのトコトコ、楯楯これから連れてって」
「ジェレさんのトコって、渋谷のショップ? それとも銀座の方? どの道、まだデパートの開店時間には早いって」
「西麻布だよ。あの無敵ニットを、見るからに無敵にするのを手伝ってもらう約束なのなの。ここで、食べ物以外を煮たり漬けたりしたら、芭場里衣に好きじゃなくなられちゃうもん」
あのニットを煮たり……漬けたり?
オレが妙な想像を膨らませていると、ミラノはキレイに食べ終えた皿へ、いつものようにブツブツと感謝の祈りを捧げながら立ち上がった。
そして、ソファーへは移らずに、LDを出て行こうとする。
「ええっ、そんなに急ぐの? 時間的にまだ早いから絶対」
「ジェレは今日、仕事はお休みなんだよ。デパートのある通りを、ずっと行ったトコに住んでるんだよ」
「休みだからこそ迷惑にならないかなぁ? じゃぁオレも、急いで支度を済ませるね」
──ミラノに、オレの返事は聞こえているのかいないのか、とっととドアを閉められてしまった。
「……やっぱ、気に入らないのかな? 今日のテスト、って言うか、オレのやろうとしてること全部……」
「ミラノが? まさか。ミラノは私以上にお祭り好きだよ。街が壊れて、死者が何人も出るような祭りでも、口では非難がましいことを言いながら、人一倍感動してるような性格をしているので」
「オレのテストもお祭りですかぁ?」
おっと。つい愚痴っぽく、口を衝いて出ちまった。トリノさんが、そんなこと言ってやしないのは、重重承知しているんだけれど。
超常的だった昨夜が、まるで嘘っぽいながらも、今日もいつものように、ミラノと二人でTVを眺めながら、朝食を黙黙モグモグ摂っていると、この時間には珍しく、自力でトリノさんが起きて来た。
「おはよトリノさん。どうしたの今朝は、また夢見でも悪かったとか?」
「おは。……今日のキミのテスト、私も参加することになったのでヨロシク。出かける前に、それを言っておこうと思って」
「へっ、トリノさんが?」
昨晩、あのあと、センパイがOKを出してくれた実戦テストに、トリノさんが関わってきちゃうだなんて。
まさかオレ、センパイに気取られるほど、快楽殺人女の存在を仄めかしちまっていたとか?
それで、その役目をトリノさんに頼んだってことなのか? いや、まさかぁ……。
ミラノがまた、わかっていながら黙ってたのかと睥睨してみるも、今朝もワイドショーに釘づけ──いや、知るわけないかぁ。
トリノさんはオレよりも宵っ張りだけれど、ミラノは、ビューティースリーパーもいいトコだから。
二階に上がってしまったあとは、日付が変わろうかという時刻に、起きていられるはずがなかった。
「心配は要らないわ。私には、ミラノと同じチカラはないので」
「そうなの? ……いやでも危ないって。オレは、ガチもマジに全力で臨むんだよっ」
「では、私もガチマジでってことだね? 勿論ポールは、何も知らずに、身近な私へ協力を求めたのだから、危険の心配も要らないわ」
「だから、そうじゃなくて──」
「楯、見る見るっヴィーだよヴィー!」
「へ?」
ミラノが指差すLDに置くには小さすぎるTV画面、それは、どうやらスマホのコマーシャル……。
かなり露出度の高いサイバーチックな衣裳とメイクで踊り動き、
ムーヴィ~ン・スナッチ!
なんて機種名とともに、チンケな悩殺ポーズをキメるのは確かにヴィーだった!「終わっちゃった~。ヴィーったら、見せ見せの大サーヴィスだよ」
……でも、ヴィーってあんなにバツグンなプロポーションだったかぁ?
なんか全身、一肉削げて本物のプロのモデルってカンジに映ってた。
「今の提供企業、V&Mとは競合関係なので、唏の反応が愉しみだわ」
って、トリノさんは、全然違うトコに目がいっちゃってたみたいだし。
「あぁっ、何だよヴィーの奴、また親のコネだきっと。アラッキニは、ウチの大学ともつながりがある財団系の通信事業会社だから」
「ヴァージョンアップしててよかったんだよ。もうワタシだって、今日はジェレのトコトコ、楯楯これから連れてって」
「ジェレさんのトコって、渋谷のショップ? それとも銀座の方? どの道、まだデパートの開店時間には早いって」
「西麻布だよ。あの無敵ニットを、見るからに無敵にするのを手伝ってもらう約束なのなの。ここで、食べ物以外を煮たり漬けたりしたら、芭場里衣に好きじゃなくなられちゃうもん」
あのニットを煮たり……漬けたり?
オレが妙な想像を膨らませていると、ミラノはキレイに食べ終えた皿へ、いつものようにブツブツと感謝の祈りを捧げながら立ち上がった。
そして、ソファーへは移らずに、LDを出て行こうとする。
「ええっ、そんなに急ぐの? 時間的にまだ早いから絶対」
「ジェレは今日、仕事はお休みなんだよ。デパートのある通りを、ずっと行ったトコに住んでるんだよ」
「休みだからこそ迷惑にならないかなぁ? じゃぁオレも、急いで支度を済ませるね」
──ミラノに、オレの返事は聞こえているのかいないのか、とっととドアを閉められてしまった。
「……やっぱ、気に入らないのかな? 今日のテスト、って言うか、オレのやろうとしてること全部……」
「ミラノが? まさか。ミラノは私以上にお祭り好きだよ。街が壊れて、死者が何人も出るような祭りでも、口では非難がましいことを言いながら、人一倍感動してるような性格をしているので」
「オレのテストもお祭りですかぁ?」
おっと。つい愚痴っぽく、口を衝いて出ちまった。トリノさんが、そんなこと言ってやしないのは、重重承知しているんだけれど。