080 _______________ ‐2nd part‐

文字数 1,656文字

「ダメなんですっ。あくまでオレとしては、ですけれど」

「……まぁ、実際は水埜クンの話だもんねぇ」

「親ガチャに当たっただけのチートによる想像を絶したアンフェアは、もたざる者が知ったからには本音でも建前でも黙殺はしたくない、できない。つまり、そこが悩みどころってわけなんです、このお話は」

「……そおねぇ、じゃぁその親の方に取り入って、コネを根刮ぎちょうだいしちゃうの。フヤケた家ごと失脚させちゃうってのはどお? とってもサスペンス的じゃない?」

 ……モォ~有勅水さんってば、コネだけはどうしようとも手放したくないらしい。
 ったく、気骨の髄まで女神っぽいってか?

「オレは、サスペンス向きのキャラじゃ全然ないことぐらい自覚してます。ブッチャケ、オレだってコネは惜しいですけれど」

「でしょでしょぉ?」

「……何て言うか、もっと年相応らしく、清純に懲らしめてやりたいってトコですか? それなら有勅水さんだって文句ないでしょ?」

「あらぁ、ジュヴナイル的な展開も好さそおねぇ。それで? 充分悩んで煮詰まったのなら、あとは実行あるのみでしょう。楯クンがどんな手を考えたのか、チョイとおネエさんに聞かせてごらんなさいな」

 その××的って言う表現、随分とお気に入りみたいだけれど、なんかモゾモゾとムカついてくる……まぁ女神様のお気に入りでは、オレにはどうしようもない。

「笑わないでくださいよね、本当に」

 それでも、オレ的にはこれ以上はない手立てだと思うので、なるべくなら女神様の御賛同を(たまわ)りたかった。
 計画の巨細を、懇切丁寧に佞弁(ねいべん)を弄させてもらうことにする。

 文科学部の一年生で、あのブルーレター、グレーがかった水色の封書を送られるのが五パーセントの一五人程度。
 その中には、オレとは違い、初年度前期から特待生として進学した附属あがりの五人が入っているはず。
 あいつらは、馴れ合いや腐れ縁で連るんじゃいない。きっと一人として欠けることなく、その座を維持し続けていることだろう。
 
 つまりは、粒選りの附属あがりどもの力を借りて、ヴィーを、特待生なんて場違いも甚だしい地位から弾き飛ばしてやるんだ!

 ウチで再び開かれる必勝講座の情報を横流しして、それを上まわるレポートを提出してもらっちまおう、ってだけのことなんだけれど、刺客にするその五人は、全員が女子。
 しかもオレは、全く相手にされていなかったと言うか、関わる価値のない人外と完全に見限られていたもんだから、果たしてオレの浅謀どおりになんて、協力を得ることなどできるのかどうか?
 そんな手で、あの五人が今回確実にヴィーを、いや、熱血・ド・トリオの、客員研究員としての派遣留学レヴェルを凌駕できるのかも不確定だし。

 それに、あいつら五人の親たちは、間違いなく大学の上位組織である財団絡み。
 財団系の事務所にパートナーとして所属する弁護士か、そのものズバリ、財団の幹部コースにいる職員だ。
 娘をまだ海外へ出したくないという理由で、敢えて大学まで在栖川に進ませたことからも、頑固で石頭な保守的タイプであると推測もできる。

 そして、不愉快な情報の漏洩元だけはオレだとはっきりバレちまうわけで、結局は、処罰の鉾先が、一族の栄耀栄華パワーに庇護されたヴィーへは届かず、オレだけをモロ刺しにする可能性が極めて高いときている。

 とにかく露顕させる内幕が内幕だけに、まずオレの話に、あの五人が聞く耳をもってくれるのかからして非常に疑わしい。
 中高課程で、オレがあいつらの間に割って入るような成績上位者だったなら、それなりの信憑性や説得力をもったんだろうけれど、生憎その対極に位置するベベタコが指定席だったもんだから……。

 まぁ附属あがりの交契(こうけい)なんて、男女を問わずそんなモノだ。
 オレ自身が今だそうであるように、自分の価値観のコアを揺るがすことなど、即座には受け容れない。

 さらにオレとは違い、余計なことをグダグダ考えるくらいなら、あいつらは告発という安易で正当な手段を、大手を振って選択しそうなんだよなぁ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物につきましてはイントロ的に一覧で掲載しておりますぅ


当作は主人公:楯の一人称書きをしておりますので、本編内で紹介されるプロフィール情報のムラは、楯との関係性によるところが大きくなりまっす


ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み