081 _______________ ‐3rd part‐
文字数 1,642文字
あいつらもまた、ヴィーとは別の意味で親たちのチカラに庇護されて、人生のムダや無意義をスキップするのが当然になっていそうだし。
在栖川あるあるの御多分に洩れず、初等課程の以前から、生活の全てを勉強中心にまわすことができる生活をさせてもらっていやがるあの五人。
何せ、流行語大賞のギャグには笑わなくとも、日銀の金融政策の失敗には笑い、超大作映画もハリウッドスター目当てではなく、ヒットさせた制作力や英語表現力を、身にすり込ませる一環として観るほどときているんだから──。
「カワユくない同期たちねぇ。ウチの本部にもいるわ、そお言う連中」
「ま、そんななりゆきで、今朝から沈みがちってわけなんですよ。いつもよりもズズ~ンと」
「いいんじゃない? 毒をもって毒を制すねっ。よぉ~し仕上げは私に任せときなさいな、水埜クンに、
「……えっと、それって?」
「本当はリュック・ベッソン的か、リドリー・スコット的なのが好みなんだけど、生憎、今どちらも、手もちのカードに入ってないのよねぇ」
「ブライアン・デ・パルマ的なカードなら、もっているんですか?」
……はて、どんな作品の映画監督だったか?
でも、
「それは言葉の綾 子さんだってば。二時間以上も奪われる映画なんて私、イライラしちゃって観てられないもん」
「……あぁはい、実はオレもです」
二時間以上もあったら、時給を稼ぐかNBAのゲームを観るかのどっちかだ。
「さぁ~社に戻らなくちゃ。詳細はまた電話するけど、いい水埜クン? スマホだけはちゃんと携帯しといてちょうだいよ、スタンド・アローンなのはもぉ、ディース一人で充分っ」
そうおっしゃる割りには、実に愉しそうな有勅水さんだった。
なので、「はいっ。わかりました」と、異議や不平を唱えるのはやめておく。
ゼロハリバートンと、たぶん、アクアスキュータムのコートを慌しく引っ掴み「じゃぁ水埜クン、あとはよろしくねっ」と元気溌剌にプレハブハウスを出て、外でもよく通る声でナフサさんに指示と帰りの挨拶を発しながら、軽やかな靴音が遠ざかって行った。
……さて。よろしくと言われたものの、ムッシューの仕事が終わった今、オレは何をすればよろしいんだろう?
とり敢えず、首を一ヒネりしてから、ロングデスクの上の使用済み紙コップを集めて、屑入れに突っ込まれていた弁当の容器と一緒にゴミ袋へと片づけた。
そのあとは、特に思いつかない。
プレハブハウスの横の戸から、ナフサさんたちの様子を覗いてみれば、てきぱきと作業を熟している六人に、オレが手伝えることなど何もなさそう。
ナフサさんとも、もう少し話をしたかったけれど、ただ待っているのも失礼だ。
それもまたの機会にして、ここは一先ず予定どおり、一旦家に帰ってから、葉植さんの新作を買いに行くとしようかな。
収集場所に運ぶためゴミ袋を持って、オレもプレハブハウスをあとにする。
セイレーンたちの合間からナフサさんに声をかけると、ちょうどクレーンを解体し終えたところのようで……。
常人ならば太く重い鉄骨だろうに、まるでバットでも担ぐかのようにして振り返るナフサさんは「また今度ゆっくり会おう」と、温顔をさらに綻ばせた。
それがどうにもキングコングかハルク的。……なんだか、オレも、有勅水さん好みの一大スペクタル的人生の一キャストになってしまった気がしてくる。
お節介な月の女神、ローンに繋縛された巨人兵、芸術家の皮を被った悪霊憑き、そしてフルメタルの妖鳥が忌数羽。
ならば、何のとり柄もないオレは、差しづめ、女神様御一向に助けを求めた村人A。
呆気なく、第一ステージのボスキャラに瞬殺されちまうのが関の山……。
嗚呼、話すんじゃなかったぁ──。
在栖川あるあるの御多分に洩れず、初等課程の以前から、生活の全てを勉強中心にまわすことができる生活をさせてもらっていやがるあの五人。
何せ、流行語大賞のギャグには笑わなくとも、日銀の金融政策の失敗には笑い、超大作映画もハリウッドスター目当てではなく、ヒットさせた制作力や英語表現力を、身にすり込ませる一環として観るほどときているんだから──。
「カワユくない同期たちねぇ。ウチの本部にもいるわ、そお言う連中」
「ま、そんななりゆきで、今朝から沈みがちってわけなんですよ。いつもよりもズズ~ンと」
「いいんじゃない? 毒をもって毒を制すねっ。よぉ~し仕上げは私に任せときなさいな、水埜クンに、
人生は万事ブライアン
・デ
・パルマ的でクリフハンガーな塞翁が馬
なんだって教えてあげちゃうぅ」「……えっと、それって?」
「本当はリュック・ベッソン的か、リドリー・スコット的なのが好みなんだけど、生憎、今どちらも、手もちのカードに入ってないのよねぇ」
「ブライアン・デ・パルマ的なカードなら、もっているんですか?」
……はて、どんな作品の映画監督だったか?
でも、
全ては最後の最後まで終わってみなけりゃわからない
カードだなんて、きるのが有勅水さんだけに、かなりヤバい波乱が待ち受けてしまうんじゃないのかぁ!「それは言葉の
「……あぁはい、実はオレもです」
二時間以上もあったら、時給を稼ぐかNBAのゲームを観るかのどっちかだ。
「さぁ~社に戻らなくちゃ。詳細はまた電話するけど、いい水埜クン? スマホだけはちゃんと携帯しといてちょうだいよ、スタンド・アローンなのはもぉ、ディース一人で充分っ」
そうおっしゃる割りには、実に愉しそうな有勅水さんだった。
なので、「はいっ。わかりました」と、異議や不平を唱えるのはやめておく。
ゼロハリバートンと、たぶん、アクアスキュータムのコートを慌しく引っ掴み「じゃぁ水埜クン、あとはよろしくねっ」と元気溌剌にプレハブハウスを出て、外でもよく通る声でナフサさんに指示と帰りの挨拶を発しながら、軽やかな靴音が遠ざかって行った。
……さて。よろしくと言われたものの、ムッシューの仕事が終わった今、オレは何をすればよろしいんだろう?
とり敢えず、首を一ヒネりしてから、ロングデスクの上の使用済み紙コップを集めて、屑入れに突っ込まれていた弁当の容器と一緒にゴミ袋へと片づけた。
そのあとは、特に思いつかない。
プレハブハウスの横の戸から、ナフサさんたちの様子を覗いてみれば、てきぱきと作業を熟している六人に、オレが手伝えることなど何もなさそう。
ナフサさんとも、もう少し話をしたかったけれど、ただ待っているのも失礼だ。
それもまたの機会にして、ここは一先ず予定どおり、一旦家に帰ってから、葉植さんの新作を買いに行くとしようかな。
収集場所に運ぶためゴミ袋を持って、オレもプレハブハウスをあとにする。
セイレーンたちの合間からナフサさんに声をかけると、ちょうどクレーンを解体し終えたところのようで……。
常人ならば太く重い鉄骨だろうに、まるでバットでも担ぐかのようにして振り返るナフサさんは「また今度ゆっくり会おう」と、温顔をさらに綻ばせた。
それがどうにもキングコングかハルク的。……なんだか、オレも、有勅水さん好みの一大スペクタル的人生の一キャストになってしまった気がしてくる。
お節介な月の女神、ローンに繋縛された巨人兵、芸術家の皮を被った悪霊憑き、そしてフルメタルの妖鳥が忌数羽。
ならば、何のとり柄もないオレは、差しづめ、女神様御一向に助けを求めた村人A。
呆気なく、第一ステージのボスキャラに瞬殺されちまうのが関の山……。
嗚呼、話すんじゃなかったぁ──。