079 女神と組んだリアルMMORPG ‐1st part‐
文字数 1,667文字
有勅水さん一人で、一体どんだけ買って来たのやら?
袋の中には二尾ばかり残っていた。でも、それを見た途端に空腹を強烈にカンジてくる、オレの朝メシも鯛焼きということになりそうだ。
「じゃぁ、充分悩んで煮詰まったんで、話しちゃいますよっ。目下の者を導くのは、目上の者の義務ですからね、いいんですか?」
「いいわよぉ。それで、どんなコ? 同じ大学のコなのかしら~」
……最近、漸く判明したことではあるものの、有勅水さんって案外、自分本位に思い込みが激しいと言うか、結構方向違いに先走りする性分なんだよねぇ。
まぁ、いつも煮えきらない返事や態度をするオレが間怠いんだろうけれど。
それに有勅水さん自身、本音では定職になど就かずに、まだまだお気楽な身分でいたかったらしく、やたらオレを大学生のステレオタイプにハメて揶揄いたがるし。
オレの気も知らんと、いつもおネエさんぶってくれちゃって……。
大体、在栖川がフツウじゃないと言ったのは有勅水さんのクセに。ウチの学生に恋だの愛だのと、わかり易く悩んでる奴などいるもんかっ。
「まぁ、そうなんですけれど。そのコの家庭が未だに親離れ子離れができていないんですよ。しかも、何でもカネと権勢で解決するのが、悪怯 れもない常套手段になっちまってて、それではまず、人としてダメだと思うわけなんです、オレは」
「あらぁ純文学的、いいじゃない。それでそれで?」
「……それでですね、オレは彼女に、せめて生き方ぐらいは真っ当になってもらわないことには、とてもじゃないけれど、つき合ってなんかいけやしないと判断まではしました。まあ、したことはしたんですが……」
「えーっ諦めちゃうの? いいコになりすぎよぉ水埜クン。若いんだから、もっとグッと行って、ガッと掴まえてあげなくっちゃぁ」
何なんだ? そのグッとか、ガッって。オレとしては、そこをもっと具体的に聞かさせて欲しいよねぇ。
「……でもですよ、喩えばそのコが、部内では営業成績の面で、有勅水さんとライヴァル関係にあると、自他ともに認められている社員だったとします」
「何いきなり? そんな喩えでお話が成立するの?」
「するんです。いいですか? そのライヴァル社員が、親のコネを使って部内でトップの業績をあげているという秘密を、その人の好意とともに知ってしまったら、有勅水さんならどうします?」
「……どおって言われてもぉ、ン~……」
「それも、有勅水さんのことが好きだから、親のコネを分けてあげるって、もちかけられるんですよ。これはそう言ったお話なんです」
「それじゃワイドショー的もいいトコじゃない? ダメよぉ、少年は、もっと損得ナシの清純な恋愛をしなくちゃぁ。社会に出たらお終いなのよっ、もお至る所でドロドロなんだから」
「ドロドロなんですか有勅水さん?」ガーッ、なんか激ショック!
「やぁねぇ、私じゃなく周りがね~。まぁ私なら、コネだけ分けてもらえるだけもらって、そんなヤリ方じゃ女のハートはつかめないって、身に沁みさせてあげるわ。一挙両得でしょ?」
血圧上がったぁ。女神様がドロドロだなんて、神話の世界だけにしといて欲しい……。
気の取りなおしに一齧りした小倉バターは、ヤケに塩っぱかった。口なおしにもう一尾の方をっと。
「有勅水さん、そんなんじゃ、一七歳未満の発想ですって」
「エ~ッ、そおなのぉ?」
「相手は、一応対等な立場だからどうにでもなります。問題は、その子煩悩な親の方なんですから。最愛の我が子が翻弄されているのを見過ごしてくれると思いますか?」
「……親まで? またいきなりねぇ」
「有力なコネがたくさんある上に、我が子の状況を報告させる監視役まで送り込んでるような親なんですよ。ヘタすりゃ有勅水さんはクビ、最悪は社会的に抹殺です」
「ウ~ン。なら、全部聞かなかったことにして、コネは本当に困った時にだけ、チョコッと使わせてもらっちゃうとかはダメ~?」
ったく、この女神様はぁ……そんな戯笑と一緒に小首を傾げられちゃったら、オレのこんな話自体を全部ポイしちまいたくなるでしょうが!
袋の中には二尾ばかり残っていた。でも、それを見た途端に空腹を強烈にカンジてくる、オレの朝メシも鯛焼きということになりそうだ。
「じゃぁ、充分悩んで煮詰まったんで、話しちゃいますよっ。目下の者を導くのは、目上の者の義務ですからね、いいんですか?」
「いいわよぉ。それで、どんなコ? 同じ大学のコなのかしら~」
……最近、漸く判明したことではあるものの、有勅水さんって案外、自分本位に思い込みが激しいと言うか、結構方向違いに先走りする性分なんだよねぇ。
まぁ、いつも煮えきらない返事や態度をするオレが間怠いんだろうけれど。
それに有勅水さん自身、本音では定職になど就かずに、まだまだお気楽な身分でいたかったらしく、やたらオレを大学生のステレオタイプにハメて揶揄いたがるし。
オレの気も知らんと、いつもおネエさんぶってくれちゃって……。
大体、在栖川がフツウじゃないと言ったのは有勅水さんのクセに。ウチの学生に恋だの愛だのと、わかり易く悩んでる奴などいるもんかっ。
「まぁ、そうなんですけれど。そのコの家庭が未だに親離れ子離れができていないんですよ。しかも、何でもカネと権勢で解決するのが、
「あらぁ純文学的、いいじゃない。それでそれで?」
「……それでですね、オレは彼女に、せめて生き方ぐらいは真っ当になってもらわないことには、とてもじゃないけれど、つき合ってなんかいけやしないと判断まではしました。まあ、したことはしたんですが……」
「えーっ諦めちゃうの? いいコになりすぎよぉ水埜クン。若いんだから、もっとグッと行って、ガッと掴まえてあげなくっちゃぁ」
何なんだ? そのグッとか、ガッって。オレとしては、そこをもっと具体的に聞かさせて欲しいよねぇ。
「……でもですよ、喩えばそのコが、部内では営業成績の面で、有勅水さんとライヴァル関係にあると、自他ともに認められている社員だったとします」
「何いきなり? そんな喩えでお話が成立するの?」
「するんです。いいですか? そのライヴァル社員が、親のコネを使って部内でトップの業績をあげているという秘密を、その人の好意とともに知ってしまったら、有勅水さんならどうします?」
「……どおって言われてもぉ、ン~……」
「それも、有勅水さんのことが好きだから、親のコネを分けてあげるって、もちかけられるんですよ。これはそう言ったお話なんです」
「それじゃワイドショー的もいいトコじゃない? ダメよぉ、少年は、もっと損得ナシの清純な恋愛をしなくちゃぁ。社会に出たらお終いなのよっ、もお至る所でドロドロなんだから」
「ドロドロなんですか有勅水さん?」ガーッ、なんか激ショック!
「やぁねぇ、私じゃなく周りがね~。まぁ私なら、コネだけ分けてもらえるだけもらって、そんなヤリ方じゃ女のハートはつかめないって、身に沁みさせてあげるわ。一挙両得でしょ?」
血圧上がったぁ。女神様がドロドロだなんて、神話の世界だけにしといて欲しい……。
気の取りなおしに一齧りした小倉バターは、ヤケに塩っぱかった。口なおしにもう一尾の方をっと。
「有勅水さん、そんなんじゃ、一七歳未満の発想ですって」
「エ~ッ、そおなのぉ?」
「相手は、一応対等な立場だからどうにでもなります。問題は、その子煩悩な親の方なんですから。最愛の我が子が翻弄されているのを見過ごしてくれると思いますか?」
「……親まで? またいきなりねぇ」
「有力なコネがたくさんある上に、我が子の状況を報告させる監視役まで送り込んでるような親なんですよ。ヘタすりゃ有勅水さんはクビ、最悪は社会的に抹殺です」
「ウ~ン。なら、全部聞かなかったことにして、コネは本当に困った時にだけ、チョコッと使わせてもらっちゃうとかはダメ~?」
ったく、この女神様はぁ……そんな戯笑と一緒に小首を傾げられちゃったら、オレのこんな話自体を全部ポイしちまいたくなるでしょうが!