083 ____________ ‐2nd part‐
文字数 1,487文字
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オレに淹れさせたお茶へ口もつけぬまま、スマホで仕事を片づけ続けていた女神様は、宝婁センパイが仲間を引き連れて帰って来たのを機に、オレという存在を思い出してくれたようであった。
それもセンパイが、オレに玄関に脱ぎ置かれた靴の多さと、家の前に駐められている引越し会社のトラックのことを尋ねて初めて、オレの口を封じるみたいに、またセンパイ達へのお茶汲みを命じただけ。
オレは、向かいの席から立った瞬間に再び蚊帳の外だ。
けれどセンパイ達も、早速仕事の話を始めたいらしく、その空気を読んで有勅水さんとオレはダイニングテーブルへと移動。
漸くまともに相手をしてもらえるムードになった。
「……あのぉ、どう謝れば許してもらえますか? スマホの充電はしてますし、これからもホント気をつけます。センパイが出て揶揄ってもかまわないんでしたら、ウチの電話番号も教えますから」
「別にぃ。許すも許さないも、刑の執行中だもん」
もぉ~、そんなオトナげないことを。
そもそも事後承諾の刑では、事後にオレが承諾しないと成立しないわけだし。
でも、そんなことを口にしたら、また角が立つだけだろうから絶対に言えない。
まぁオレは、どうせ承諾するに決まっているし、有勅水さんにも、承諾させる自信があるから敢えてそう言っているんだろうし……。
まだ事後にはなっていないという理屈で、一応ポーズを取っているだけで、引っ越しが済んだらケロッと元に戻るのかもしれない。
それまで黙って待つしかないのかな?
オレにとっては、どの道キツい刑だよなぁ。
こちらは気が気じゃないってのに、有勅水さんは悠長に今届いたメッセージを確認すると、これまた、オレをそっち退けで返信し始める──。
「楯クン、本当に反省してるぅ? 本当に今スグ許して欲しい?」
「はいっ、できれば。本当にすみませんでしたっ」
そこで初めて、本当に、今日初めて女神様は莞爾と微笑んでくれた。
ホッと一息どころか、幽体離脱したみたいな解放感!
「なら、これから成田へ行って、大事なお客様を出迎えて来て」
「オレがですか? って言うかオレなんかでいいんですか?」
「行くの? 行かないの?」
「勿論行きます……いえ、行かせていただきます当然っ」
「じゃぁよろしくね。とり敢えずスグに向かって、困ったらその都度電話して」
そう言いながら有勅水さん、ゼロハリバートンからオレンジ色をした長財布を取り出して、すっとオレの前へ置いた。
……H形のバックルに、ベルトがどうにか通っている状態。それほどパンパンで、結構な厚みときている。
「領収書を忘れないように。もしそれ以上かかったら、あとは楯クンの自腹だと思ってね」
「そんな、スマホは充電中なんですって。大体、誰を出迎えればいいんですか? それに、そのあとはどうすれば」
だのに有勅水さんは、これ以上ないといったニコニコ顔を見せて、
それだけで、再び誰かにメッセージを打ち始めてしまった。
……仕方がない、行くしかなさそうだ。
オレは厳めしい札入れを粛粛と携え、腰を上げた。
ここでゴネては、センパイまでが絡んで来て、ほぐれかけている関係が一層こじれてしまいかねないし。
それに女神様は、とり敢えずスグに向かってとのおおせだから、モタモタすれば、するだけ天咎は重くなる。
気合を入れるべく、バッシュはAJⅠレトロ・プレイオフカラーをチョイス。
これで、見かけ的にはオレのフーリィー‐アームド(完全武装)!
いざ出撃、まずはコンヴィニでモバイルバッテリーのゲットだっ。
オレに淹れさせたお茶へ口もつけぬまま、スマホで仕事を片づけ続けていた女神様は、宝婁センパイが仲間を引き連れて帰って来たのを機に、オレという存在を思い出してくれたようであった。
それもセンパイが、オレに玄関に脱ぎ置かれた靴の多さと、家の前に駐められている引越し会社のトラックのことを尋ねて初めて、オレの口を封じるみたいに、またセンパイ達へのお茶汲みを命じただけ。
オレは、向かいの席から立った瞬間に再び蚊帳の外だ。
けれどセンパイ達も、早速仕事の話を始めたいらしく、その空気を読んで有勅水さんとオレはダイニングテーブルへと移動。
漸くまともに相手をしてもらえるムードになった。
「……あのぉ、どう謝れば許してもらえますか? スマホの充電はしてますし、これからもホント気をつけます。センパイが出て揶揄ってもかまわないんでしたら、ウチの電話番号も教えますから」
「別にぃ。許すも許さないも、刑の執行中だもん」
もぉ~、そんなオトナげないことを。
そもそも事後承諾の刑では、事後にオレが承諾しないと成立しないわけだし。
でも、そんなことを口にしたら、また角が立つだけだろうから絶対に言えない。
まぁオレは、どうせ承諾するに決まっているし、有勅水さんにも、承諾させる自信があるから敢えてそう言っているんだろうし……。
まだ事後にはなっていないという理屈で、一応ポーズを取っているだけで、引っ越しが済んだらケロッと元に戻るのかもしれない。
それまで黙って待つしかないのかな?
オレにとっては、どの道キツい刑だよなぁ。
こちらは気が気じゃないってのに、有勅水さんは悠長に今届いたメッセージを確認すると、これまた、オレをそっち退けで返信し始める──。
「楯クン、本当に反省してるぅ? 本当に今スグ許して欲しい?」
「はいっ、できれば。本当にすみませんでしたっ」
そこで初めて、本当に、今日初めて女神様は莞爾と微笑んでくれた。
ホッと一息どころか、幽体離脱したみたいな解放感!
「なら、これから成田へ行って、大事なお客様を出迎えて来て」
「オレがですか? って言うかオレなんかでいいんですか?」
「行くの? 行かないの?」
「勿論行きます……いえ、行かせていただきます当然っ」
「じゃぁよろしくね。とり敢えずスグに向かって、困ったらその都度電話して」
そう言いながら有勅水さん、ゼロハリバートンからオレンジ色をした長財布を取り出して、すっとオレの前へ置いた。
……H形のバックルに、ベルトがどうにか通っている状態。それほどパンパンで、結構な厚みときている。
「領収書を忘れないように。もしそれ以上かかったら、あとは楯クンの自腹だと思ってね」
「そんな、スマホは充電中なんですって。大体、誰を出迎えればいいんですか? それに、そのあとはどうすれば」
だのに有勅水さんは、これ以上ないといったニコニコ顔を見せて、
困ったら
、電話して
、とキュートにジェスチャーで答えるだけ。それだけで、再び誰かにメッセージを打ち始めてしまった。
……仕方がない、行くしかなさそうだ。
オレは厳めしい札入れを粛粛と携え、腰を上げた。
ここでゴネては、センパイまでが絡んで来て、ほぐれかけている関係が一層こじれてしまいかねないし。
それに女神様は、とり敢えずスグに向かってとのおおせだから、モタモタすれば、するだけ天咎は重くなる。
気合を入れるべく、バッシュはAJⅠレトロ・プレイオフカラーをチョイス。
これで、見かけ的にはオレのフーリィー‐アームド(完全武装)!
いざ出撃、まずはコンヴィニでモバイルバッテリーのゲットだっ。