082 デア・エクス・マーキナー ‐1st part‐
文字数 1,280文字
ムッシューの長期バイトが終わりを告げたあとは、騒騒 しくも安楽康寧 な春休みらしい生活が訪れてくれた。
当然、この先も続くと疑いもしていなかったのに……。
今日も、里衣さんが送ってきたメッセージどおりに、スーパーの特売とタイムセール巡りから帰ると、ウチの前に引っ越し屋のコンテナ車が駐まっていた。
それだけでなく、なんとユニホーム姿の作業員たちが、中から荷物をパッキングケースで運び出し、丁寧なのか、サボり半分かは判別できない、熟 なれた動きで積み込んでいた。
ヴィーの奴が溜めに溜めた服や靴やバッグを、ようやっと一掃する気になったのかと思うものの、それには、サイズ的に大きすぎる物があるし、それらの荷物は、どうやら二階から下ろされている気配もする。
挨拶がてら、作業員の一人に誰の荷物かを尋ねてみれば、依頼者はLDにいるはずとのことなので、とり敢えず行ってみるしかない。
でも、玄関に脱ぎ置かれているショートブーツはたぶん有勅水さんのだ。一体どういうことなんだろう?
──思ったとおり、LDのソファーには有勅水さんがいた。
しかし、ドアを開けたオレに眼を上げただけで、スグ様スマホのディスプレイへと戻してしまう。
な~んか、いつになく物凄~く素っ気ない……。
「えっと有勅水さん、あの、荷物の運び出しは、一体どう言うことなんです?」
「水埜クンは、これから一箇月ほど、お引っ越しってこと~。おわかり?」
「へっ! 何でオレ? どこへですか。そんないきなり困りますって、まず理由を説明してくださいよっ」
「ダメ~。あれだけ、スマホには注意しなさいって言ったのに、昨日の夜からつながらないってのはどお言う根性? 充電でもし忘れてるんでしょ。罰として事後承諾の刑を執行中なだけよ」
「そんなぁ……」
スマホから全く視線をはずさない有勅水さんの態度から、大マジだってことだけは理解できた。
とにかく部屋へ急いで、運び出されては困る物を差し押さえないと──。
がしかし、階段を上がった廊下の右手に、オレのデスクチェアーが出されていて、その座面には、オレが差し押さえたかったスマホと、背倚れにジーンズのもう一本ほか、Tシャツを含め二点ばかり増えたセイレネスのアイテムが掛け置かれていた。
それらも有勅水さんの指示だろうから、完全に読みきられているオレには、もはやうつ手などあるはずがない。
スマホも、やはりデッドバッテリーでただの板片 と化していた。
家の電話は、センパイ専用みたいになっているから、敢えて番号を教えなかったのがアダとなってしまったようだ。
それ以前にヴィーがオレの充電器を使いやがるから、こんな無体なことになったんだっ。
「水埜ク~ン、買って来た物を仕舞ってくれなぁい? ニラと玉ネギのニオイがキツくて堪らないんだけどぉ。それと、私にはお茶の一つも出したくないって言うのかしらぁ?」
……なんか、怖さの質が前古未曾有 ! どう許してもらえばいいのか見当もつかない。
やっぱ、女神様のお言葉は須く謹聴し、チョットした申しつけも、禁令であるとして拝承すべきだったんだぁ!
当然、この先も続くと疑いもしていなかったのに……。
今日も、里衣さんが送ってきたメッセージどおりに、スーパーの特売とタイムセール巡りから帰ると、ウチの前に引っ越し屋のコンテナ車が駐まっていた。
それだけでなく、なんとユニホーム姿の作業員たちが、中から荷物をパッキングケースで運び出し、丁寧なのか、サボり半分かは判別できない、
ヴィーの奴が溜めに溜めた服や靴やバッグを、ようやっと一掃する気になったのかと思うものの、それには、サイズ的に大きすぎる物があるし、それらの荷物は、どうやら二階から下ろされている気配もする。
挨拶がてら、作業員の一人に誰の荷物かを尋ねてみれば、依頼者はLDにいるはずとのことなので、とり敢えず行ってみるしかない。
でも、玄関に脱ぎ置かれているショートブーツはたぶん有勅水さんのだ。一体どういうことなんだろう?
──思ったとおり、LDのソファーには有勅水さんがいた。
しかし、ドアを開けたオレに眼を上げただけで、スグ様スマホのディスプレイへと戻してしまう。
な~んか、いつになく物凄~く素っ気ない……。
「えっと有勅水さん、あの、荷物の運び出しは、一体どう言うことなんです?」
「水埜クンは、これから一箇月ほど、お引っ越しってこと~。おわかり?」
「へっ! 何でオレ? どこへですか。そんないきなり困りますって、まず理由を説明してくださいよっ」
「ダメ~。あれだけ、スマホには注意しなさいって言ったのに、昨日の夜からつながらないってのはどお言う根性? 充電でもし忘れてるんでしょ。罰として事後承諾の刑を執行中なだけよ」
「そんなぁ……」
スマホから全く視線をはずさない有勅水さんの態度から、大マジだってことだけは理解できた。
とにかく部屋へ急いで、運び出されては困る物を差し押さえないと──。
がしかし、階段を上がった廊下の右手に、オレのデスクチェアーが出されていて、その座面には、オレが差し押さえたかったスマホと、背倚れにジーンズのもう一本ほか、Tシャツを含め二点ばかり増えたセイレネスのアイテムが掛け置かれていた。
それらも有勅水さんの指示だろうから、完全に読みきられているオレには、もはやうつ手などあるはずがない。
スマホも、やはりデッドバッテリーでただの
家の電話は、センパイ専用みたいになっているから、敢えて番号を教えなかったのがアダとなってしまったようだ。
それ以前にヴィーがオレの充電器を使いやがるから、こんな無体なことになったんだっ。
「水埜ク~ン、買って来た物を仕舞ってくれなぁい? ニラと玉ネギのニオイがキツくて堪らないんだけどぉ。それと、私にはお茶の一つも出したくないって言うのかしらぁ?」
……なんか、怖さの質が
やっぱ、女神様のお言葉は須く謹聴し、チョットした申しつけも、禁令であるとして拝承すべきだったんだぁ!