069 ________________ ‐3rd part‐
文字数 1,836文字
「アラア~ラ、またも尾籠なお口走りー。今度したら、フグリを握りヒネって差しあげちゃうよー。ボクはお勉強なんか三度の食餌 より大好きー。この国に生まれてホントよかったー、勉強さえできれば、世間は大概のことを見のがしてくれるからー」
「……まぁ、否定はしませんし、できませんけれどオレには」
「それはつまり、成績の良さと頭の出来の良さと、ズル賢さとあざとさと、怪力乱神がそれぞれ別物だってゆー、確固とした社会認識がある何よりの証拠なのー。なのでー、勉強が嫌いでやらない楯クンの成績が悪いのは当然で~、頭の悪さとは関係がないのでしたー」
「……関係ないですかねぇ? マジに」
「それでもまだ頭が悪いと思うならー、それはまた別の要因が邪魔して、好きに使えてないからだねー。好きなことを好きなだけやるぞーって腹をくくっちゃえば、頭が悪いとか考えてるヒマなんかないんだよー、邪魔を退かすので手一杯なのー」
そりゃぁ……そんなことは、わかってるオレだって。
けれど、自分の好きなとおりにやってたんじゃ、まるでダメだから困ってるんだ。
邪魔するモノが、常識だとか、一般的価値観だとか、社会通念という、広大無辺な障害だから、そう簡単に退けることができないってのに……
あぁ! そっかっ。ダメだろうと好きなようにやっている結果が、この葉植さんと言うわけなのか。
ウム~。オレが鈍いのは、みんなよりも遅い年度末に生まれたからだと騙し慰めてきたってのに、二箇月足らずの差で葉植さんからこうも喝破され、画然とした犀利 を見せつけられてしまうとは。
しかし、覚悟を決めて超然なまで好きな事ばかりにとり組めば、そんな、色んな道理まで分別がつくようにもなるのかねぇ。
おそらく、
「そう言えば葉植さん、今年受験! それも本番真っ只中じゃないですかっ。こんなこと、いえ、普段と一向に変わらず好きなことばっかしてて、本当に大丈夫なんですか?」
「ン~? そだねー、大丈夫かなー? だけど、日本がダメなら、外国の大学が幾らだってあるしー、今年ダメでも、来年も再来年もそのまた先もあるから。何とかなるんじゃないのー」
そう、でした。
ついまた世俗的な判断で、葉植さん相手に要らぬ心配なんぞしちまいましたっ。
……もしや、オレって、そういった物心がつく前みたいなところからやりなおす必要があったりするとか?
「でも外国の大学ですかぁ。ちなみにどの辺りを狙ってるんです? やっぱハーヴァードとかMITとか、ポリテクニークとかだったりしちゃうわけですか?」
「そだねー、そんなトコ行ったら、世界征服を目論む人ばっかで愉しそー」
「……ま、葉植さんなら愉しめそうですし」
「でも、ボクが興味のある外国は南半球ばっかしなのー。マダガスカル島やタスマニア島、マテ・アトランティカにガラパゴスの生態系でしょ、チュパカブラでしょ。アタカマ砂漠に豪雨を降らすのもいーよね。フライングフューマノイドの本場はメキシコシティかー。北半球側だとねー、ゴッドマシンのローレシアン大学でしょー、カナダならオゴポゴもいるしー。あとは、ミクロイ教授の真の後継者を目指して、イギリスのシェフィールド大学かなー」
……半球ときたもんだ。なんか、案の定スケールもベクトルも一味どころか、一八〇味も違いますなぁ。
ホント凄いと言うより、凄まじいけれど、やっぱり妬気もムカつきもカンジてこないんだよね。却って、如何にもらしくって、妙に心腹に落ち着いてしまう。
「なるほどぉ……その、ミクロイ教授ってのは何が専門なんですか?」
「知らないのー? 世界有数の法医学者だよー、ヤードに協力して幾つもの難事件を解決に導いたのー。ミイラ鑑定の第一人者だったことでも有名だね~」
「……有名なんですか?」知らねー、そんなこと知りたくもね~。
「ねーねーミイラを解剖するってどんなんだろー? どーしよーもなく空虚なイメージがしちゃうよねー、キャハハッ」
「…………」
いい加減もう唖然とするのはよそうと思っていたのに、なんか一瞬、オレまで、どうしようもない虚無感にすりぬけて行かれちまった。
法医学ってことは、いやしくも志望するのは医学部だろ。
それでパスした暁には、ミイラの解剖なんかを待ち望むってわけですか……。
ウ~ン、どれだけの邪魔を排除できれば、そこまでの好奇から偏奇で珍奇な志向性になるんだろう?
葉植さんは、やっぱり退けすぎだと思う。
「……まぁ、否定はしませんし、できませんけれどオレには」
「それはつまり、成績の良さと頭の出来の良さと、ズル賢さとあざとさと、怪力乱神がそれぞれ別物だってゆー、確固とした社会認識がある何よりの証拠なのー。なのでー、勉強が嫌いでやらない楯クンの成績が悪いのは当然で~、頭の悪さとは関係がないのでしたー」
「……関係ないですかねぇ? マジに」
「それでもまだ頭が悪いと思うならー、それはまた別の要因が邪魔して、好きに使えてないからだねー。好きなことを好きなだけやるぞーって腹をくくっちゃえば、頭が悪いとか考えてるヒマなんかないんだよー、邪魔を退かすので手一杯なのー」
そりゃぁ……そんなことは、わかってるオレだって。
けれど、自分の好きなとおりにやってたんじゃ、まるでダメだから困ってるんだ。
邪魔するモノが、常識だとか、一般的価値観だとか、社会通念という、広大無辺な障害だから、そう簡単に退けることができないってのに……
あぁ! そっかっ。ダメだろうと好きなようにやっている結果が、この葉植さんと言うわけなのか。
ウム~。オレが鈍いのは、みんなよりも遅い年度末に生まれたからだと騙し慰めてきたってのに、二箇月足らずの差で葉植さんからこうも喝破され、画然とした
しかし、覚悟を決めて超然なまで好きな事ばかりにとり組めば、そんな、色んな道理まで分別がつくようにもなるのかねぇ。
おそらく、
なるのー
って、葉植さんは断言するんだろうけれど……。「そう言えば葉植さん、今年受験! それも本番真っ只中じゃないですかっ。こんなこと、いえ、普段と一向に変わらず好きなことばっかしてて、本当に大丈夫なんですか?」
「ン~? そだねー、大丈夫かなー? だけど、日本がダメなら、外国の大学が幾らだってあるしー、今年ダメでも、来年も再来年もそのまた先もあるから。何とかなるんじゃないのー」
そう、でした。
ついまた世俗的な判断で、葉植さん相手に要らぬ心配なんぞしちまいましたっ。
……もしや、オレって、そういった物心がつく前みたいなところからやりなおす必要があったりするとか?
「でも外国の大学ですかぁ。ちなみにどの辺りを狙ってるんです? やっぱハーヴァードとかMITとか、ポリテクニークとかだったりしちゃうわけですか?」
「そだねー、そんなトコ行ったら、世界征服を目論む人ばっかで愉しそー」
「……ま、葉植さんなら愉しめそうですし」
「でも、ボクが興味のある外国は南半球ばっかしなのー。マダガスカル島やタスマニア島、マテ・アトランティカにガラパゴスの生態系でしょ、チュパカブラでしょ。アタカマ砂漠に豪雨を降らすのもいーよね。フライングフューマノイドの本場はメキシコシティかー。北半球側だとねー、ゴッドマシンのローレシアン大学でしょー、カナダならオゴポゴもいるしー。あとは、ミクロイ教授の真の後継者を目指して、イギリスのシェフィールド大学かなー」
……半球ときたもんだ。なんか、案の定スケールもベクトルも一味どころか、一八〇味も違いますなぁ。
ホント凄いと言うより、凄まじいけれど、やっぱり妬気もムカつきもカンジてこないんだよね。却って、如何にもらしくって、妙に心腹に落ち着いてしまう。
「なるほどぉ……その、ミクロイ教授ってのは何が専門なんですか?」
「知らないのー? 世界有数の法医学者だよー、ヤードに協力して幾つもの難事件を解決に導いたのー。ミイラ鑑定の第一人者だったことでも有名だね~」
「……有名なんですか?」知らねー、そんなこと知りたくもね~。
「ねーねーミイラを解剖するってどんなんだろー? どーしよーもなく空虚なイメージがしちゃうよねー、キャハハッ」
「…………」
いい加減もう唖然とするのはよそうと思っていたのに、なんか一瞬、オレまで、どうしようもない虚無感にすりぬけて行かれちまった。
法医学ってことは、いやしくも志望するのは医学部だろ。
それでパスした暁には、ミイラの解剖なんかを待ち望むってわけですか……。
ウ~ン、どれだけの邪魔を排除できれば、そこまでの好奇から偏奇で珍奇な志向性になるんだろう?
葉植さんは、やっぱり退けすぎだと思う。