041 _______________ ‐2nd part‐
文字数 1,841文字
「なぁ水埜、有勅水さんが言ってたポールさんって、宝婁総合病院の先輩のことだろう?」
根上も、やっと我を取り戻したようだ。
「そんな話頭へ転じるな根上、有勅水さんの中秋の名月級の余韻が台ナシだろがぁ」
「水を差すなよ緑内、この星変態がっ──」何なんだろ一体? オレにしてはいつになく忙しいったらない──「そうだけれど、それが何なんだ根上?」
「いや、なんか水埜、急に格別な人とのつき合いが増えてるみたいだから。宝婁さんと言えば在栖川レジェンズの一人じゃないか」
「え、それマジだったの? でもそれこそ過去の栄光だろう? センパイ自身はそんなモノに縋っちゃいないし、まぁ今でも、いろいろと語りぐさにはなっていそうだけれど」
「俺も聞いた話だけど、あの人、あの体格で物凄く強ぇらしいぜ。夜のポンギの三丁目辺りでさ、アニキのクルマが来るのをチンピラ風数人が待ちかまえていたトコを横切ったとかで、因縁つけられちまってさ」
驚いたことに緑内まで、センパイの武勇伝を語りだしてくれる。
「ウッソ、そんなのも初耳だよ。それで? 反対にボコッちまったのか、あのセンパイが?」
「いや、次から次へと掴み掛かって来るのを、最後までひょひょいとジャッキー・チェンみたく避けちゃって。チンピラどもが息をあげて動けなくなってんのに、宝婁さんは涼しい顔して立ち去って行ったんだと。この話はそう前のことじゃないぜ」
「む~。なんだか
センパイ、このオレに、いとも容易く羽交い絞めにされてたような憶えがあるんだけれど、それもついこの前。
「そんな噂が耳に留まったのは、やっぱ水埜が、どしてあの人と連むようになったのかが不思議だったからだろうけどな。まぁ使いっぱにはちょうど好さそうだもんなおまえって、意外とタッパがあるし、動けるクセに心身ツラとも大甘ときてるから」
「ウルセ~星フェチ。センパイとは、夏の初めにセンパイが売ってるTシャツを見ていて知り合った、て言うか思い出されたんだ。センパイは、オレたちが初等課程の頃に何度か世話係をしてくれてたらしいから、おまえも根上のことも憶えてるはずだ」
「そうだったんか?」
「ずっと通学路だったのに、それまで行き会わなかったんだよな。大学にあがって、ようやく生活の時間帯が重なったってカンジで。だから意外でも何でもない」
「それでまんまと、あの如何わしい路上販売の仲間に引きずり込まれたってわけか? 客寄せパンダ代わりだな、有閑マダム向けの」
……思い出したぁ、どこまでもゲスくなるんだった緑内はっ。
ここはマイナス角のジャンピングヘッドバッドを喰らわせて、目ん玉から星を飛ばして黙らせとくかぁ?
「それも今は一緒に住んでるって聞いたけど、ホントにか水埜?」
……根上もぉ、一体どこから聞き込んでいやがるんだか?
「マジかよ、もう如何わしいどころの騒ぎじゃねぇな」
「ウザ苦しいんだよイチイチ天体視姦魔がっ。商売場所もアパートも急になくなっちゃったからしょうがないだろ。でもセンパイは自らウチのゴミ出しをするし、ティッシュやトイレットペーパーまで買って来てくれるんだ。オレを後輩扱いしたこともないって言うし、毎晩ギターだって教えてもらってるっ」
「へぇ~。まぁレジェンズなりにフツウを装わないとだろうな……けどギターってなんだよ? この、こましたがり野郎めがっ」
「素直に羨ましがれってのっ。とにかくいい人なんだよ基本的には、おまえと一緒で頭良すぎて風変わりなトコがあるだけだ。おまえより頭が良い分、まともなトコも多いぞきっと」
「そうか、有勅水さんともあそこでってわけかい? なるほどね、工事をとり仕切っているのは意外にもV&Mみたいだからなぁ」
……話をまともに戻してくれている根上にはありがたいけれど、ふり幅が大きすぎてスグには戻れないっ。
「何だそりゃ? 俺にはさっぱりだぜ水埜。だからはっきり聞いてやる、あんな特別嬪とどうやって親しくなりやがったんだよ? とうとうナンパに走ったか? この獣欲エピキュリアンめっ」
「それは、星が縛り止めてくれてるおまえの本性だろが。有勅水さんとも僊婆のトコ、記念公園への近道で知り合ったんだよ、文句あっか?」
「大アリだ、俺は黒の似合う女性が好みなんだ。あ~こんな短い出会いなら、喪服姿の有勅水さんがよかったぜぃ。」
これだから緑内は、いい加減ホント疲れる。
まぁ確かに有勅水さん、黒いドレスも似合っていたけれど……。
根上も、やっと我を取り戻したようだ。
「そんな話頭へ転じるな根上、有勅水さんの中秋の名月級の余韻が台ナシだろがぁ」
「水を差すなよ緑内、この星変態がっ──」何なんだろ一体? オレにしてはいつになく忙しいったらない──「そうだけれど、それが何なんだ根上?」
「いや、なんか水埜、急に格別な人とのつき合いが増えてるみたいだから。宝婁さんと言えば在栖川レジェンズの一人じゃないか」
「え、それマジだったの? でもそれこそ過去の栄光だろう? センパイ自身はそんなモノに縋っちゃいないし、まぁ今でも、いろいろと語りぐさにはなっていそうだけれど」
「俺も聞いた話だけど、あの人、あの体格で物凄く強ぇらしいぜ。夜のポンギの三丁目辺りでさ、アニキのクルマが来るのをチンピラ風数人が待ちかまえていたトコを横切ったとかで、因縁つけられちまってさ」
驚いたことに緑内まで、センパイの武勇伝を語りだしてくれる。
「ウッソ、そんなのも初耳だよ。それで? 反対にボコッちまったのか、あのセンパイが?」
「いや、次から次へと掴み掛かって来るのを、最後までひょひょいとジャッキー・チェンみたく避けちゃって。チンピラどもが息をあげて動けなくなってんのに、宝婁さんは涼しい顔して立ち去って行ったんだと。この話はそう前のことじゃないぜ」
「む~。なんだか
ぽい
なぁ、センパイぽいって意味だけれど。でもなぁ……」センパイ、このオレに、いとも容易く羽交い絞めにされてたような憶えがあるんだけれど、それもついこの前。
「そんな噂が耳に留まったのは、やっぱ水埜が、どしてあの人と連むようになったのかが不思議だったからだろうけどな。まぁ使いっぱにはちょうど好さそうだもんなおまえって、意外とタッパがあるし、動けるクセに心身ツラとも大甘ときてるから」
「ウルセ~星フェチ。センパイとは、夏の初めにセンパイが売ってるTシャツを見ていて知り合った、て言うか思い出されたんだ。センパイは、オレたちが初等課程の頃に何度か世話係をしてくれてたらしいから、おまえも根上のことも憶えてるはずだ」
「そうだったんか?」
「ずっと通学路だったのに、それまで行き会わなかったんだよな。大学にあがって、ようやく生活の時間帯が重なったってカンジで。だから意外でも何でもない」
「それでまんまと、あの如何わしい路上販売の仲間に引きずり込まれたってわけか? 客寄せパンダ代わりだな、有閑マダム向けの」
……思い出したぁ、どこまでもゲスくなるんだった緑内はっ。
ここはマイナス角のジャンピングヘッドバッドを喰らわせて、目ん玉から星を飛ばして黙らせとくかぁ?
「それも今は一緒に住んでるって聞いたけど、ホントにか水埜?」
……根上もぉ、一体どこから聞き込んでいやがるんだか?
「マジかよ、もう如何わしいどころの騒ぎじゃねぇな」
「ウザ苦しいんだよイチイチ天体視姦魔がっ。商売場所もアパートも急になくなっちゃったからしょうがないだろ。でもセンパイは自らウチのゴミ出しをするし、ティッシュやトイレットペーパーまで買って来てくれるんだ。オレを後輩扱いしたこともないって言うし、毎晩ギターだって教えてもらってるっ」
「へぇ~。まぁレジェンズなりにフツウを装わないとだろうな……けどギターってなんだよ? この、こましたがり野郎めがっ」
「素直に羨ましがれってのっ。とにかくいい人なんだよ基本的には、おまえと一緒で頭良すぎて風変わりなトコがあるだけだ。おまえより頭が良い分、まともなトコも多いぞきっと」
「そうか、有勅水さんともあそこでってわけかい? なるほどね、工事をとり仕切っているのは意外にもV&Mみたいだからなぁ」
……話をまともに戻してくれている根上にはありがたいけれど、ふり幅が大きすぎてスグには戻れないっ。
「何だそりゃ? 俺にはさっぱりだぜ水埜。だからはっきり聞いてやる、あんな特別嬪とどうやって親しくなりやがったんだよ? とうとうナンパに走ったか? この獣欲エピキュリアンめっ」
「それは、星が縛り止めてくれてるおまえの本性だろが。有勅水さんとも僊婆のトコ、記念公園への近道で知り合ったんだよ、文句あっか?」
「大アリだ、俺は黒の似合う女性が好みなんだ。あ~こんな短い出会いなら、喪服姿の有勅水さんがよかったぜぃ。」
これだから緑内は、いい加減ホント疲れる。
まぁ確かに有勅水さん、黒いドレスも似合っていたけれど……。