260 パラパラ炭坑節(feat.CDR21) ‐1st part‐

文字数 1,242文字

 そう決意を固めてミラノたちへ目をやると、ミラノはまたも一人でニコニコ。

 ……なんだか、人生の岐路に立たされている気分がしてくる。これが、誰もに身近で、行き着くのも容易い、世界の果てってことなんだろか?

 でもまぁオレが諦めるのは、ストーカー男ならぬ、ストーカー被害に遭って人倫を全損した葉植さんが、殺戮者に身を貶めるほど、夢中になっている快楽殺人女子の正体だからねぇ。

 ムリ押ししてまで無益な好奇心を満たすより、何年先になってもいい、ミラノとできちゃった結婚してでも一緒に暮らすために、葉植さんには、何よりも恙なく大学へ通って勉学に勤しんでもらわないと。

 オレが、葉植さんの要求を唯唯諾諾と呑むことは、むしろオレの追っている夢に、少なからず近づく選択になっちまいそうだよなぁ……。

「わかりましたよ、聞き届けることにする。ミラノに異議がないのなら、ミラノのことをもっとオレは知りたいし」

「そうかい楯クンッ、それはよかったー」

「けれど葉植さん、一つだけ心配があるんだ。そのコ、快楽殺人女子は、この近くにもやって来て、殺人実験をやったりするの?」

「え? えっとー……」

「オレの知る限り、田宮謡のファンはいないはずだけれど。センパイはともかく、里衣さんや有勅水さん、ウチに集まって来るみんなが、それこそ葉植さんが真っ先に、犠牲になるなんてことにはならない?」

「……そっかー」

「そのコの、名前とか素性なんかは要らないから。でも、そこだけは話してもらわないと、納得なんかしきれないよ」

 葉植さんの、小さく薄い唇や死んだ魚のような目見は、(かそ)けくも顕然と笑いだしていた。
 オレは、マジでガチに言ったってのに……。

「快楽殺人女子が、殺人実験ねー。被験者は、田宮謡が唄う演歌をエサに、誘き寄せるとでも言うのかい? これはまた、想像力を逞しくしたもんだね楯クン」

「え……違うの?」

「ウン、本当にミラノ嬢へは全幅の信頼がおけてしまえそうだ。全ては楯クンの安全のためとは言え、あのコの核心へと迫る部分は、見事に緘黙(かんもく)を貫いてくれていたみたいなのに、マズいマズい。却ってボクの方から、思いきり藪蛇(やぶへび)なことを口にしてしまっていたじゃないかー」

「……藪蛇? って……」

「楯クンたちはいつ見かけても、ずるベッタリと一緒なもんだから、まさかそこまで徹底されていたとは、考えられなかったんだ」

「ずるベッタリは酷いよ、あのコあのコって、意味深に思わせたのは葉植さんなんだ。ちゃんと、そのコに殺されずに済む、危機回避法まで教えてくれなくちゃ困るし、それこそ礼儀だと思うけれど」

「ん~、でもホント大丈夫なんだ。あのコは全然、快楽殺人者ではないんだから。ボクも、詳密な把握に至ってはいないんだけど、あのコは老人だけしか狙わない。僊婆の死も、実はあのコの仕業だ」

 やっぱり、聞き間違いじゃなかった……。

 でも、チラ見したミラノは、ニコニコのままで完全に他人事。トリノさんまでが、葉植さんから目を離して、窓の方へと視線を向けてしまっている
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登場人物紹介

登場人物につきましてはイントロ的に一覧で掲載しておりますぅ


当作は主人公:楯の一人称書きをしておりますので、本編内で紹介されるプロフィール情報のムラは、楯との関係性によるところが大きくなりまっす


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