289 ___________________ ‐3rd part‐

文字数 1,385文字

 オレは、別にヴォランティア精神が旺盛って人間でもないし、一般的にも親切ってほどじゃない。
 文句や愚痴を言いたくなるのがわかってるから、そういう活動へは軽い気持で参加しないことに決めているくらいだ。
 って言うか、自分一人のことすらまともにできてないってのに、余所様のことまで、助けられる道理がないし。

 う~む。オレって、実はアホどもの一員どころの騒ぎじゃなく、全てにおいて根底からダメダメなミソサザイ男なのかも……。
 何せ、連続大量殺人魔を、唯一で初めての親友にしているくらいだし──。 

「そんなのいいんだもん、楯がワタシを好きなことに変わりないんだよ。これはプレゼントと違って、ワタシが先に選んだからとかじゃないんだからぁ」

「そうかしら? ミラノはもう、会った瞬間から選び始めていたと思うけれど」

「楯に最初に会ったの、トリノじゃん。ワタシが来る間に、いろいろガンバれたはずぅ。それをムダにしといて、手遅れなんだよ今更ぁ」

「……やっぱり全然似てないわっ。時と場合そっち退けで、私は、そう言うことを考えられないので」

「だから、トリノも精精ガンバって、丸ごと好きになってくれる人を、見つけ出すしかないんだよ~だ」

「同じ親からできた姉妹だというのに、つくづく不公平よね。私も、アホの一員になろうがかまわないので、今スグこの手を放してやろうかしら?」

「待ってよ、ミラノ相手に何をムキになってるのさ、トリノさんらしくもない。もう少しの辛抱なんだから、いつもどおり冷静になって」

「だよだよ~」

「ミラノも、早く帰りたいなら強がらないの。お姉さんでしょ? 

っていう語は元来、敬愛する女性を呼ぶための言葉なんだから、まずは、妹から慕われるよう心懸けなくちゃダメダメだよ」

「そのとおりね、日本語はステキ」

「れー、じゃあじゃあ

っていうのは、元元どんな意味意味っ?」

「う~ん

っていうのは確か、女性同士が親しみを込めて呼び合っていた言葉だと思ったけどな。『万葉集』にあるから、ざっと千年以上も前のことだ。それから、男も親しい女性を呼ぶ時に使うようになって、奥さんのことまでそう呼んでたんだ」

「うんうん、日本語って素晴らしい。トリノも、ワタシだろうと楯だろうと関係なく、みんなに親切にして、親しまれるよう心懸けないとダメダメなんだよ」

「別に。そんな心懸けは、常にしているので」

「る~、可愛くないんだよ。さっき楯に、

って言われてドキドキしてたでしょ。ちゃーんとわかってるんだからぁ」

「だからイヤなんだテレパスなんて。いいじゃないドキドキするくらい、減るもんじゃないので」

「トリノがすると減るんだよ。楯も、もうトリノと話しちゃダメダメだからねっ」

「何をオトナ気ないこと言ってるのさ? 大体どうしてトリノさんが、オレにその、ドキドキなんてする理由があるわけ?」

「楯の、その変にニブいトコと、小利口な事勿(ことなか)れ主義のせいに決まってるじゃん」

「え……」

「トリノのチカラを何度も思い知らされてるのに、フツウ、そんな暢気にしてる人なんかいないんだよ。こうして全然いつもと同じで、おしゃべりしながら一緒に帰れるなんてのは、トリノにだって楯だけなんだよ。わかったぁ?」

 ──それより、小利口な事勿れ主義って~!?

 ミラノの口から、そんな表現が出たこと以上に、迷いもなく確言されちまったのがショックだぁ……。
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登場人物紹介

登場人物につきましてはイントロ的に一覧で掲載しておりますぅ


当作は主人公:楯の一人称書きをしておりますので、本編内で紹介されるプロフィール情報のムラは、楯との関係性によるところが大きくなりまっす


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