244 _________________ ‐3rd part‐

文字数 1,446文字

 とり敢えずは、これ以上ミラノを煩わせないよう、オレは素直に従っておく。

「ん。ゴメンね……」

 第一ミラノの言うとおり、これでいつでも、存分に頭を抱えられると思えば、幾分どころじゃなく落ち着けたようなカンジもしてくるし。

 ついでにオレは、被っていたキャップを取ってロングデスクの上に置いた。それだけでも、息苦しさや目の前の暗さが、さらに緩和されたような気がしないでもない。

「ン~素晴らしいテレパスとPKの連係だぁ。ボクへの、

ってパフォーマンスとしても、功を奏しているよね。それではボクも極めて友好的に話を戻すとして、楯クンは、どうすれば納得してくれるのかな?」

「……どうって? そんなこと……」

「断っておくけど、ボクは自首なんかしない。それに、僊河姉妹とも契約を交わしたから、もうボクを逮捕させる証拠も、見つけ出すのはムリだと思う」

「…………」

「ボクにできることと言えば、楯クンの気が済むまで、答えられる質問に答えてあげるくらいしかないんじゃないかな? どうだろう楯クン、何が聞きたい?」

「何って──」ありすぎて、咄嗟にはわからないくらいだっ。

「それでは、楯クンの記憶に鮮明さがある方から、時系列を遡って話すことにしよう。質問や指摘は、随時受けつけるとして」

「…………」
 オレは頷くこともできなかったけれど、全くの無反応や黙座はフツウ黙諾、立派な肯定の意思表示になってしまう。

「ではまず、根上翔輔クンの殺害だけど、彼を犠牲者にしたのは勝庫織莉奈だ。彼女は、ユダにも肩を並べようかという裏切り者のクセして、とんだ名探偵気取りでね、ボクが張った罠だと、まるで気づきもせずに、鼻を抓みたくなるほど得意げだった」

「…………」

「実はボクも、黔磯駅前のマックへは行ったんだ。年相応の、ありふれた女子になりすましてね。でも声はかけずに、離れた席から様子を窺った」

「…………」

「根上クンは、時間の少し前に現れて、二一時ピッタリに勝庫織莉奈へ声をかけた。その思いも寄らなかった正体に、愉色(ゆしょく)満面と自己紹介をしていたよ。彼からすれば、もうそれだけで、来た甲斐はあったとゆうカンジだった」

「…………」

「ボクが二人に接触したのは、彼らがクルマで目的地へと移動してからだ。当然、根上クンのように素直に名乗り出たりなんてしない。ボク同様になりゆきを見ている者がいるかもしれないと考えてのことだけど、そこまでする者などいやしなかった」

「…………」誰も、いや、根上しか来やしなかった、わけか、正式なDGメンバーは。

「なのでボクは、必要とあらば姿を晒して、DGメンバーの一人を悠悠と騙ることができる状況だったんだ。きっと二人は、ボクを怪しむどころか歓迎してくれたろうね」

「…………」

「根上クンは言うまでもなく、勝庫織莉奈も、女子にしか見えないボクが加わるのは、安心感が増す以外の何モノでもないだろうから」

「…………」

「つまり、二人も最初は、ボクを疑うより先に、一体どう言う趣向なのかと、興味半分でいたんだろうさ。まさか殺されるなんて、微塵も思わずにね。ボクとしてもシメシメだった」

「…………」

「あーノドが渇いちゃった。楯クンがまだ欲しくないのなら、ボクだけお先にこれ、飲ませてもらっちゃってもいい?」

 葉植さんが自分の前、ロングデスクの上のカップを指差すので、オレは一応頷いた。

 オレも、口の中が渇ききってはいたけれど、とても飲みたい気にはなってきやしない。
 ましてや、

葉植さんが、淹れてくれるモノなんか。
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登場人物紹介

登場人物につきましてはイントロ的に一覧で掲載しておりますぅ


当作は主人公:楯の一人称書きをしておりますので、本編内で紹介されるプロフィール情報のムラは、楯との関係性によるところが大きくなりまっす


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