027 ___________________ ‐3rd part‐
文字数 1,512文字
……でも、この不確定性に蹂躙されている、と誰かが言っていたような気がしないでもない現今、信じられるモノなんか何もないとだけ信じていたけれど、今の有勅水さんの言葉まで疑ってしまったらオレには何も始まらない気がしてくる。
「オレ別に有勅水さんは疑っていないんです。こんな思いがけない話が舞い込んできたことが信じられなかっただけで」
「そぉなの?」
「って言うか、オレは是非一緒にビジネスってヤツをやってみたいです。考えるまでもなくいい機会だし、オレには儲けなくちゃならない理由もないですから。今からでもその契約について話を聞かせてもらえませんか?」
オレはまだ臑 を齧 っていられる身分だし、フツウなら高三なわけだし一年間自由に使える時間もある。
海外を放浪するのもいいけれど、資本主義社会の実相に身を投じてみる方が、より即身的で効きそうだしっ。
「それは嬉しい申し出なんだけど、今からはムリなのよぉ水埜クン。諸事情となりゆきでもって私、僊河家の喪主代行まで任命されちゃったから。ディースじゃ格好つかないでしょう?」
……く~っ。
つい思わずの勢いにすぎないけれど、オレにとってはたぶん初めてだって思う女性へのグイつき、それも女神様なんかへ、積極的ってヤツに出てみちまったと言うのにぃ……。
不発に終わると、こんなに意識だけが遥か遠くへフッ飛ばされるのかっ?
リアル感なんてさっぱり、まるで他人事、って言うか自分の体を操縦していた自分が、遥か上空から、体のポンコツぶりに呆れてるこの無責任なカンジ……。
ま、だから、こうして一歩も動けず、否、動かずに平然を装えるんだろうけれど。
意識の方もシラッと速やかに、別のことへとガッツリ向かって、縋りついてしまえているに違いないんだけれど。
その縋りついた先のこと、それすらもまだ全然腑に落ちていないんだけれど、僊婆唯一の肉親である僊河青蓮は、現在どうしてもミラノを離れられないらしいという有勅水さんが続けていた話からの情報。
まぁ端から、ここへ僊河青蓮が登場するなんて展開は想見すらできやしない。
「あは。それは仕方がないんじゃないですかぁ? あまりにも有名になりすぎてしまうと、親子の羈絆 よりも根強いシガラミがあるんでしょうし」
また、何事もなかったように口を開いている自分にビックリする。それに一体何なんだ?
「なので、遅ればせながらお集まりの皆皆 様に、その旨をばお伝えしておかないと。大体、見てよこの格好。身内でさえ今まで誰も亡くなっていないのに、喪服なんかもってないってのよねぇ」
「
礼服を新調するには時間がなく、時期的にも薄手の物は手に入らない。また肌身に付けるレンタル品だけは許せないとかで、所持している中で一番代用に耐え得るアンサンブルを着て来たと、有勅水さんは言う。
バッグに仕舞ってある上着を羽織れば、上品なくノ一を思わせる両の肩から腕は首尾良くごまかせるせるみたいだ。
「じゃぁ私行くね。芭場さんたちも御馳走様~」
嫋 やかな言笑をオレの網膜に残し、有勅水さんは石段を駆け上がって行った。
ワンピースの後ろ裾にかなり微妙な幅のスリットが入っていたので、いつまでも目で追っているわけにはいかない。
所在なさを紛らわせるため、オレは、里衣さんが慣れた手つきでバラし始めた屋台のパーツを、頼まれてもいないのに、広場の先に駐めてある軽ワゴン車へとあくせく運ぶ。
その作業を繰り返しながら、オレも喪服がないんだって事実に思い至った。
母さんが死んだ時に着させられていた物が、今更着られるはずもない。
「オレ別に有勅水さんは疑っていないんです。こんな思いがけない話が舞い込んできたことが信じられなかっただけで」
「そぉなの?」
「って言うか、オレは是非一緒にビジネスってヤツをやってみたいです。考えるまでもなくいい機会だし、オレには儲けなくちゃならない理由もないですから。今からでもその契約について話を聞かせてもらえませんか?」
オレはまだ
海外を放浪するのもいいけれど、資本主義社会の実相に身を投じてみる方が、より即身的で効きそうだしっ。
「それは嬉しい申し出なんだけど、今からはムリなのよぉ水埜クン。諸事情となりゆきでもって私、僊河家の喪主代行まで任命されちゃったから。ディースじゃ格好つかないでしょう?」
……く~っ。
つい思わずの勢いにすぎないけれど、オレにとってはたぶん初めてだって思う女性へのグイつき、それも女神様なんかへ、積極的ってヤツに出てみちまったと言うのにぃ……。
不発に終わると、こんなに意識だけが遥か遠くへフッ飛ばされるのかっ?
リアル感なんてさっぱり、まるで他人事、って言うか自分の体を操縦していた自分が、遥か上空から、体のポンコツぶりに呆れてるこの無責任なカンジ……。
ま、だから、こうして一歩も動けず、否、動かずに平然を装えるんだろうけれど。
意識の方もシラッと速やかに、別のことへとガッツリ向かって、縋りついてしまえているに違いないんだけれど。
その縋りついた先のこと、それすらもまだ全然腑に落ちていないんだけれど、僊婆唯一の肉親である僊河青蓮は、現在どうしてもミラノを離れられないらしいという有勅水さんが続けていた話からの情報。
まぁ端から、ここへ僊河青蓮が登場するなんて展開は想見すらできやしない。
「あは。それは仕方がないんじゃないですかぁ? あまりにも有名になりすぎてしまうと、親子の
また、何事もなかったように口を開いている自分にビックリする。それに一体何なんだ?
あは
。ってのは……もうド
ビックリだっ。「なので、遅ればせながらお集まりの
「
あは
。そうだったんですかぁ?」ウッソ、また出た~……。礼服を新調するには時間がなく、時期的にも薄手の物は手に入らない。また肌身に付けるレンタル品だけは許せないとかで、所持している中で一番代用に耐え得るアンサンブルを着て来たと、有勅水さんは言う。
バッグに仕舞ってある上着を羽織れば、上品なくノ一を思わせる両の肩から腕は首尾良くごまかせるせるみたいだ。
「じゃぁ私行くね。芭場さんたちも御馳走様~」
ワンピースの後ろ裾にかなり微妙な幅のスリットが入っていたので、いつまでも目で追っているわけにはいかない。
所在なさを紛らわせるため、オレは、里衣さんが慣れた手つきでバラし始めた屋台のパーツを、頼まれてもいないのに、広場の先に駐めてある軽ワゴン車へとあくせく運ぶ。
その作業を繰り返しながら、オレも喪服がないんだって事実に思い至った。
母さんが死んだ時に着させられていた物が、今更着られるはずもない。