026 ___________________ ‐2nd part‐
文字数 1,451文字
「始めはそこも有勅水さんに折衝してもらうわけだから、スカウトって言うより雇われ店長みたいなモノなの。まぁそれでも期待は夢以上に膨らむけどね」
里衣さんの夢、それは、自分の店を出生地である銀座なんかにもつことだ。
屋台売りは当たればデカいから始めたと聞いている、つまり早 半年で当ててしまったというわけか。
それに、毛絲さんが里衣さんを手伝う分には深刻な問題も起こらないと思う、家業のカフェを継ぐまでの修行にもなりそうだし。
「これって、元来がウィーイスのアレンジなわけだから、スパイシーなスナック風のメニューもアリだと思うのよ。実際食べてみると、包んでる生地自体にはほとんど甘さがないときてるし。それができれば時間帯による客の寄りつきムラも減らせるでしょう? 着実に販売規模を拡大できる公算はあると見ているの」
指に付いたクリームをしゃぶりしゃぶり、有勅水さんはやっと話せるようになったみたい。
里衣さんも朝は怪訝にカンジていたけれど、どうも有勅水さんは、オレたちのことをしっかりと下調べしているように思える。
おそらくバイトの女子大生情報だけではなく、再開発の青写真を作成するにあたって一とおり調査されていたに違いない。
実社会など知らぬオレの浅識もいいところながら、商談と言うか、話の進め方がヤケに早いし、提示されるプランの一部も具体的だ。
まぁ仕事だから、あたりまえと言っちゃあたりまえなんだけれど、オレも返事をする前に有勅水さんの仕事をぬきにした真如ってヤツを、もうチョット知っておきたいかも。
別段オレには、契約についての相談をしなくちゃならない身内なんかいないんで。
「それで里衣さんは、いつ頃有勅水さんに返事をするんです?」
「うーん。とり敢えず伯父さんと実家の方に伝えてから、あらためてお話を詳しく聞きたいと思ってるんだけど……それも、僊河のお婆ちゃんのことが落ち着いてからになるんじゃないかしらね──」さらに里衣さんは──「それでもいいんですよね?」と、チョット不安そうな表情をして有勅水さんへ尋ね合わせた。
「勿論。じっくり考えて、これはビジネスなんですから。芭場さんがもっている価値あるモノに、私が手を貸してその価値を大きくする。儲けは山分け。要はそれだけのことだから畏まって難しく考えることはないわ」
「……はい。そうします」
「ただ私は職業上、認めた価値がどのくらいまで大きくできるのか限界を計算してるわけ。でも、それもあくまでウチの会社のデータを使って私が算出した予想結果にすぎないから、正しいかどうか厳密にはわからないわ。極端な話、人が違えば答えは全然違うでしょうから」
「……はい。それも、わかります」
「なので、芭場さんや水埜クンが私の提示する条件や額よりももっと希望するとなると、もちかけておいてなんだけど逆に私はお断りするしかなくなるってこと。性分的に目上も目下も見境なく、こうして気安く声はかけちゃうんだけど、そこはそれビジネスですもの、シヴィアにならざるを得ないの」
「…………」
里衣さんは、チラとオレに目を向けるけれど、オレだって……。
「ですから二人にも、少しの間だけシヴィアになってもらわなくちゃいけないの。あとになって話が違うとか言い出されても、私には契約上の保証しかしてあげられないんだもん。まぁそれで疑心暗鬼になられても困るんだけど」
有勅水さんは、提げた黒革のバッグからとり出したティッシュで指を拭きながらそう話すけれど、言い終わりだけは真摯な表情でオレたちを見た。
里衣さんの夢、それは、自分の店を出生地である銀座なんかにもつことだ。
屋台売りは当たればデカいから始めたと聞いている、つまり
それに、毛絲さんが里衣さんを手伝う分には深刻な問題も起こらないと思う、家業のカフェを継ぐまでの修行にもなりそうだし。
「これって、元来がウィーイスのアレンジなわけだから、スパイシーなスナック風のメニューもアリだと思うのよ。実際食べてみると、包んでる生地自体にはほとんど甘さがないときてるし。それができれば時間帯による客の寄りつきムラも減らせるでしょう? 着実に販売規模を拡大できる公算はあると見ているの」
指に付いたクリームをしゃぶりしゃぶり、有勅水さんはやっと話せるようになったみたい。
里衣さんも朝は怪訝にカンジていたけれど、どうも有勅水さんは、オレたちのことをしっかりと下調べしているように思える。
おそらくバイトの女子大生情報だけではなく、再開発の青写真を作成するにあたって一とおり調査されていたに違いない。
実社会など知らぬオレの浅識もいいところながら、商談と言うか、話の進め方がヤケに早いし、提示されるプランの一部も具体的だ。
まぁ仕事だから、あたりまえと言っちゃあたりまえなんだけれど、オレも返事をする前に有勅水さんの仕事をぬきにした真如ってヤツを、もうチョット知っておきたいかも。
別段オレには、契約についての相談をしなくちゃならない身内なんかいないんで。
「それで里衣さんは、いつ頃有勅水さんに返事をするんです?」
「うーん。とり敢えず伯父さんと実家の方に伝えてから、あらためてお話を詳しく聞きたいと思ってるんだけど……それも、僊河のお婆ちゃんのことが落ち着いてからになるんじゃないかしらね──」さらに里衣さんは──「それでもいいんですよね?」と、チョット不安そうな表情をして有勅水さんへ尋ね合わせた。
「勿論。じっくり考えて、これはビジネスなんですから。芭場さんがもっている価値あるモノに、私が手を貸してその価値を大きくする。儲けは山分け。要はそれだけのことだから畏まって難しく考えることはないわ」
「……はい。そうします」
「ただ私は職業上、認めた価値がどのくらいまで大きくできるのか限界を計算してるわけ。でも、それもあくまでウチの会社のデータを使って私が算出した予想結果にすぎないから、正しいかどうか厳密にはわからないわ。極端な話、人が違えば答えは全然違うでしょうから」
「……はい。それも、わかります」
「なので、芭場さんや水埜クンが私の提示する条件や額よりももっと希望するとなると、もちかけておいてなんだけど逆に私はお断りするしかなくなるってこと。性分的に目上も目下も見境なく、こうして気安く声はかけちゃうんだけど、そこはそれビジネスですもの、シヴィアにならざるを得ないの」
「…………」
里衣さんは、チラとオレに目を向けるけれど、オレだって……。
「ですから二人にも、少しの間だけシヴィアになってもらわなくちゃいけないの。あとになって話が違うとか言い出されても、私には契約上の保証しかしてあげられないんだもん。まぁそれで疑心暗鬼になられても困るんだけど」
有勅水さんは、提げた黒革のバッグからとり出したティッシュで指を拭きながらそう話すけれど、言い終わりだけは真摯な表情でオレたちを見た。