066 ___________________ ‐3rd part‐
文字数 1,616文字
「イヒヒその逆ぅ~。今回の『チェイン・オブ・エヴィル』シリーズはね、途中から香りが混じり合って、ダメな人にはダメな臭いになっちゃうのだー。だから、これは販売促進キャンペーンなのー。ムッシュさんなら、きっと気に入ってくれるだろーから」
「
ホント、相も変わらず邪穢 なことばっか考えてるんだからっ。
この人も、これでかなり恵まれた家庭に生まれ育ち、頭の出来の方だって血統書付きときているんだから、なんだか嫌気がぶり返してくる。
まぁ葉植さんの場合、オレとは存在する生活圏と言うか、生態系からして違うと言えそうなので、妬ましさは全然カンジられないんだけれど。
「別に、楯クンにもいっぱい買ってーとはゆわないから、安心おしー。けどー、興味がありそーな人がいたら、宣伝しといてちょうだいねー」
「いや別に……いぇ、宣伝の方はしときますけれど」
「……どしたのー?」
ヤバッ、卑下が顔に出ちまっていたらしい。
「まぁ、でもよかったです。ここでオレと出交わさなかったら、建設現場の入口で追い返されてましたよ。それに、仕事中のムッシューには、本当に会えないんです。冗談じゃなく別人になってますから。オレが受けとってきちんと届けますよ、それ」
「ンー。たぶんツイてるのは楯クンの方だねー。ボクがここを通らなくても会えてたよー。だけど、フト思うトコがあって、ムッシュさんがどんなカンジなのか見たくなったのー、チョットでいーから」
しょうがないな、葉植さんでは。
夜間とか、誰も追い返す者がいない時にムリにでもどこからか侵入しそうなんだよなぁ。それならまだしも、侵入する前に失敗って、大ケガでもされたら堪らないし。
「なら約束してください。オレが一緒なら、いつでもムッシューの様子を見せてあげますけれど、絶対に独りでは近寄ったりしないって」
ついでに、ムッシューがどれだけ作業の邪魔をされるのを嫌って、その結果、どれほどの損害が予測されるかも詳細に説明した。それはもうガチより真剣に。
「……ムッシュさん、やっぱり一種の解離性同一性障害なのかなー? 仕事にのめり込むことでトラウマを癒すってカンジのー」
「二重人格ってこと? あのムッシューが……」
葉植さんが歩き出したので、オレも、キャスターバッグの把手を握りなおして彼女に並進。
「MRI検査すれば、海馬がフツーより一二パーセント小さいらしいから一発だねー。でも、そーじゃなければ、境界性人格障害ってこともあり得るー。仕事を邪魔した途端に、誰彼かまわず凶暴になって、そのあと被害妄想にもなるんでしょー?」
「……えぇ、まぁそんなカンジですけれど」
「今どきの芸術家ってー、多くがお坊ちゃま育ちだし、プライドも高くないとやってらんないだろーし。ムッシューさんも、条件的には当て嵌まりそーだもんねー」
「詳しいんですね、またそう言うこと? でもオレ、そんなムッシューの豹変ぶりまで、葉植さんに話しましたっけ?」
確かに松の内、冬休みが終わる前にウチで葉植さんのバースデイ鍋パーティを開いて、ムッシューの仕事が終わったら、またウチでうちあげ鍋パーティをしてあげようとは言い合っていた。
しかし、ムッシュー個人についての情況を、オレはほとんど話さなかったと思うんだけれど……。
「ウン。ボクのほかには誰~も、いつの間にか自分で勝手に呑んじゃって、酔いをまわしてた楯クンを、相手にしたらマズいとビビって知らぬ存ぜぬだったからねー。長長と、色色聞かせてもらっちゃったよー」
「……ガチですかそれ?」
「その様子じゃー楯クンは、まるで憶えていないんだろーけど、バイト大変そーだねってボクがゆったら、ありがとありがとって、ボクの膝で泣き出してー」
「……えぇっ、マジガチですかそれ……」
「ホントだよ~。そこへ、ヴィーちゃんに激烈なバックアタックを喰らわされたから、楯クンはー、そのまま昏倒しちゃったんだしー」
「
災いの連鎖
とでも訳すべきシリーズですか?」ホント、相も変わらず
この人も、これでかなり恵まれた家庭に生まれ育ち、頭の出来の方だって血統書付きときているんだから、なんだか嫌気がぶり返してくる。
まぁ葉植さんの場合、オレとは存在する生活圏と言うか、生態系からして違うと言えそうなので、妬ましさは全然カンジられないんだけれど。
「別に、楯クンにもいっぱい買ってーとはゆわないから、安心おしー。けどー、興味がありそーな人がいたら、宣伝しといてちょうだいねー」
「いや別に……いぇ、宣伝の方はしときますけれど」
「……どしたのー?」
ヤバッ、卑下が顔に出ちまっていたらしい。
「まぁ、でもよかったです。ここでオレと出交わさなかったら、建設現場の入口で追い返されてましたよ。それに、仕事中のムッシューには、本当に会えないんです。冗談じゃなく別人になってますから。オレが受けとってきちんと届けますよ、それ」
「ンー。たぶんツイてるのは楯クンの方だねー。ボクがここを通らなくても会えてたよー。だけど、フト思うトコがあって、ムッシュさんがどんなカンジなのか見たくなったのー、チョットでいーから」
しょうがないな、葉植さんでは。
夜間とか、誰も追い返す者がいない時にムリにでもどこからか侵入しそうなんだよなぁ。それならまだしも、侵入する前に失敗って、大ケガでもされたら堪らないし。
「なら約束してください。オレが一緒なら、いつでもムッシューの様子を見せてあげますけれど、絶対に独りでは近寄ったりしないって」
ついでに、ムッシューがどれだけ作業の邪魔をされるのを嫌って、その結果、どれほどの損害が予測されるかも詳細に説明した。それはもうガチより真剣に。
「……ムッシュさん、やっぱり一種の解離性同一性障害なのかなー? 仕事にのめり込むことでトラウマを癒すってカンジのー」
「二重人格ってこと? あのムッシューが……」
葉植さんが歩き出したので、オレも、キャスターバッグの把手を握りなおして彼女に並進。
「MRI検査すれば、海馬がフツーより一二パーセント小さいらしいから一発だねー。でも、そーじゃなければ、境界性人格障害ってこともあり得るー。仕事を邪魔した途端に、誰彼かまわず凶暴になって、そのあと被害妄想にもなるんでしょー?」
「……えぇ、まぁそんなカンジですけれど」
「今どきの芸術家ってー、多くがお坊ちゃま育ちだし、プライドも高くないとやってらんないだろーし。ムッシューさんも、条件的には当て嵌まりそーだもんねー」
「詳しいんですね、またそう言うこと? でもオレ、そんなムッシューの豹変ぶりまで、葉植さんに話しましたっけ?」
確かに松の内、冬休みが終わる前にウチで葉植さんのバースデイ鍋パーティを開いて、ムッシューの仕事が終わったら、またウチでうちあげ鍋パーティをしてあげようとは言い合っていた。
しかし、ムッシュー個人についての情況を、オレはほとんど話さなかったと思うんだけれど……。
「ウン。ボクのほかには誰~も、いつの間にか自分で勝手に呑んじゃって、酔いをまわしてた楯クンを、相手にしたらマズいとビビって知らぬ存ぜぬだったからねー。長長と、色色聞かせてもらっちゃったよー」
「……ガチですかそれ?」
「その様子じゃー楯クンは、まるで憶えていないんだろーけど、バイト大変そーだねってボクがゆったら、ありがとありがとって、ボクの膝で泣き出してー」
「……えぇっ、マジガチですかそれ……」
「ホントだよ~。そこへ、ヴィーちゃんに激烈なバックアタックを喰らわされたから、楯クンはー、そのまま昏倒しちゃったんだしー」