012 _____________ ‐3rd part‐
文字数 1,572文字
大体、何が謎の雑誌モデルだか?
もっとも、モデルって人種のほとんどがオレのストライクゾーンから悉皆 なまでにハズレた面相なもんだから、合点がいくと言えばいく。
でもそれを口外しちまったら最後、ここが修羅場と化しちまう。
「とにかく、わかったから温和 しくしてくれ。単なるヴィーの勘繰りにすぎないんだって納得したろ? 商売の邪魔になるから、寄り道せずにさっさと大学へ行けよ」
「もう行って来たもんっ。二限目、珍しく出席最初に取ったから、裸足になってまで脱出して来たのに。代返だって一限目からモノマネしてあげてるのにぃ。その言いぐさは何だってぇのよぉ!」
「だから、代返なんて要らないってぇの。オレは後期からインレグにしたん──」
「おい楯、さっきの客たちV&Mの人だってホントか? ちゃんとしたビジネスってどう言うことだっ」
──っと、宝婁センパイまで割り込んで来ないで欲しい。
でも、そのオレの肩を掴む力が結構強く、なんかいつになく複雑そうな面持だ……ツいているのかいないのか? どんどんウザいことになってくる。
センパイの天邪鬼 な自尊心を害さずに、事の仔細を伝えることができるとはとても思えない。しかもこんな状況下で……。
「チョットォ、ポールは横からシャシャリ出て来ないでよねっ」
「喧 しいっ、西木の方こそ引っ込んでやがれ」
「またフツウに呼んだぁ! このクソヒゲダサチビ一〇円パゲオヤジ、もう完全、完璧、完膚なきまでにシバキ倒すぅっ」
「んだとぉ! こいつはアフリカを放浪していた時にできた名誉の傷だ。カラコンなんかハズしてよく見ろ節穴っ、カッケ~天下御免の三日月形だしサイズは五〇円玉だろがっ」
センパイは自分の側頭部を指し示すが、オレを掴んでいる方の握力はさらに強まるから堪らない。
「フンッ、そんだけちんまく見えるってことよっ、寸足らずぅ」
「おまえこそ何だそのゲロリンピーな格好は? 派手なモンばっか寄せ集めて着るのがアヴァンギャルドって意味じゃねぇんだよっ。人のこと言うなんざ四二〇〇年早いぜ、この縄文式火炎土偶が!」
「ガァーッ! 言っちゃったわね、モ~信じられないっ、モ~二度とあんたのTシャツなんか買ってやんないんだからぁ!」
「あぁ結構だねっ、おまえがアンコールしてたシド・ヴィシャスとデイヴィッド・ボゥイのポトレなんかは、さっさと仕上げて名武ブラザースに売っちまうだけだ。もう最高の出来にしてやるからなっ」
「あ~ん、フザケんな卑怯者っ。いいもん、チッペとチェルトから奪いとるだけだもん、ザマミロちんちくりんっ」
低次元な罵言の応酬につい鼻が鳴ってしまうけれど、この二人では放っておくと冗談では済まなくなる。
マジでとっ組み合いになりかねない……横目を送ると、葉植さんはまるでおかまいなく自分の世界に入り込んで、茣蓙の上に開いた大福帳に売上明細と金額のほかに、先ほどのムッシューの似顔絵らしきモノを描き描きしている。
もう一方の毛絲さんは、そろりそろりワゴンをズラし始めていた。
ともあれここはセンパイから先に制圧しよう。
身長‐体重がオレより一回り半小さいので、いざとなれば担ぎ上げて往なせる。
対してヴィーは、ハイキューでもスーパー付きのエースだったらしく、一七九センチ六〇キロのオレと大差がない。
今日は履いてる厚底の分さらにデカくも重くもなっているはずだし、パワーだって並大抵のレヴェルじゃないんだ。
男の眼には、動作の全てが大振りで俊敏さに欠けて映りはするヴィーではあるけれど、ナメてかかるととんでもないことになる。
入学時に、学部セクションの顔寄せコンパの席でヴィーを、
もっとも、モデルって人種のほとんどがオレのストライクゾーンから
でもそれを口外しちまったら最後、ここが修羅場と化しちまう。
「とにかく、わかったから
「もう行って来たもんっ。二限目、珍しく出席最初に取ったから、裸足になってまで脱出して来たのに。代返だって一限目からモノマネしてあげてるのにぃ。その言いぐさは何だってぇのよぉ!」
「だから、代返なんて要らないってぇの。オレは後期からインレグにしたん──」
「おい楯、さっきの客たちV&Mの人だってホントか? ちゃんとしたビジネスってどう言うことだっ」
──っと、宝婁センパイまで割り込んで来ないで欲しい。
でも、そのオレの肩を掴む力が結構強く、なんかいつになく複雑そうな面持だ……ツいているのかいないのか? どんどんウザいことになってくる。
センパイの
「チョットォ、ポールは横からシャシャリ出て来ないでよねっ」
「
「またフツウに呼んだぁ! このクソヒゲダサチビ一〇円パゲオヤジ、もう完全、完璧、完膚なきまでにシバキ倒すぅっ」
「んだとぉ! こいつはアフリカを放浪していた時にできた名誉の傷だ。カラコンなんかハズしてよく見ろ節穴っ、カッケ~天下御免の三日月形だしサイズは五〇円玉だろがっ」
センパイは自分の側頭部を指し示すが、オレを掴んでいる方の握力はさらに強まるから堪らない。
「フンッ、そんだけちんまく見えるってことよっ、寸足らずぅ」
「おまえこそ何だそのゲロリンピーな格好は? 派手なモンばっか寄せ集めて着るのがアヴァンギャルドって意味じゃねぇんだよっ。人のこと言うなんざ四二〇〇年早いぜ、この縄文式火炎土偶が!」
「ガァーッ! 言っちゃったわね、モ~信じられないっ、モ~二度とあんたのTシャツなんか買ってやんないんだからぁ!」
「あぁ結構だねっ、おまえがアンコールしてたシド・ヴィシャスとデイヴィッド・ボゥイのポトレなんかは、さっさと仕上げて名武ブラザースに売っちまうだけだ。もう最高の出来にしてやるからなっ」
「あ~ん、フザケんな卑怯者っ。いいもん、チッペとチェルトから奪いとるだけだもん、ザマミロちんちくりんっ」
低次元な罵言の応酬につい鼻が鳴ってしまうけれど、この二人では放っておくと冗談では済まなくなる。
マジでとっ組み合いになりかねない……横目を送ると、葉植さんはまるでおかまいなく自分の世界に入り込んで、茣蓙の上に開いた大福帳に売上明細と金額のほかに、先ほどのムッシューの似顔絵らしきモノを描き描きしている。
もう一方の毛絲さんは、そろりそろりワゴンをズラし始めていた。
ともあれここはセンパイから先に制圧しよう。
身長‐体重がオレより一回り半小さいので、いざとなれば担ぎ上げて往なせる。
対してヴィーは、ハイキューでもスーパー付きのエースだったらしく、一七九センチ六〇キロのオレと大差がない。
今日は履いてる厚底の分さらにデカくも重くもなっているはずだし、パワーだって並大抵のレヴェルじゃないんだ。
男の眼には、動作の全てが大振りで俊敏さに欠けて映りはするヴィーではあるけれど、ナメてかかるととんでもないことになる。
入学時に、学部セクションの顔寄せコンパの席でヴィーを、
デカッ!
と思わず野次ったアホが一撃、アタック掌底を眉間に喰らって失神させられた上、鞭打ちで通院生活を余儀なくさせたという確固たる前歴があるときているんだから……。