063 _____________ ‐3rd part‐
文字数 1,629文字
「フンッ。オレは時間すら余ってないビンボーなんだよっ。片親にさえ遠く見離されてる穀潰 しだからな」
「ワケわかんな~い。穀潰しってヒマじゃんフツウ、見捨てられてたら、穀なんかも潰せないだろうしぃ」
「……とにかくバイトはサボれないのっ。ヴィーはモデルなんて左団扇な商売してっから、わかりゃしないんだろうけれどさ、全っ然っ」
「ムカつく~。わかってないのは楯の方じゃん、楽なんかじゃないよ全然。けどスターになったら、もうアタシをツラい目に遭わせた連中なんかとは、二度と仕事しないって仕返しができるしぃ、結局は、全部自分のためだからやってられるんだけどぉ」
「あっそ」……わかってないんじゃなく、わかりたくないだけだ、そんなことオレは!
「そこんトコ、楯の忙しさは意味ないよねぇ。遊びにも行けずに働いて働いて、もらえるのはおカネだけじゃ、あまりに当然すぎて、つまんなすぎぃ」
チッ、なんか返り討ちに遭った気分。それも、
「とにかく、温泉になんか行くもんかっ。これでもオレはオレのために厳選してバイトしてるんだ、たった二度ばかし雑誌に載ったぐらいでわかったような口を叩くなよ。それから、オレの朝メシを喰うな! 要るなら昨日の内にちゃんと里衣さんにお願いしとけっ」
「だからぁ、これからバイソンデリに行くんでしょ? 片づけのバイトが終わったらそこで食べればいいじゃん、待っててあげるからぁ。あそこ、本場仕込みのフォーとチェーが評判なんだってぇ」
……嫌味と非難だけ聞こえないってかコイツはぁ。
「朝っぱらからエスニックなメニュー喰いたかないね、今日も忙しいんだオレは!」
事実ヴィーにつき合っているヒマはない。ヒマでもつき合いたくないんだから。
それに、今日こそはデザインの方を、有勅水さんに提出できる形にしないと。
……このビジネスがなかったら、ヴィーの言葉に首を括りたくなってるところだよなっ。
「あ、楯クン今起きた? サヴァサヴァ~。ヴィーちゃん、手配中のタラッタ連行して来たよぉ。新しいネイルやってもらおー」
毛絲さん、今日のコスプレOOTD(一日のスタイル)は、完成度が極まったと言う1級呪術師キャラですか?
その邪魔で奇っ怪すぎる白い三つ編み前髪へ、とりあえずオレは、掌だけで
……多々良 さんも可哀想に。
メイクアップアートのコンテストで優勝した、マジメで前途有望な専門学校生だそうだけれど、あの二人と知り合っちまったのが運の尽き。
オレは「朝からお疲れさまですっ」と、玄関で手強そうなロングブーツを脱ぎにかかっている多々良さんに挨拶し、そのまま二階へと着替えに戻ることにする。
これでヴィーもヒマではなくなったろうから。
「待ってったら楯、チョットこれだけ目を通してってよねっ」
ったく、しつこいったらない。
そのヴィーが、さっきから何を振り回しているのかと思ってはいたけれど、それは、どうやら大学からの封書みたいだ。
それも、よく見ればスマイソン社製の特段なヤツ。しかもオレ宛なのに、既に断りもなく開けられてやんの。
「同じの、私のトコにもきてたんだけど、ヤバげだから中を見なかったんだぁ。読んで用件を教えてよ」
開封しておいて、教えてくれもないもんだ。
でも、まさかとは思うけれど、例のド・トリオによる必勝セミナーの件が大学にバレて、咎められたりしちまうんじゃないだろうな?
そんな不吉な予感が、かなりリアルにしてこないこともない……。
「ったくもう、そっちを先に言ってくれよ」
「だぁって、温泉に行けなくなりそうでイヤだったんだもん」
マジ? ウソだろ!
「何が温泉だよ、ヘタすりゃ懲戒処分じゃないかっ」
ヴィーの手からライルブルーの封筒をふんだくり、中の通知、もしくは通告を気忙 しなく広げて読む──。
……そこにはなんと、さらに思いも寄らない学部命令が!
「ワケわかんな~い。穀潰しってヒマじゃんフツウ、見捨てられてたら、穀なんかも潰せないだろうしぃ」
「……とにかくバイトはサボれないのっ。ヴィーはモデルなんて左団扇な商売してっから、わかりゃしないんだろうけれどさ、全っ然っ」
「ムカつく~。わかってないのは楯の方じゃん、楽なんかじゃないよ全然。けどスターになったら、もうアタシをツラい目に遭わせた連中なんかとは、二度と仕事しないって仕返しができるしぃ、結局は、全部自分のためだからやってられるんだけどぉ」
「あっそ」……わかってないんじゃなく、わかりたくないだけだ、そんなことオレは!
「そこんトコ、楯の忙しさは意味ないよねぇ。遊びにも行けずに働いて働いて、もらえるのはおカネだけじゃ、あまりに当然すぎて、つまんなすぎぃ」
チッ、なんか返り討ちに遭った気分。それも、
そいつを言ったらお終ぇよ
的なことを、サラッと言いぬけられちまったんじゃねぇの?「とにかく、温泉になんか行くもんかっ。これでもオレはオレのために厳選してバイトしてるんだ、たった二度ばかし雑誌に載ったぐらいでわかったような口を叩くなよ。それから、オレの朝メシを喰うな! 要るなら昨日の内にちゃんと里衣さんにお願いしとけっ」
「だからぁ、これからバイソンデリに行くんでしょ? 片づけのバイトが終わったらそこで食べればいいじゃん、待っててあげるからぁ。あそこ、本場仕込みのフォーとチェーが評判なんだってぇ」
……嫌味と非難だけ聞こえないってかコイツはぁ。
「朝っぱらからエスニックなメニュー喰いたかないね、今日も忙しいんだオレは!」
事実ヴィーにつき合っているヒマはない。ヒマでもつき合いたくないんだから。
それに、今日こそはデザインの方を、有勅水さんに提出できる形にしないと。
……このビジネスがなかったら、ヴィーの言葉に首を括りたくなってるところだよなっ。
「あ、楯クン今起きた? サヴァサヴァ~。ヴィーちゃん、手配中のタラッタ連行して来たよぉ。新しいネイルやってもらおー」
毛絲さん、今日のコスプレOOTD(一日のスタイル)は、完成度が極まったと言う1級呪術師キャラですか?
その邪魔で奇っ怪すぎる白い三つ編み前髪へ、とりあえずオレは、掌だけで
おはよう御座います
を返しておく。……
メイクアップアートのコンテストで優勝した、マジメで前途有望な専門学校生だそうだけれど、あの二人と知り合っちまったのが運の尽き。
オレは「朝からお疲れさまですっ」と、玄関で手強そうなロングブーツを脱ぎにかかっている多々良さんに挨拶し、そのまま二階へと着替えに戻ることにする。
これでヴィーもヒマではなくなったろうから。
「待ってったら楯、チョットこれだけ目を通してってよねっ」
ったく、しつこいったらない。
そのヴィーが、さっきから何を振り回しているのかと思ってはいたけれど、それは、どうやら大学からの封書みたいだ。
それも、よく見ればスマイソン社製の特段なヤツ。しかもオレ宛なのに、既に断りもなく開けられてやんの。
「同じの、私のトコにもきてたんだけど、ヤバげだから中を見なかったんだぁ。読んで用件を教えてよ」
開封しておいて、教えてくれもないもんだ。
でも、まさかとは思うけれど、例のド・トリオによる必勝セミナーの件が大学にバレて、咎められたりしちまうんじゃないだろうな?
そんな不吉な予感が、かなりリアルにしてこないこともない……。
「ったくもう、そっちを先に言ってくれよ」
「だぁって、温泉に行けなくなりそうでイヤだったんだもん」
マジ? ウソだろ!
「何が温泉だよ、ヘタすりゃ懲戒処分じゃないかっ」
ヴィーの手からライルブルーの封筒をふんだくり、中の通知、もしくは通告を
……そこにはなんと、さらに思いも寄らない学部命令が!