243 _________________ ‐2nd part‐
文字数 1,470文字
やっぱりドッペルゲンガーや二重人格、はたまた実はそっくりの弟が──なんて、戯けたオチなどなく、正真正銘、葉植さん本人であることをオレにダメ押しする。
さらには、これまでの全部が事実だってことまでをも。
「…………」
「はてさて、それでは楯クン、納得するためにボクをどうしたいんだろうか?」
葉植さんは、また完全な真顔で言ってくる。
「……どう、って?」
「確証もなくボクを警察へ突き出しても、ムダなことはわかってるよね。それともボクの脳天を釘抜きで殴ってから、包丁で心臓を滅多突きにでもする? よかったら釘抜きも包丁も貸すよ」
「へっ……」
「どちらも新しく買った、入手経路の特定なんかもできない量販品だけど、手口が一緒では、ボクの罪まで、楯クンが背負わされかねないけどねー」
「……そんなこと、できるわけがないじゃないかっ」
「そうだよね、ボクを殺したら、楯クンもボクと同じ人殺しだ。一人殺すも何十人殺すも、量刑が異なるだけで、世間からの誹 りは同じだし」
「って……」
「一時の気の迷いで、そんなモノにはならない方がいい、楯クンには耐えられない。同級生たちを殺した犯人がボクだと知ったくらいで、そんなに混乱しているものね」
「…………」
「と言うより、元よりムラがありすぎる精神の脆い部分から崩壊しつつあるのかな? そうなることをミラノ嬢は予測していたから、黙り続けてくれていたんだろうね。将来的にボクなんかを頼るのも、おそらくは楯クンのためだし」
「…………」
「ほら楯クン、さっきから過呼吸気味だ、とにかく座って座って。エスプレッソ、淹れてあげようか? わざわざマシンをもって来て、欲しい時にいつでもスグ状態で、スタンバらせてもいるんだしさ」
葉植さんに、何を言われているのかよくわからない。わかった部分だけで、ミラノへ目を向けてしまう。
「……そうなの、ミラノ?」
「だって楯が、殺された同級生たちより、殺した葉植木春菊の方が好きだって、わかってたから。最初に大学から届いた手紙も、捨てないで大切に仕舞ったのも、いつか自分の子供に自慢できるって思ったからでしょ」
「思ったって、そんなの深い意味なんかない、本気じゃないよ」
「そう言うのが、ホントの本気なんだよ。ワタシは今のままだと、楯の子供を産んで幸せに育ててあげられないんだもん。ワタシの体が治るように、勉強や研究に向いてる人にガンバってもらうしかないない。葉植木春菊は、ワタシが知ってる中で一番の適任者なんだよ」
「それは、そうかもしれないけれど、でもっ、この葉植さんは違うんだ。オレの知ってる葉植さんは、もっと、その何て言うか……」
オレは、話し方が変わっただけで、葉植さんの一体何が違うと言うんだろ?
葉植さんなら何だってアリじゃないか、たとえそれが殺人でも。その被害者が、偶偶オレの同級生だったというだけであって。
「おわぁ?」──オレの体が、今度はオレの全身が宙に浮いた。
勝手に足が、腰が、見えない何かに抱え上げられたような感触など全くなく、デスクチェアへと運ばれてしまった。
「ビックラこんしたぁ? でも、それで楯だけじゃなく、葉植木春菊も落ち着けるんだよ。こんなトコだと、楯はやっぱり大きくカンジるから、立ってると威圧感が出ちゃうんだよ」
「…………」
「興奮と緊張で、表情や態度まで上ずってきてるし。座れば、楯の肩の力もぬけるでしょ。仰け反ったり、頭を抱えたりも自由にできるんだよ」
そうミラノはニッコリと言うけれど……いや、これもダメダメなだけ。情けないくらいに、心配をかけてちゃっているんだなオレ。
さらには、これまでの全部が事実だってことまでをも。
「…………」
「はてさて、それでは楯クン、納得するためにボクをどうしたいんだろうか?」
葉植さんは、また完全な真顔で言ってくる。
「……どう、って?」
「確証もなくボクを警察へ突き出しても、ムダなことはわかってるよね。それともボクの脳天を釘抜きで殴ってから、包丁で心臓を滅多突きにでもする? よかったら釘抜きも包丁も貸すよ」
「へっ……」
「どちらも新しく買った、入手経路の特定なんかもできない量販品だけど、手口が一緒では、ボクの罪まで、楯クンが背負わされかねないけどねー」
「……そんなこと、できるわけがないじゃないかっ」
「そうだよね、ボクを殺したら、楯クンもボクと同じ人殺しだ。一人殺すも何十人殺すも、量刑が異なるだけで、世間からの
「って……」
「一時の気の迷いで、そんなモノにはならない方がいい、楯クンには耐えられない。同級生たちを殺した犯人がボクだと知ったくらいで、そんなに混乱しているものね」
「…………」
「と言うより、元よりムラがありすぎる精神の脆い部分から崩壊しつつあるのかな? そうなることをミラノ嬢は予測していたから、黙り続けてくれていたんだろうね。将来的にボクなんかを頼るのも、おそらくは楯クンのためだし」
「…………」
「ほら楯クン、さっきから過呼吸気味だ、とにかく座って座って。エスプレッソ、淹れてあげようか? わざわざマシンをもって来て、欲しい時にいつでもスグ状態で、スタンバらせてもいるんだしさ」
葉植さんに、何を言われているのかよくわからない。わかった部分だけで、ミラノへ目を向けてしまう。
「……そうなの、ミラノ?」
「だって楯が、殺された同級生たちより、殺した葉植木春菊の方が好きだって、わかってたから。最初に大学から届いた手紙も、捨てないで大切に仕舞ったのも、いつか自分の子供に自慢できるって思ったからでしょ」
「思ったって、そんなの深い意味なんかない、本気じゃないよ」
「そう言うのが、ホントの本気なんだよ。ワタシは今のままだと、楯の子供を産んで幸せに育ててあげられないんだもん。ワタシの体が治るように、勉強や研究に向いてる人にガンバってもらうしかないない。葉植木春菊は、ワタシが知ってる中で一番の適任者なんだよ」
「それは、そうかもしれないけれど、でもっ、この葉植さんは違うんだ。オレの知ってる葉植さんは、もっと、その何て言うか……」
オレは、話し方が変わっただけで、葉植さんの一体何が違うと言うんだろ?
葉植さんなら何だってアリじゃないか、たとえそれが殺人でも。その被害者が、偶偶オレの同級生だったというだけであって。
「おわぁ?」──オレの体が、今度はオレの全身が宙に浮いた。
勝手に足が、腰が、見えない何かに抱え上げられたような感触など全くなく、デスクチェアへと運ばれてしまった。
「ビックラこんしたぁ? でも、それで楯だけじゃなく、葉植木春菊も落ち着けるんだよ。こんなトコだと、楯はやっぱり大きくカンジるから、立ってると威圧感が出ちゃうんだよ」
「…………」
「興奮と緊張で、表情や態度まで上ずってきてるし。座れば、楯の肩の力もぬけるでしょ。仰け反ったり、頭を抱えたりも自由にできるんだよ」
そうミラノはニッコリと言うけれど……いや、これもダメダメなだけ。情けないくらいに、心配をかけてちゃっているんだなオレ。