201 ____________ ‐2nd part‐
文字数 1,718文字
だってのに、トリノさんからはいつになく、明らかにワクつきが窺えるし。
「なんだか、とてもおもしろそう。自分をストーキングしている男を援護する、快楽殺人者の役だなんて。小さい頃にやった、祝福を歌う天使以来の大役なので」
「……それ、とっくにミラノから聞いちゃってましたね? けれど、センパイにも内緒にしといてくださいよ絶対っ」
「それは当然なので。キミにも今まで、内緒にできていたことだし」
「まったく。……ホンット、変におもしろがってませんか?」
「なので、私が興に乗じることを、ミラノがノらないわけがない。破壊も死も、ミラノにすれば、人類が迸らせる美しい生命の煌 きの結果、功績であり偉勲なんだそうなので」
「そんな風に言われてもなぁ……」
「何事も、キミが本気でやる以上、ミラノは期待しているはずだよ。どんな結末になろうと、誰よりもキミに感動してくれると思う」
そう言いながらトリノさん、食後のエスプレッソとは違って、紅茶の淹れ方にはこだわりが全くないみたい。
オレたちが使ったティーポットを濯 ぐ手間も惜しんで、ティーバッグをそのままカップへ突っ込み湯を注ぐ。
でもそれ、オレですら「…………」
新しいカップを出す、わずかな手間もウザいのかトリノさん? ミラノが使ったカップで済ましちまおうだなんて、起きしなからの連続怠惰ワザときたぁ。
もしそれを、ブレンドし袋づめまでした毛絲さんが見ていたら、鼓膜が破れるくらい絶叫されているところだ。
「そもそも、今のミラノの頭には、例のニットを、自分のイメージどおりにアレンジすることしかないよ。そう言うところは母親譲りなので、気にすることない」
……まあ、そうだった。ついつい失念しちまうけれど、この、意外にも大雑把で無頓着なことが多いトリノさんと言い、かの僊河青蓮の娘なんだよねぇ。
「僊河青蓮もあんなカンジなんだ? まぁ、なんかわかる気がしそう」
「さぁ? どうなんだろう」
「でも、雑誌で、僊河青蓮の若い頃の写真を見たことがあるけれど、二人ともあんまり面影ないよね。お父さん似ってことなら、トリノさんは全部が、父親似ってことになるわけ?」
「まさか、そんな極端な話はないので。ミラノは、親たちそれぞれの、表立った部分を受継いでいる気がする、服づくりとか生地づくりとか」
「へ~。じゃぁトリノさんは?」
「私は、出来あがったモノを、どう観せるか、どう広めるかということの方に興味があって、やっぱり、両親のどちらにも通ずるところはあるんじゃないかな」
「なるほど。なんか、さすが双子の姉妹ならではってカンジがするよね?」
「キミ、知らなかった? 私とミラノは同じ生年月日だけど、一緒に生まれた双子ではないんだよ。名前が示すとおり、それぞれの生地も別別なので」
「え? それって一体……」
「一一月一二日に、ミラノはミラーノで双子で生まれて、私はトリーノでやはり双子で生まれたの。だから私たち、フツウの姉妹であって、所謂フツウの一卵性双生児ではないんだよ。フツウじゃないとすれば、親たちの方で」
「同じ日に別別の場所でって、それだけで、全然フツウの姉妹とは言えないような気がするんですけれど」
「私たちは受精卵は両親のモノだけど、サロゲートマザーから生まれているそうなので。青蓮が子供を欲しがった時には、もう自分で産むには高齢すぎたんだろうね」
「へーっ、そいつは聞いてなかったなぁ。じゃあ四姉妹? いや違うか、トリノさんは次女なんだから、ミラノと一緒に生まれたお兄さんがいるんだ。トリノさんにも弟がいる?」
「それぞれのもう片方は、死産だったらしいので。それにサロゲートマザーは、もう一人いたみたいなので、もしも全員無事だったなら、ゾッとするけど六人姉妹だったのかもしれない」
「あ、すいません。立ち入ったこと聞いたり、言ったりしちゃいました……」
「別にいい、答えたくないことではないので答えているだけなので。ミラノたちはあまり発育状態が良くなかったみたいで、だから数週間して再度私たちが試みられた。おそらく青蓮は、当時どうしても子供が欲しかったんだろうね」
なんか朝から結構ヘヴィ~、トリノさんは事もなげに話してくれているけれど。
「なんだか、とてもおもしろそう。自分をストーキングしている男を援護する、快楽殺人者の役だなんて。小さい頃にやった、祝福を歌う天使以来の大役なので」
「……それ、とっくにミラノから聞いちゃってましたね? けれど、センパイにも内緒にしといてくださいよ絶対っ」
「それは当然なので。キミにも今まで、内緒にできていたことだし」
「まったく。……ホンット、変におもしろがってませんか?」
「なので、私が興に乗じることを、ミラノがノらないわけがない。破壊も死も、ミラノにすれば、人類が迸らせる美しい生命の
「そんな風に言われてもなぁ……」
「何事も、キミが本気でやる以上、ミラノは期待しているはずだよ。どんな結末になろうと、誰よりもキミに感動してくれると思う」
そう言いながらトリノさん、食後のエスプレッソとは違って、紅茶の淹れ方にはこだわりが全くないみたい。
オレたちが使ったティーポットを
でもそれ、オレですら「…………」
新しいカップを出す、わずかな手間もウザいのかトリノさん? ミラノが使ったカップで済ましちまおうだなんて、起きしなからの連続怠惰ワザときたぁ。
もしそれを、ブレンドし袋づめまでした毛絲さんが見ていたら、鼓膜が破れるくらい絶叫されているところだ。
「そもそも、今のミラノの頭には、例のニットを、自分のイメージどおりにアレンジすることしかないよ。そう言うところは母親譲りなので、気にすることない」
……まあ、そうだった。ついつい失念しちまうけれど、この、意外にも大雑把で無頓着なことが多いトリノさんと言い、かの僊河青蓮の娘なんだよねぇ。
「僊河青蓮もあんなカンジなんだ? まぁ、なんかわかる気がしそう」
「さぁ? どうなんだろう」
「でも、雑誌で、僊河青蓮の若い頃の写真を見たことがあるけれど、二人ともあんまり面影ないよね。お父さん似ってことなら、トリノさんは全部が、父親似ってことになるわけ?」
「まさか、そんな極端な話はないので。ミラノは、親たちそれぞれの、表立った部分を受継いでいる気がする、服づくりとか生地づくりとか」
「へ~。じゃぁトリノさんは?」
「私は、出来あがったモノを、どう観せるか、どう広めるかということの方に興味があって、やっぱり、両親のどちらにも通ずるところはあるんじゃないかな」
「なるほど。なんか、さすが双子の姉妹ならではってカンジがするよね?」
「キミ、知らなかった? 私とミラノは同じ生年月日だけど、一緒に生まれた双子ではないんだよ。名前が示すとおり、それぞれの生地も別別なので」
「え? それって一体……」
「一一月一二日に、ミラノはミラーノで双子で生まれて、私はトリーノでやはり双子で生まれたの。だから私たち、フツウの姉妹であって、所謂フツウの一卵性双生児ではないんだよ。フツウじゃないとすれば、親たちの方で」
「同じ日に別別の場所でって、それだけで、全然フツウの姉妹とは言えないような気がするんですけれど」
「私たちは受精卵は両親のモノだけど、サロゲートマザーから生まれているそうなので。青蓮が子供を欲しがった時には、もう自分で産むには高齢すぎたんだろうね」
「へーっ、そいつは聞いてなかったなぁ。じゃあ四姉妹? いや違うか、トリノさんは次女なんだから、ミラノと一緒に生まれたお兄さんがいるんだ。トリノさんにも弟がいる?」
「それぞれのもう片方は、死産だったらしいので。それにサロゲートマザーは、もう一人いたみたいなので、もしも全員無事だったなら、ゾッとするけど六人姉妹だったのかもしれない」
「あ、すいません。立ち入ったこと聞いたり、言ったりしちゃいました……」
「別にいい、答えたくないことではないので答えているだけなので。ミラノたちはあまり発育状態が良くなかったみたいで、だから数週間して再度私たちが試みられた。おそらく青蓮は、当時どうしても子供が欲しかったんだろうね」
なんか朝から結構ヘヴィ~、トリノさんは事もなげに話してくれているけれど。