227 閉じた宇宙と巨人たちの凶兆 ‐1st part‐
文字数 1,252文字
おハルは、これらピアスの鼻血が噴き出て出血死しちまいそうな総額を知らないせいか、スグ横に置かれた葉植さんのキャンドルと、巨人オブジェの写真の方に気を留めているみたい。
「ねぇ楯? 何このキャンドル、どうやればこんな具合にできるんだろ。これも、あの姉妹のどっちかがつくったわけ?」
「うぅん、それは、また別のウチの仲間。そのコもかなり凄い人物なんだけれど、とり敢えずミラノまでどこ行ったんだろ? 出て行くの気づかなかった?」
おハルは、振動する音叉みたいに首をふるものの……さぁ、これからどうしたものか?
センパイの部屋のドアにはガラスが嵌ってるから、起きていれば、室内の明るさが見取れたはずだし、トイレのもそう。洗面所を兼ねてあるから、二人でも入れるけれど、ドアの小窓は暗かったと思う。
「おそらくは、ヴェンデェッタ社からのお迎えが、ヴェランダから来たんだワ。僊河青蓮ともなれば、UFOにでも乗ってるんだろうから」
「もう、駄ジャレが言える場合かに、まず頭をヒネってよねぇ」
そうこぼしつつも、ヴェランダを確認しに行かずにはいられない、カーテンが半分開いていたから──けれど、やっぱり二人がいるわけがなかった。
きやきやと侵入してくる夜気を押し切るためにも、静静ガラス戸を閉めて、おハルに向きなおれば、おハルはトリノさんのベッドに腰かけて、黒い巨人たちの写真の裏に、葉植さんが記したメッセージへと目を落としていた。
「もしやおハルって、イタリア語がわかるの?」
「んにゃ、さっぱりだワ。でも、この手紙で呼び出されたんじゃないかって、ふと思ってね。場所なら、何語だろうと読めるでしょ」
「お~っ賢いアネゴッ。それって、そのキャンドルと一緒に今日届けられたから、可能性は充分あるよ。で、書いてあった?」
「全然。場所や地名は書かれてないワ。これをもって来た人に電話すれば? こんな時間だから、その人の家に行ってるのかもよ」
「……あ~番号、知らないや。やっぱりスマホなんかもたない人なんだよ、おハルやセンパイと一緒で。連絡は、彼女がこの辺りを彷徨いてるところを、誰かしらが捕まえてしてたんだ」
「そうなの? フ~ン……」
「今まで、急ぎの用なんかなかったしね。葉植木春菊さんって言って、ウチの大学の、名物名誉教授のお孫さんなんだ」
「へ~。でも、それなら、どうとでもなるでしょスグに……」
「家は大体わかるけれど、もし行ってみて、不審がられたらどうしよう? 相手はオレと同じ歳の女のコだから、こんな夜更けに、家の電話を調べてかけるのもマズいかも? それに、葉植家は確か、ややっこしいんだよ」
「何それ? 名物教授自体はややこしそうだけど」
「彼女が生まれる前から、教授の信奉者たちが、我が物顔で住み込んでるって話でさ。葉植さんは、地下にある実験室の予備室や、書庫を部屋にするしかなかったらしいんだ」
葉植さんにしては不愉快そうに言ったために、オレも忘れずにいるんだろう、彼女のただならぬ家庭事情を例説してしまったぁ。思わずつい……。
「ねぇ楯? 何このキャンドル、どうやればこんな具合にできるんだろ。これも、あの姉妹のどっちかがつくったわけ?」
「うぅん、それは、また別のウチの仲間。そのコもかなり凄い人物なんだけれど、とり敢えずミラノまでどこ行ったんだろ? 出て行くの気づかなかった?」
おハルは、振動する音叉みたいに首をふるものの……さぁ、これからどうしたものか?
センパイの部屋のドアにはガラスが嵌ってるから、起きていれば、室内の明るさが見取れたはずだし、トイレのもそう。洗面所を兼ねてあるから、二人でも入れるけれど、ドアの小窓は暗かったと思う。
「おそらくは、ヴェンデェッタ社からのお迎えが、ヴェランダから来たんだワ。僊河青蓮ともなれば、UFOにでも乗ってるんだろうから」
「もう、駄ジャレが言える場合かに、まず頭をヒネってよねぇ」
そうこぼしつつも、ヴェランダを確認しに行かずにはいられない、カーテンが半分開いていたから──けれど、やっぱり二人がいるわけがなかった。
きやきやと侵入してくる夜気を押し切るためにも、静静ガラス戸を閉めて、おハルに向きなおれば、おハルはトリノさんのベッドに腰かけて、黒い巨人たちの写真の裏に、葉植さんが記したメッセージへと目を落としていた。
「もしやおハルって、イタリア語がわかるの?」
「んにゃ、さっぱりだワ。でも、この手紙で呼び出されたんじゃないかって、ふと思ってね。場所なら、何語だろうと読めるでしょ」
「お~っ賢いアネゴッ。それって、そのキャンドルと一緒に今日届けられたから、可能性は充分あるよ。で、書いてあった?」
「全然。場所や地名は書かれてないワ。これをもって来た人に電話すれば? こんな時間だから、その人の家に行ってるのかもよ」
「……あ~番号、知らないや。やっぱりスマホなんかもたない人なんだよ、おハルやセンパイと一緒で。連絡は、彼女がこの辺りを彷徨いてるところを、誰かしらが捕まえてしてたんだ」
「そうなの? フ~ン……」
「今まで、急ぎの用なんかなかったしね。葉植木春菊さんって言って、ウチの大学の、名物名誉教授のお孫さんなんだ」
「へ~。でも、それなら、どうとでもなるでしょスグに……」
「家は大体わかるけれど、もし行ってみて、不審がられたらどうしよう? 相手はオレと同じ歳の女のコだから、こんな夜更けに、家の電話を調べてかけるのもマズいかも? それに、葉植家は確か、ややっこしいんだよ」
「何それ? 名物教授自体はややこしそうだけど」
「彼女が生まれる前から、教授の信奉者たちが、我が物顔で住み込んでるって話でさ。葉植さんは、地下にある実験室の予備室や、書庫を部屋にするしかなかったらしいんだ」
葉植さんにしては不愉快そうに言ったために、オレも忘れずにいるんだろう、彼女のただならぬ家庭事情を例説してしまったぁ。思わずつい……。