100 それじゃ~嫩《のん》に花束を ‐1st part‐

文字数 1,240文字

 何喰わぬ顔で戻って来た剣橋と草豪は、僊河姉妹へ、花束と中形(ちゅうがた)の浴衣をプレゼントしたついでに、オレにもセイレネスのネクタイを、五人からと贈ってくれた。

 スーツなんかもってないんだけれど、セイレネスってだけでメッチャ嬉しい~! 心底からのお礼も、自然と口を衝いて出てしまう。

 二時間余りの内に、それらを買い揃えて来たってことは、剣橋と草豪は、二人で手分けをしたと考えられる。
 ド・トリオとヴィーに関する情報収集が草豪で、剣橋は買物……マジか~、オレの人生一本目のネクタイは、剣橋の趣味かよっ。
 なんか、魔除けとしては物凄い効果を発揮してくれそう。

 まぁ、とり敢えず、表面上は素直にホクホク顔をキープし続けて、剣橋たちの隠微な動きには、まるで気づいていないオレ本来のアホっぷりをとおすことにする。
 どれだけ調べられても、ヴィーが不利になることしか出てきやしないし、ヴィーの出自がわかればわかるだけ、セミナーの信憑性も高まるというもの。

 明日以降のセミナーに参加するかどうかはさておき、一度でも熱血・ド・トリオのレヴェルに触れさえすれば、明王どものことだ、必ずやそれ以上のレポートに、意地でも仕上げて提出してくれる。
 あとは、オレまでが、五人の親や大学側へチクられないよう、セミナーで教え込まれる一切を、オレが逐一、アホ丸出しで明王どもへ漏洩すれば、作戦はウマウマと完遂されることになる。

 そう思うと、未成年者が普段よりも集まっている手前、JAFと隠語化されだした梅酒のソーダ割りにも、ついつい手が伸びてしまう。
 毛絲さんが今回、新たに追加してくれたトニックウォーターで、さらに割ってチビチビとやれば、前みたいな失態は晒さずに済むだろうし……。

 親がウザ煩い、明王どもの帰りを遅くしないよう考慮して、幾分早めの時刻から開始したパーティーであったけれど、上座の和室からLDを見れば、お馴じみの顔ぶれが一〇分と過ぎない内に、きっちりとそろってくれていた。

 それに、お返しのことを考えると

だけれど、ヴィーまでが、色使いは派手なものの、セイレネスのスプリングニットなんぞを差し出してくるし、葉植さんからは、ムッシューに買占められた縦縞のキャンドルをもらえちゃうし。
 その流れでトリノさんも、していたスウォッチをオレにくれた。セイレネスのノベルティーでもレア物なので大感激!

 だからだろうけれど、これといって何ももっていなかったミラノさんまでが「それじゃぁ私は、これしかないんだよ」と、着ていたセイレネスの未発売セーターを脱ぎだすもんから、アワワとしこたま泡を喰っちまう。
 その気持だけで充分だからと、慌てて止めた。

 とにもかくにも、もうオレ史上、最大にしてサイコ~の誕生日になったけれど、少し欲気が出てしまい、有勅水さんからのプレゼントは、パーティーそのものの費用なのが惜しまれる。

 女神様のメモリアルに、ツーショット写真を撮ってもらうためにも、オレにはJAFのほど好い助けが必要だ……。
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登場人物紹介

登場人物につきましてはイントロ的に一覧で掲載しておりますぅ


当作は主人公:楯の一人称書きをしておりますので、本編内で紹介されるプロフィール情報のムラは、楯との関係性によるところが大きくなりまっす


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