232 _______________ ‐3rd part‐
文字数 1,507文字
おハルも、ムッシューのファンなのはマジガチのよう。オレのリアクションには、実に満足げで、それをどうにも隠しきれないってカンジまでする……。
「シベルネティゼ以前の彫刻や絵画までもを、≪彼が生み出すモノからは、殺意にも似た衝動が鼓吹されるのを禁じ得ない≫って具合に、非難ではなく賛辞としてね」
「……ムッシューは、自分の作品で何かとんでもないことが起きることを期待してたよ。作品が設置される場所を冒瀆するとか言ってたけれど、そんな事件があったせいなのかな?」
「いいわねぇ、シベルネティゼの作者とナマで話せたなんて。とにかく、ギリシア‐ローマ神話の巨人が彼の呼び水になったから、彼の名前も、ラテン語のDisとこじつけられていったわけだワ、ローマの古い神ディス・パテルにね」
「……そこまでは、さすがに教わってないし。どう言うこと?」
「つまりは、オリュムポス一二神の一柱である死の神プルトン、冥界の支配者ハデスってことだワ。それが、彼をザ・レルム・オブ・ザ・シェイズ、
おハルは、テーブルの上に戻していた写真をもう一度抓み上げ、またしげしげと見なおし始めた。
「……なんか、よくわからないんだけれど、わかった気がする。本当におハルがいてくれて助かったよ。オレ行って来る、二人はきっとスグ見つかると思うから」
「そうかい? 何かヒントになった、私のトリヴィア薀蓄」
「なったなった、お勉強にもなったし。ムッシューの、ザ・レルム・オブ・ザ・シェイズのたぶん最新作が、チョット行った所にあるんだよね。たぶん、そこにいるんじゃないかな。葉植さんも、その写真を絵ハガキ代わりにしたってことは、当然その辺の諸事情も調べ尽くしてあるんだろうから」
「ガチに! どこ? 本当にシベルネティゼなの、どんなっ」
「えーと、そうだなぁ一応まだ周りが工事中だし、おハルには明日見せてあげるよ。明るい方が凄さがよりわかるから。だからやっぱり留守番しててくれない? 全ては見てのお愉しみってことで。おハルが着替えてる間に、一っ走りできちゃう距離なんだよね」
「わかったわよ、別に一緒に行きたいなんて言ってないし。今から、急いでるアンタについて走るなんてのも御免だワ」
「どうも、ありがとね。じゃぁ一つヨロシク~」
「あ、ねぇ、ならこのキャンドル、下に持って行って眺めてたらダメかな? つくり方を見極めたいんだワ、ヒマ潰しにもなるし」
「いいと思うよ。何ならそれも明日、売ってる店へ連れてってあげるし。それは、葉植さんが販売促進用にもって来たはずだから。たぶん今日、店先に並べられたんだ」
「へー、これ買えるんだぁ? 是非お願いするワ。んじゃ、早いトコ行っといで」
──反射的に部屋を出たオレは、階段を下りながら思いも勝手に巡りだす……。
葉植さん、ムッシューで味を占めたとみえるな。
あのイタリア語のメッセージの主旨は、ミラノたちにも、日本土産に、自分の作品を買って帰ってくれということなのかも?
大体が、暗号っぽく、こんな時間に密 かに呼び出したことからも、ミラノたち、僊河青蓮の娘にだけ、うち明けたい頼み事があるに違いないんだし。
そう。例えばオレのテントウムシみたく、葉植印のキャンドルや石鹸もセイレネスで限定的に使って欲しい、なんて売り込みとかを、スグに進められる具体案まで用意していて、そのプレゼンへの招待状だったのかもしれない。
葉植さんなら、人目が憚られることくらい、きっちり憚ってから、憚った分だけきっちりヤリまくりそうだもんねぇ……。
「シベルネティゼ以前の彫刻や絵画までもを、≪彼が生み出すモノからは、殺意にも似た衝動が鼓吹されるのを禁じ得ない≫って具合に、非難ではなく賛辞としてね」
「……ムッシューは、自分の作品で何かとんでもないことが起きることを期待してたよ。作品が設置される場所を冒瀆するとか言ってたけれど、そんな事件があったせいなのかな?」
「いいわねぇ、シベルネティゼの作者とナマで話せたなんて。とにかく、ギリシア‐ローマ神話の巨人が彼の呼び水になったから、彼の名前も、ラテン語のDisとこじつけられていったわけだワ、ローマの古い神ディス・パテルにね」
「……そこまでは、さすがに教わってないし。どう言うこと?」
「つまりは、オリュムポス一二神の一柱である死の神プルトン、冥界の支配者ハデスってことだワ。それが、彼をザ・レルム・オブ・ザ・シェイズ、
この世のモノではない
と呼ばせる由縁なんだわよ。そのままプルトンやハデスの借名だと、もう使い古されてる感があるもんだから」おハルは、テーブルの上に戻していた写真をもう一度抓み上げ、またしげしげと見なおし始めた。
「……なんか、よくわからないんだけれど、わかった気がする。本当におハルがいてくれて助かったよ。オレ行って来る、二人はきっとスグ見つかると思うから」
「そうかい? 何かヒントになった、私のトリヴィア薀蓄」
「なったなった、お勉強にもなったし。ムッシューの、ザ・レルム・オブ・ザ・シェイズのたぶん最新作が、チョット行った所にあるんだよね。たぶん、そこにいるんじゃないかな。葉植さんも、その写真を絵ハガキ代わりにしたってことは、当然その辺の諸事情も調べ尽くしてあるんだろうから」
「ガチに! どこ? 本当にシベルネティゼなの、どんなっ」
「えーと、そうだなぁ一応まだ周りが工事中だし、おハルには明日見せてあげるよ。明るい方が凄さがよりわかるから。だからやっぱり留守番しててくれない? 全ては見てのお愉しみってことで。おハルが着替えてる間に、一っ走りできちゃう距離なんだよね」
「わかったわよ、別に一緒に行きたいなんて言ってないし。今から、急いでるアンタについて走るなんてのも御免だワ」
「どうも、ありがとね。じゃぁ一つヨロシク~」
「あ、ねぇ、ならこのキャンドル、下に持って行って眺めてたらダメかな? つくり方を見極めたいんだワ、ヒマ潰しにもなるし」
「いいと思うよ。何ならそれも明日、売ってる店へ連れてってあげるし。それは、葉植さんが販売促進用にもって来たはずだから。たぶん今日、店先に並べられたんだ」
「へー、これ買えるんだぁ? 是非お願いするワ。んじゃ、早いトコ行っといで」
──反射的に部屋を出たオレは、階段を下りながら思いも勝手に巡りだす……。
葉植さん、ムッシューで味を占めたとみえるな。
あのイタリア語のメッセージの主旨は、ミラノたちにも、日本土産に、自分の作品を買って帰ってくれということなのかも?
大体が、暗号っぽく、こんな時間に
そう。例えばオレのテントウムシみたく、葉植印のキャンドルや石鹸もセイレネスで限定的に使って欲しい、なんて売り込みとかを、スグに進められる具体案まで用意していて、そのプレゼンへの招待状だったのかもしれない。
葉植さんなら、人目が憚られることくらい、きっちり憚ってから、憚った分だけきっちりヤリまくりそうだもんねぇ……。