166 _________________ ‐3rd part‐

文字数 1,200文字

 草豪も、今かと待っているのに、剣橋へ異論を唱えて御破算にしてくれない。

 金樟なんて、この状況に端から圏外。
 剣橋の注意すら、全く耳に届かなかったようで、メッセージのチェックを余念なく続けていやがる……。

「チョットォ、人を待たせといて栄養ドリンクでナンパ成立ってどうゆこと! ったく、ここの男どもはどいつもこいつもぉ」

 筌松さんの御立腹レヴェルは、かなりの御様子。
 テーブルから上体を起こして、ショボついた目でこちらを睚眥(がいさい)していた。

 でも、その陰で、恐縮しまくっている上婾さんの怯えた表情が妙にラヴリーで、筌松さんの放つ棘棘(とげとげ)しさを相殺してくれる。

 それにしてもスウェットシャツの胸プリント、上婾さんがNSAなら、筌松さんのにはFSVだって。一体どういう着合わせだよこの二人?

「水埜の知り合い? 書庫のバイトをしていた人たちでしょう」

 聞いてきた剣橋には、意想外といった表情が窺えたけれど、草豪は、何とも不敵な微苦笑でテーブルの二人へと視線を向けている。
 きっと、オレを攻撃するネタが、一つ増えたとでも思っていやがるんだ。

「ウ~ンまぁ。って言うか彼女たち、ゼミ選びで、根上と一緒に活動してたんだよ。そこを偶偶紹介してもらったんだ」
 無論、奥に座っているコが、緑内の好きだった人だなんてことまでは言えない。

「今日はツいているみたいね。同席させていただきましょう」

「へっ?」
 オレが魂消ている瞬刻にも、剣橋は、ツッと筌松さんたちのいる丸テーブルへと向かってしまう──。

「そんなこったろうと思ったわ。呆けてないで、さっさと買って運ばないと、またドヤされるわよ。あぁヤダヤダ、こんなトロいのと特待生の座を争ってるなんて。世も末だわよホント」

 ……草豪の物言いって、つくづく血圧を急上昇させてくれる。

「あ水埜、私には、グンクワニン配合のアムブロシアね」

 金樟までもが……それも一度として、スマホの画面から眼を離しやがらずに。ホンット、ぬけ目なく鬼ムカつく奴っ。

 オレが自販機で、人数分のボタンを押している内に、剣橋たちはテーブルの二人に紹介を終え、空いた席に腰を下ろしてしまっていた。
 どうやら根上のことで、二人とオレに、聞きたいことでもあるらしい。

 テーブルにはイスが六脚、そして、剣橋と筌松さんの間に残っているヤバそうな一脚が、オレの席ということみたい……。

 嗚呼、こう言うことだったんだねミラノさん。
 でもオレは、また有勅水さんが仕入れてくれた情報を、一切他言する気はないんだよねぇ。
 剣橋たちと筌松さんたちを引き合わせたあとは、もうオレは用ナシだよねミラノさん?

「お~いビンボーな附属あがりクン、何モタモタやってるのよっ。あんたがいないと場がもたないでしょうが」

 ……場つなぎまでしないとダメなのかよぉ。
 
  ビンボーなのに朝からこんなに奢らされて、しかも筌松の奴、オレの名前を完全に忘れていやがるなっ!
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登場人物紹介

登場人物につきましてはイントロ的に一覧で掲載しておりますぅ


当作は主人公:楯の一人称書きをしておりますので、本編内で紹介されるプロフィール情報のムラは、楯との関係性によるところが大きくなりまっす


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