122 ____________________ ‐2nd part‐

文字数 1,110文字

 それじゃ、南半球だろうが北半球だろうが、どの大学受けようとも、学力的にはまず合格じゃん。
 とんでもねー。とうとうマジで、ガチに医者になれちまうのかよ葉植さん……。

「で、でも在栖川になんか来る気あるんですか? イギリスの大学へ、ほらミイラで有名な教授の後継者になりに行くんでしょう?」

「ボクそんなこと言ったっけー? 確か、行きたいーって言っただけだと思う。大体おカネを出すのは親だから、その予算次第で行き先は勝手に決まるのー」

 まあ、それはそうかも知れないけれど、学費うんぬん言い出されたら、国公立よりも安い在栖川は最有力じゃん?
 これはもう、四月から御学友になることを覚悟しておいた方いいんだろうか……。

「迷子なら、私たちと一緒に行こうよ葉植木春菊。これから、スッゴく愉しいことになるんだよ」

「あぁ、よかったらどうです葉植さん? そのあとにでも、軽くお祝いしましょうよ。正式なのは、また、みんなの都合を聞いてってことで」

「ありがとー。でもボク早く帰りたいのー、それに、ヴィーちゃんが嫌がってるから、もーここでバイバイねー」

 くるり、それ以上の問答は無用とばかりに、葉植さんはオレたちに蹌踉(よろけ)るほどの勢いで背を向けた。
 ヴィーが露骨に向けている隔て顔を、叱る(いとま)もくれやしない。
 だが、体のフラつきを鎮めて歩きだそうとするその寸秒、ミラノさんがスッとオレたちから離れて葉植さんの手をとった。

「いいから行こうよ葉植木春菊。ここ遇ったが、モモクリ三年目の浮気なんだよ」

 それからが、あまりに似気(にげ)ない葉植さんの反応──。

「やめてー。ボクに触んないでっ」

「ダメダメ~、心身ともに、じっとしてないからしょうがないない」
 
 ……こんな必死な葉植さんを初めて見た。いくらミラノさんの突っパズレた全てが、葉植さんのハズレた調子を乱すとしたって。

 掴んでいるミラノさんの手を、必死なまでに振りほどこうとするも、ミラノさんにはリーチがあるし、一歩の幅も広いので、葉植さんがどう体をよじって逃げようともカヴァーしてしまう。
 もう一方の手で、ミラノさんが握る手を引き剥がそうとするも、明らかに力負け。

 オレが呆気に取られている内にみるみる、葉植さんは、離れないミラノさんの手に無表情のまま半狂乱の様相を呈しだすあり様だ。

 そこへミラノさんも、頻りにイタリア語でまくし立てる。無論、オレには何を言い放っているのかなんてわからない。
 
「ギャーだも~! ギャなして~、ギャなせ~っ」
 
 顔を赤らめ両腕両脚をふり乱しての抵抗は尋常じゃなかった。
 なぜ葉植さんがそこまで嫌がるのかが理解不能、だからつい一驚を喫するあまり、止めにも入らず傍観してしまっていた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物につきましてはイントロ的に一覧で掲載しておりますぅ


当作は主人公:楯の一人称書きをしておりますので、本編内で紹介されるプロフィール情報のムラは、楯との関係性によるところが大きくなりまっす


ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み