255 ________________ ‐2nd part‐
文字数 1,308文字
「ボクの家族は、ボクがどんなことになろうとも、変わらずボクを愛し続けてくれる。だからこそ、ボクは家族を困らせたくなかった。ボクの家族はそれなりに地位も名誉もあって、狭いながらも、一つの社会が出来あがってしまっている」
「…………」
「ボクは命拾いをしただけで、既に壊されていた。そのボクが、さらに家族たちの社会まで壊してしまう必要なんかない。正式に正当防衛が認められても、狭い社会は狭量でもあるから、それまでに荒壊してしまう」
「…………」
「何せ、かの葉植名誉教授の不登校な孫息子が、女装趣味のため、変態男から滅茶苦茶にレイプされた挙句、その男の頸動脈をガラスの破片で切り裂いて誅殺し、陰陰とした地下室に広がる血の海の中から、全身血塗れで救出されることになるんだ。こんなにスクリーミングで、大衆の物見高さを満足させてくれそうなネタはない」
「…………」
「無論メディアから恰好の餌食にされる。ボクは病院送りにされて、未成年でもあるために、取材側の鉾先は、蓋然的にボクの家族へと向くことになるよね」
「…………」
「お祖父ちゃんを筆頭に、お父さんもお母さんも、現代の最先端のさらに先、至極真っ当な理論が基礎となってはいるものの、大衆から充分な理解を得るのが困難な、サイエンスとオカルトの境界で鬩ぎ合っているような、微妙な位置付けにある研究に携わっているからさぁ」
「…………」
「お祖父ちゃんは、長年の功績からの余喘 。お父さんは日本では予算が認められず、海外へ研究の場を求めるしかなかった。お母さんに至っては、女のすることだから仕方がないとゆう、この国の男社会の杜撰さから、研究環境が存続できているようなものだ」
「…………」
「それぞれ、全くもって微妙で狭隘 。いつ消し飛んでしまってもおかしくない、脆弱な社会に憂き身を窶 している。学者なんてそんなモノなんだ、知りたいことを一番最初に知りたいだけで、給料がもらえてるにすぎないんだしさ」
「…………」
「そんな家族の狭い社会を生贄にして、それでどうにか社会全体は収拾がついても、結局ボクが人を殺した事実は消せない。ボク自身、何の解決にもならない。それでも、楯クンなら警察に縋ると言うの?」
「…………」
「何を期待しているのか知らないけど、警察も、保健所や税務署と何ら変わらない国家の行政上の一機能にすぎないんだ。現に未だボクは、こうして容疑もかけられず自由の身にある。捜査一課も役人根性が強い職員ばかりと言う、何よりの証拠だと思わないかい?」
「…………」
オレは、もう、首すらふれなくなってしまった──。
「しょうがない、ボクは覚悟を決めることにしたよ。楯クンをここで納得させる域までもってゆくには、それしかなさそうだ。ダメ押しするけどボクは自首はしない。警察に追われだしたら、僊河姉妹と交わした契約は、守ろうにも守れなくなる。間違いなく、さらに死人が出ることになるだろう」
「……そん、なぁ……」
「捕まっても、手段を選ばず絶対に脱出する、ボクは束縛や干渉を受けたくないだけで、命は全く惜しくないからね。ボクはもう、魂を悪魔に売ったとゆうか、暴力で、否応ナシに買いたたかれてしまったんだ」
「…………」
「…………」
「ボクは命拾いをしただけで、既に壊されていた。そのボクが、さらに家族たちの社会まで壊してしまう必要なんかない。正式に正当防衛が認められても、狭い社会は狭量でもあるから、それまでに荒壊してしまう」
「…………」
「何せ、かの葉植名誉教授の不登校な孫息子が、女装趣味のため、変態男から滅茶苦茶にレイプされた挙句、その男の頸動脈をガラスの破片で切り裂いて誅殺し、陰陰とした地下室に広がる血の海の中から、全身血塗れで救出されることになるんだ。こんなにスクリーミングで、大衆の物見高さを満足させてくれそうなネタはない」
「…………」
「無論メディアから恰好の餌食にされる。ボクは病院送りにされて、未成年でもあるために、取材側の鉾先は、蓋然的にボクの家族へと向くことになるよね」
「…………」
「お祖父ちゃんを筆頭に、お父さんもお母さんも、現代の最先端のさらに先、至極真っ当な理論が基礎となってはいるものの、大衆から充分な理解を得るのが困難な、サイエンスとオカルトの境界で鬩ぎ合っているような、微妙な位置付けにある研究に携わっているからさぁ」
「…………」
「お祖父ちゃんは、長年の功績からの
「…………」
「それぞれ、全くもって微妙で
「…………」
「そんな家族の狭い社会を生贄にして、それでどうにか社会全体は収拾がついても、結局ボクが人を殺した事実は消せない。ボク自身、何の解決にもならない。それでも、楯クンなら警察に縋ると言うの?」
「…………」
「何を期待しているのか知らないけど、警察も、保健所や税務署と何ら変わらない国家の行政上の一機能にすぎないんだ。現に未だボクは、こうして容疑もかけられず自由の身にある。捜査一課も役人根性が強い職員ばかりと言う、何よりの証拠だと思わないかい?」
「…………」
オレは、もう、首すらふれなくなってしまった──。
「しょうがない、ボクは覚悟を決めることにしたよ。楯クンをここで納得させる域までもってゆくには、それしかなさそうだ。ダメ押しするけどボクは自首はしない。警察に追われだしたら、僊河姉妹と交わした契約は、守ろうにも守れなくなる。間違いなく、さらに死人が出ることになるだろう」
「……そん、なぁ……」
「捕まっても、手段を選ばず絶対に脱出する、ボクは束縛や干渉を受けたくないだけで、命は全く惜しくないからね。ボクはもう、魂を悪魔に売ったとゆうか、暴力で、否応ナシに買いたたかれてしまったんだ」
「…………」