192 _________ ‐2nd part‐

文字数 1,259文字

 ところが、どちらも、

が漂わせるヤバげなムードにでも強烈に惹かれたのか、その時点ではケーサツに相談をせず、尾行や張り込みなどの接近を選んでしまった。

 きっと

は、外見的にはフツウで、争うとなっても、負けることはないと思えるカンジなんだ。そうならたぶん、オレだって跡をつける。

 

はその途中、人けのない、自分に都合が好い所で姿を現して、目撃者である尾行者を脅す。
 さらに、人の目が届き難い場所へと、尾行者を移動させる。
 不意に

って、バールや包丁を見せつけられれば、いくら逃げ足に自信がある緑内だって、

に促されるまま、暗い搬入路の奥へと自ら進んで入るしかない。

 根上の場合は、もっと容易そうだよな、一緒にいた勝庫織莉奈を人質にすればいい。根上は

に言われるがままだ。
 根上は唯唯諾諾と、勝庫織莉奈をテープで樹に縛りつけさせられ、カメラでその写真も撮らされる。
 どんな理不尽な命令にでも、随順することだけが、勝庫織莉奈の、延ては我が身を守ることにつながるって、ムダでも信じる以外にないんだから。

 カメラも、時計も、財布も、ダクトテープも、柳刃包丁も、全部

が用意していた。
 既に、緑内殺害の罪をなすりつけるシナリオは幾つかできていて、

は、その配役に適した者が現れるのを待っていたんだ。
 そしたら、根上なんていう、最高にお(あつら)え向きな奴が釣られてきた──。

 オレにしてはなかなかの迷推理、脚色力じゃないか?

 なんか思いのほか、草豪の影響を受けちまってる……。
 でもやっぱ、かなりムリがあるよなぁ。

 そんなオレのこじつけ話が、的を射てしまっているとしたら、

は九日と一一日と、二度も勝庫織莉奈を見のがしたことになる。
 
 最初の九日は、勝庫織莉奈自体が

のターゲットになりかけて、それで呪いの正体に感づいたとも考えられるけれど、一一日まで逃がしてしまったとなると、さすがにお話になんかなりゃしない。

 

が、そんなヘマをやらかすようでは、

も疾っくの昔に捕まっている……。

 いや、でもあれか、二度とも、勝庫織莉奈に、正体がバレきっていない目撃のされ方をしたことがわかっていたなら、まだケーサツは怖くないし、勝庫織莉奈がきっちりと、確証を得に来る三度目があるって、余裕もカマしていられるか。

 勝庫織莉奈にしても、DGメンバーを見返したい一心で、毎夜ムリして出歩いていたわけだから、それこそ呪いの不得要領さに乗じて、ブラフでもかまわないから<呪いの因果律を見つけたかも>と、時折カマしておかなければいけなかったはず。

 とり敢えず、不審なふるまいをする

を宇津宮で見かけたから、三月の九日に思わせぶりな書き込みをしておいた。
 そうしたら、その二日後に、本当に、呪いの因果律に仕立てあげられそうなことに、遭遇できてしまったんじゃないか? 

 あっ、一一日!
 
 その、勝庫織莉奈が、呪いの正体に最も肉薄した出来事。
 きっとそれは、オレが根上との最後の団欒(だんらん)を学生会館のラウンジで過ごす前に、TVで報じられていた老人ホームの放火事件だっ。
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登場人物紹介

登場人物につきましてはイントロ的に一覧で掲載しておりますぅ


当作は主人公:楯の一人称書きをしておりますので、本編内で紹介されるプロフィール情報のムラは、楯との関係性によるところが大きくなりまっす


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