237 _________ ‐2nd part‐

文字数 1,305文字

「大体、特養老人ホームなのに六階建てなんて、明らかに別目的で建てたのが、強行的に転用されてる。あんなモノは焼失させてしまった方が正義だ、あの老いぼれたちだって、恐怖さえカンジずに逝ったんだしさ」

「正義? そんな根本から間違ってるトコには何をしたって正義なんかないんだよ。ワタシが言ってるのはね、何で一番最初に、夢とか希望とかから教えなかったの? ってことだよ」

「そっちこそ夢と希望だって? 何を寝ボケたことゆってるんだか、お上品にもほどがある。この国、日本では既に死語だよ死語」

「眠たいのをガマンしてお上品に起きてるけど、まだ寝ボケてはいないんだよ。人って、とっても簡単に殺せちゃうんだから、日本だって殺しちゃったあとのことなんかより、殺さないようにすることが大事なんだよ。人を殺すと、その人が死んじゃうだけじゃ済まないもん」

「…………」

「役立たずだって、人の役に立ちたい病のヴォランティアたちの夢と希望になってたじゃん。そのバランスが急に崩れたら、間違ってない所や人にまで、必ず悪い影響が出るんだよ。人間は、無人島で独りぼっちじゃない限り、他人に必ず影響を及ぼす生き物なんだから」

「…………」

「それに、人殺しで生きてくより、もっと愉しい生き方があるじゃん。葉植木春菊は、あのコにそこから教えてあげるべきだったんだよ」

「……そんなこと、あのコが聞いてくれるわけがない。直接会ったことがないから、そんな御託が並べられるんだ」

「だからだよ、ワタシが、あのコのことを怪物だって言ったのは。それに最高傑作って言うのはね、大勢の人たちからあれやこれや解釈されて、目に見える以外の意味をいっぱい背負って肥大化する、やっぱり怪物のことなんだからぁ」

「……それは、あなたの実感ってわけ?」

「あのコは、人殺しが特別なことなんだって理解はしたけど、用心深くなっただけだけ、人が死ぬこと自体は、全然特別じゃないからなんだよ。なのに、人間の葉植木春菊が余計な入れ知恵するのはダメダメだよ。でないと、人の世界へ怪物を放すのにフェアじゃないもん」

「……いいや。だからボクは人間だし、そのボクが、あのコの殺人を助けてるんだから反則じゃない。でも条件は呑むよ。ボクが殺しさえしなければいいんだよね。残りの条件ってのは何だい?」

「うんうん、葉植木春菊は医学部に合格してるよね。あのコのことは、葉植木春菊が知りたい時にワタシが何でも教えてあげるから、ちゃんと勉強して、ワタシたちの主治医になって欲しいんだよ」

「何? 健康状態どこか悪いの? まだ治療法が見つかってない病患? それとも、遺伝的にこれから発症する可能性があるとか」

「ワタシたちの生殖機能は、フツウじゃないみたいなんだよ。たぶん青蓮がワタシたちを生み出す時にしたムリムリの不妊治療で、その部分の遺伝子がキズつけられちゃったんだよ。だからワタシたちにも、女性として正常になるための治療をして欲しいんだよ」

「ン~、在栖川でも遺伝子治療の研究はやってるけど、生殖医療となると、別の大学の方がいいのかな。医学部は、イギリスとアメリカの大学も受けてるんだ」

「そんなこと、ワタシにはわからないない」
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登場人物紹介

登場人物につきましてはイントロ的に一覧で掲載しておりますぅ


当作は主人公:楯の一人称書きをしておりますので、本編内で紹介されるプロフィール情報のムラは、楯との関係性によるところが大きくなりまっす


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