287 事勿れ主義が世界を回しているんですけど ‐1st part‐
文字数 1,341文字
ではでは~、オレも尾を引かずに、普段の調子で答えさせてもらいましょうか。
「こだわりと言うより片意地かな? 勉強しに行く気は更更なくて。興味があった国は放浪して、観るべき名画‐名作も観尽 してるから、センパイならそれで充分なんだ。飽くまでも仕事の依頼で、向こうからセンパイに来て欲しいって、御指名でもない限りはさ」
「そう……」
「国内でも全然無名だってのに、センパイは、ポスト‐ニューペインティングとか嘯いちゃって、キャンヴァスには描かない。新人の登竜門となるような美術展に出品できる規定から、ワザとはずれるようなモノや場所にしか描かないんだよね。自分の作品を管理し易い体裁で残すなんてことは許せないみたい」
「それはどうして?」
「名を上げれば上げるだけ、金持の道楽や財テクに使われたりするわけだから。そもそもセンパイが目指しているのは画家じゃなく、アーティストなんだよね。作品よりも、自分の存在自体を第一に評価されたいってことらしいけれど、こだわりと言えばその点かな」
「そう……」
「センパイは、刀圭 の志を捨てた時点で、途方もない夢を追い駆けなくちゃならないよう、宿命づけられてしまったのかもね。だから、いくら青クサくたって、一向におかまいなしときてるんだ」
「なら、問題は全くないってことね。とりあえず仕事はお願いするので。いいわよねミラノ? 今日にもポールにきりだしてみるけど」
「いいんだよ。だけどポールには、トリノの個人的なお願いみたいに頼んだらダメなんだよ。あとで、きちんとセイレネスから正式なオファーを出す前交渉って、思わせなくちゃ。ポールは、日本人だって意識しない方が上手くいくよ」
「そう。ではそうするわ」
「わー、ミラノってば、お姉さんみたいじゃん」
「当然じゃん。楯よりフケフケのオトナだしねー」
「あのねぇ、フケ押ししないでよね。オレはホント、そんなこと思っちゃいないんだから」
「ウ~ン、それはどうだかだか?」
「何だかんだ言っても、二人は仲の好さそうな姉妹だって意味に決まってるでしょうが、わかってるクセに。それともミラノは、オレが人情の機微を解さない、ほったらかされ一人っ子のガキタレだとでも言いたいわけ?」
「ふーん。そうなんだって、どう思うトリノ?」
「さぁ? そう思うのなら、それでいいんじゃないの、私たちに損はないので。それよりミラノ、相当眠たくて、自分自身のこと以外にチカラが働いていないんでしょ? 痩せガマンしないで、カレに負ぶってもらえば?」
「え、そうなのミラノ?」
「うんうん。こんな晩くまで、あんなつまったトコにいて疲れちゃったんだよ、楯オンブ~」
「マジで? ったくもう、一体どこがオトナだよ。なら、とにかくここだけは降りきっちゃおう、ねっミラノ、もう少しだし。平らなトコなら、オレも不安がなくなるから」
「うん、ガンバるぅ」
「そう言ってる先から眠っちゃダメだってミラノ。しっかり目を開けて、ちゃんと歩いて」
「あははぁ、ワタシ『八甲田山』に出演できるぅ?」
「知らないけれど、ここは高低差が、高高一〇メートル足らずの傾斜地の途中なんだから、山とは比較にならないってば」
……また何をいきなり? 強烈な眠気つながりで、雪中行軍遭難事件のことを言いだしてるんだと思うけど。
「こだわりと言うより片意地かな? 勉強しに行く気は更更なくて。興味があった国は放浪して、観るべき名画‐名作も
「そう……」
「国内でも全然無名だってのに、センパイは、ポスト‐ニューペインティングとか嘯いちゃって、キャンヴァスには描かない。新人の登竜門となるような美術展に出品できる規定から、ワザとはずれるようなモノや場所にしか描かないんだよね。自分の作品を管理し易い体裁で残すなんてことは許せないみたい」
「それはどうして?」
「名を上げれば上げるだけ、金持の道楽や財テクに使われたりするわけだから。そもそもセンパイが目指しているのは画家じゃなく、アーティストなんだよね。作品よりも、自分の存在自体を第一に評価されたいってことらしいけれど、こだわりと言えばその点かな」
「そう……」
「センパイは、
「なら、問題は全くないってことね。とりあえず仕事はお願いするので。いいわよねミラノ? 今日にもポールにきりだしてみるけど」
「いいんだよ。だけどポールには、トリノの個人的なお願いみたいに頼んだらダメなんだよ。あとで、きちんとセイレネスから正式なオファーを出す前交渉って、思わせなくちゃ。ポールは、日本人だって意識しない方が上手くいくよ」
「そう。ではそうするわ」
「わー、ミラノってば、お姉さんみたいじゃん」
「当然じゃん。楯よりフケフケのオトナだしねー」
「あのねぇ、フケ押ししないでよね。オレはホント、そんなこと思っちゃいないんだから」
「ウ~ン、それはどうだかだか?」
「何だかんだ言っても、二人は仲の好さそうな姉妹だって意味に決まってるでしょうが、わかってるクセに。それともミラノは、オレが人情の機微を解さない、ほったらかされ一人っ子のガキタレだとでも言いたいわけ?」
「ふーん。そうなんだって、どう思うトリノ?」
「さぁ? そう思うのなら、それでいいんじゃないの、私たちに損はないので。それよりミラノ、相当眠たくて、自分自身のこと以外にチカラが働いていないんでしょ? 痩せガマンしないで、カレに負ぶってもらえば?」
「え、そうなのミラノ?」
「うんうん。こんな晩くまで、あんなつまったトコにいて疲れちゃったんだよ、楯オンブ~」
「マジで? ったくもう、一体どこがオトナだよ。なら、とにかくここだけは降りきっちゃおう、ねっミラノ、もう少しだし。平らなトコなら、オレも不安がなくなるから」
「うん、ガンバるぅ」
「そう言ってる先から眠っちゃダメだってミラノ。しっかり目を開けて、ちゃんと歩いて」
「あははぁ、ワタシ『八甲田山』に出演できるぅ?」
「知らないけれど、ここは高低差が、高高一〇メートル足らずの傾斜地の途中なんだから、山とは比較にならないってば」
……また何をいきなり? 強烈な眠気つながりで、雪中行軍遭難事件のことを言いだしてるんだと思うけど。