186 _______________ ‐2nd part‐

文字数 1,083文字

「フンッ、どうしてオレなんかに、嫌味ったらしくそんな楽屋オチをバラすんだよ。それも、お礼の一部ってか?」

「バカねまったく。これからも根上のお葬式ができるまで、どんどん歯の浮くカンジの、クサくてお寒いエピソードで、盛り上げ守り立てしていくわけだから、根上の実像をよく知っている水埜には、どんどん違和感が膨らんじゃうはずでしょ」

「…………」

「またそれを真に受けて、途中で騒ぎだされたら迷惑だから、こうしてバラして差しあげているのよ」

「……別に。そんな違和なら、ほかの奴らだってカンジるはずだろが」

「水埜のほかは、カンジたって邪魔立てじみた真似さえしないわ。み~んな、お利口さんだから、種明かしも無用だし」

「…………」

「附属あがりってだけで、私たちはファミリー視されてるんだし、楽屋オチも何もないわよ。あんた一人、いつまでもお人好ししてるから、そんな認識まで甘くなるのっ」

「……バカバカしい説教ならたくさんだね。おまえのそれって、気をつけないと、更年期障害の初期段階と一緒だぜ、怒りっぽいのもなっ」

 とり敢えず意地見せで反撃。
 すると、なんだか幾分、草豪の鋭角な目尻が下がった気がした。

 こうして毒突き合うことを愉しんでいやがる。わかっちゃいたけれど、ホントつくづく怪態な奴だ。

「それで、課題レポートの方は仕上がってるの? 今朝方ブログの更新はなかったみたいだけど」

「書きあげたまま眠っちまったからな。そっちはどうなんだよ、特待生確実に仕上げて、アップもバッチリ済ませてるんだろなっ?」
 
「さぁね。でも、とり敢えず水埜のは、ここ最近のブログのままだと見映えがイマイチよ。ここに入れた注意を読んで、修正して、ほんの一手間だから」

 そう言って草豪は、フラッシュメモリーを放り投げてよこしやがった。
 と言うより、「…………」反射的にキャッチしていた。

 でも何だ、この似気(にげ)なくも図らざりき展開は? 目の前にいやがるのは草豪だってのに。

「参考文献の一覧も、もらったデータ、そのままを貼り付けたらダメなのわかってる? あのヴィーってコと、そっくりになったらマズいわよ。それにただ羅列するよりも、引用したり自説の論拠にした部分のページや行数まで記した方が、コピペを疑われないし、好印象でもあるのよ」

「…………」

「特にマイナーな著者が書いたモノは、選考委員の先生方が興味をもって、個人的にその資料を手にするかもしれないから、むしろ逆に、一読をお薦めするって勢いを見せる意味でもね」

「マジかよっ?」

 そんなこと、今日になって言われてもムリッ。実際には、ただの一冊として読んじゃいないんだし。
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登場人物紹介

登場人物につきましてはイントロ的に一覧で掲載しておりますぅ


当作は主人公:楯の一人称書きをしておりますので、本編内で紹介されるプロフィール情報のムラは、楯との関係性によるところが大きくなりまっす


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