221 Vesna,Vesna(春よ 春よ)Op128 ‐1st part‐

文字数 1,123文字

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「ねえ、ちゃんと起きてるなら返事くらいしなさい。さもないとドア抉じ開けちゃうよっ。聞こえてんの楯っ?」

「あはいっ……起きました。いや起きてますっ。今スグ出ますから」

 ボクサーパンツをジーンズと一緒くたに引き上げながら、とにかく立ち上がって、あたふた服装を整える。
 消臭芳香剤のボタンも、少し長めにプッシュ。これで籠もった酒臭さっぽさ、なのか? さえもシトラスミントの爽やかな香りへ──。

 ドアを開けると、サングラスをはずしていて、まるで見慣れないおハルが、両手を腰に当てての、絵に描いたようなアームアキンボーで立っていた。

「まったくもう、突然ムックリ起き上がったと思えば、さっぱり戻って来ないんだから。心配しちゃったワ」

 里衣さんから着替えを借りたのか、おハルのスウェットスーツ姿は上下ダボダボ。
 ……まるでオレ、子供に叱られているカンジ。

「あぁ、すみません。オレ、酒にもメチャメチャ弱いらしくって、みんなに周りでガバガバ飲まれてる内に、ニオイでドップリ酔っちゃったみたいで」

「別に謝らなくていいけど、その安あがりな酔いが完全に醒めたなら、退いて欲しいんだワ。女は、男ほどガマンなんかできないんだから」

「あ、はい。その、酒臭さ? って言うか、とにかく臭かったらゴメンなさい……」

「平気平気、LDに戻ってみなよ。まだまだ充分酒臭いから、楯こそ気をつけな」

 おハルに頭を下げ下げ、狭いトイレ前で入れ替わり、LDへと引き返す。

 オレはいつもと同様、和室で横にされていたらしく、毛布と広げた寝袋が、オレが眠っていたであろう痕跡を残していた。

 ……おハルは、やはりソファーで休んでいたみたいだ。毛布が退かされている位置と具合から、今までTVを見ていたことも窺える。

 壁の時計に眼をやると、もう、あと二〇分ほどで午前零時を迎えてしまう時刻だった。

 それにしても、随分とナメられたもんだ。オレはそこまで人畜無害に見えるのか?   
 まぁ、天地が引っ繰り返ったとしても、オレがおハルを襲ったりすることはないけれど。ソファーでガチに一晩過ごそうとしていたとは、つくづく肝の据わった猛者だよねぇ。
 その図太さも、厳しいバスケの練習で培われたに違いないな。

 襖戸をさらに開けて、和室にLDの明るさを広げると、押し入れの前に、セイレネスのショッパーズバッグが並べてあるのがわかった。

 近づいて中を覘いてみると──みんなに着て観せた全アイテムが、きちんと畳んで納まっている。

 たぶん、ミラノがやってくれたんだろうけれど、これ全部が、今日のオレの、残念祝いだなんて。
 悲しくて悲しくてモォ~、なんか一眠りしたあとだから、余計に嬉しさが込みあげてきちゃうよなっ──。
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登場人物紹介

登場人物につきましてはイントロ的に一覧で掲載しておりますぅ


当作は主人公:楯の一人称書きをしておりますので、本編内で紹介されるプロフィール情報のムラは、楯との関係性によるところが大きくなりまっす


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