145 蛙化現象;正統因位継承者 ‐1st part‐

文字数 1,142文字

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 とり敢えず、自信を得るため、ダメな己を変えるため、オレはしっかりとトレーニングをすることにした。

 思いっきり短絡思考ではあるけれど、トドのつまり自信とは、実際には根拠などどこにもありはしない自惚(うぬぼ)れだ。

 そこまで自分を思いあがらせるためには、まず肉体的に充実させてみるのはどうだろう?
 体力に自負心がもてなければ、漲るほどの気力なんかが出る道理もないし、あり余った気力が、ヤル気や負けん気の度を超えて、自惚れにまでさせるのではないか?

 そんな仮説の下、オレはミラノさんの賛同と励ましを得て、三日坊主をどうにかクリア。
 せめて、見苦しく鍛えている姿だけは晒したくなかったのに、悲しくも嬉しいことにミラノさんはベッタリなくらいオレと行動したがって、独りではジョギングすら外出させてもらえない。
 それこそ思いあがって、勘違いしそうになるものの、融通自在にふるまえる相手が、オレしかいないだけなんだろうけれど……。

 また、トリノさんはトリノさんで、宝婁センパイをと言うか、センパイの舞台美術の仕事をと言うか、とにかく甚く気に入ってしまったらしく、ミラノさんをほったらかしで、一緒に劇団通いを続けているときちゃってるし。

 しかしながら、そのトリノさん、劇団員たちの手にかかり随分と可愛くされてしまった。
 実に、女ターミネーターのコアチップから、戦闘モードが削除されたカンジ、ってほどの変わりよう。

 でもまぁ、オレ的には、やっぱミラノさんが一番。
 どうにも、カエルの呪いが解けた王子の気分と言うか、冤罪が証明された服役囚の心情と言うか……あり得ないと承知していても、オレなんかの子供を産んで、幸せに育ててくれるといったあの一言でミラノさん、オレのアモラス(恋の)‐サーキットでは、有勅水さんの鼻先を押さえて、堂堂のポールシッターに収まってしまっている。

 そのミラノさんから、ここ毎日ダメダメ呼ばわりされているときてるんだから、オレはどうしたって、ミラノさんたちが帰る前にダメダメ野郎を返上したい。
 ブッチャケちまえば、もはや緑内を殺した犯人なんて、完全に二の次。ダメじゃないと認めてもらうことの、副賞にすぎなくなっている。

 緑内には悪いけれど、人間ホント、生きていればこそだ。
 化けて出るのはいつでも大歓迎だけれど、祟るのはオレじゃなく、早くも行きづまってしまっている捜査本部の管理官どもにして欲しい。

 というわけで、今日も昼前からミラノさんと大学に来ている。

 春休みでも、開講期間中の八割近くの学生が活動していて、キャンパス内は一部のサーヴィスを除いて、土日もほぼ通常運営。
 総合体育館の設備を使えば、無料で幾らでも鍛えられるし、シャワーで汗を流したあとも、誰に気兼ねなく寛げる。
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登場人物紹介

登場人物につきましてはイントロ的に一覧で掲載しておりますぅ


当作は主人公:楯の一人称書きをしておりますので、本編内で紹介されるプロフィール情報のムラは、楯との関係性によるところが大きくなりまっす


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