163 _____________________ ‐3rd part‐

文字数 1,123文字

 それに、なんだか、何となく……。

「モ~いーの、ただのジョギングの途中ー。でも、モーあと一瞬遅かったら、そっちへ曲がる楯クンにすら気づけなかったー」

 ……ガチに、ジョギングだったのかなぁ、葉植さんがマジで?

 まぁ格好は間違いなくそうだけど、どうにも葉植さん、いつも以上に不健康な印象がする。
 むしろこの時間までどうしても眠れなくって、最後の手段で走ってたように見えちゃう。

「でも、よくまた出交せましたよ。運と言うより、相性が好いのかもしれませんね?」

「ウ~ン。ボクが思うに楯クンはー、強運な人の、使い余った端運(はうん)が集まるよーな運勢なんだ、モ~間違いないねー」

「端運ですかぁ。まぁウチの鍵はいつものトコなんで、お茶でも飲んで行ってください。今日ミラノさんたちはもう出かけてるし、センパイもまだ起きる時間じゃないから、何の気兼ねも要りませんよ」

「そーなんだ? そーだったんだ、そーか~……」
 
「僊河青蓮の娘たちが日本に来てるって、とうとう一部のマスコミにバレちゃったんです。内緒にしてたわけじゃないから、V&Mの招待だってことも筒ぬけで」

「……そー?」

「えぇ。有勅水さん、問い合わせへの対応が面倒だからTV以外の取材は受けることにして、それを今日一日かけて、終わりにさせちゃうそうです」

「……どして一日で~? 今日以外は、モ~ないんだぁ……」
  
「ネットでは、前からウチに遊びに来る連中の又聞きで、チョイチョイ洩らされていたようですけれど。でもフツウ信じないでしょ、それも娘たちだけなら、大騒ぎするほどでもないし」

「でもボク別にー、彼女たちのこと、そんな気にしてなんかないよー」
 
「そうですかぁ? まぁ確かにミラノさんって、手の握り方が痛い時がありますからね」

「……そそ、そーなのー」

「どうも蹣跚(ふらつ)いたり躓いたりしては、しがみつきを繰り返す内に、自然と握力が鍛えられちゃったみたいなんですよね」

「……じゃー楯クン、呼び止めてゴメンねー。彼女たちにヨロシク言っといてー、今度イタリア語を勉強して、手紙でも出すからー」

「はい。あっ、そうそう、ミラノさんも葉植さんと仲好くしたいって言ってましたよ、味方になってもいいんだとか。なんか似ているんですって」

 そう返すと葉植さん、ピクンと止まった。
 しかし、そのままふり返らずに、首を左右に傾げるような動きを繰り返しつつ、再びガサガサと行ってしまった。

 ……一体何を葉植さん、ゴルディオスの結び目でも解くかのように、考えだしちゃっているのやら?

 でも、ウチの方へは曲がらずに、また来た道へとそのまま戻ってしまったぐらいだから、葉植さんも、ミラノさんと仲好くするなんてことは、想像の圏界を超えちまっているに違いないね。
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登場人物紹介

登場人物につきましてはイントロ的に一覧で掲載しておりますぅ


当作は主人公:楯の一人称書きをしておりますので、本編内で紹介されるプロフィール情報のムラは、楯との関係性によるところが大きくなりまっす


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