224 ありふれた密室からの脱出法 ‐1st part‐

文字数 1,174文字

 ……でもまぁ、オレがカンジさせてしまうダメダメっぽさが、しっかりした女性相手ほど、物腰なんて、どうでもよくさせちゃうのかもしれないけれど。

「とにかく、本当に、野母崎へ足を向けて寝られないね」

「何? そんな殊勝っぽいことを~」

「客人を、マジでソファーで寝かすことにもなって、申しわけないし。来客用の布団は一応あるんだけれどさ、長いこと干してないから、いきなりには使えないんだよね。今度、もう少し気候が好くなったら、陽に当てとくよ」

「それなら御心配には及ばないワ。ちゃんと里衣ちゃんの部屋で、布団で寝かせてもらうことになってるから。彼女、寝る時間早いんだもん。私はポールと違って、酔いが醒めると目も冴えちゃうんだワ」

「そっか? そりゃ当然かぁ。それに、おハルはアルコールにも強そうだし」

「今日はさ、刺激的な一日だったんで、まだ多少興奮してるってのもあるんだけど。まぁアンタの無事を確認したし、私もそろそろ寝かせてもらうワ」

「……それは申しわけない、迷惑かけちゃったね」

「いいワ。みんなは毎度のことだから、大丈夫だとは言ってたけど、私のトコでも、毎度のように飲んでは、トイレで夜明ししてる懲りないアホがいるんだワ。アンタの挙動が似てたもんだからさ」

「それはそれは、重ね重ねの御心配、かたじけく思う所存に御座りまするぅ」

「ったく。じゃ私はボチボチ、美味しかった鴨肉みたいに眠るワ。これからうどんを食べるんなら、火の始末をちゃんとしとくんだよっ」

「へいへい。でも御心配なく返しっ、里衣さんが、クッキングヒーターに替えたばかりでさ。オレがどんなにマヌケでも、コンロの不始末で、出火することはまずないんだよね。だから、心安らかに安眠してくだされ、ささ、おハルのアネゴ」

「へ~、それはお見逸れ、オーソレミ~ヨ。つくづく猪口才だワ」
 
「何っすかそれは?」

「私も、マヌケたアホだってことだわよ。だから、私が吐く言葉なんか、イチイチ気にしなさんな」

「……はい。鋭意、努力したいと思います」

「楯はたぶん、その、あともうチョットってトコが良さなんだワ。アンタのデザインも、ポピュライズド‐モチーフだってのに、完全には洗練しきれてなくって。そこが、稚気たっぷりに映るもんだから、そこそこ、金銭的に余裕のある独身女性世代を中心に、ウケてるんだワ」

「……またいきなり、そのスジ的プロ発言ですねぇ」

「まぁ在栖川の文科学部生じゃ、アンタも将来は、弁護士か一流企業から実業家ってことなんだろうから、今の調子で欲を出さずにやってけばいいワ。どんなしち面倒なのでも、このおハルのアネゴがチョチョイのチョイと、命を削って仕上げてみせるからさ」

「……それは、ひたすら感謝しかないですけれど、オレはなぁ……」

 醒める~。将来性の方は、あとチョットどころじゃないとか言うと、冷めてもきちゃうし。
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登場人物紹介

登場人物につきましてはイントロ的に一覧で掲載しておりますぅ


当作は主人公:楯の一人称書きをしておりますので、本編内で紹介されるプロフィール情報のムラは、楯との関係性によるところが大きくなりまっす


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