299 喜喜こもごも ‐1st part‐
文字数 1,300文字
よくわからない動転をどうにか押し隠そうと必死こくオレに、事務長は至って朗らか……これは、とにかく狙いどおりっ。
「豪華版の卒業者年鑑だそうだ。どのページを捲っても、この国に限らず、成功者たちの名が書き連ねられているからね。一つ有効に使ってくれたまえ」
……たまえ、だって。生まれて初めて使われちゃったかも。
そして、事務局長が恭しくオレに、あのヴィーに投げつけられたのと全く同じ、ブ厚い包みを授与してくれる。
すると、事務局内の職員たちも起立して、疎らながらオレに拍手を送ってくれた。
眼鏡のおネエさんも、ようやく笑顔を見せてくれたけれど……ってことは? それって、つまり!
ますます混乱してはいたものの、ここは元気に返事と礼を述べておくという、もはや反射と化した処世術が発動──。
「いやぁ~、いきなりの意外な出来事で緊張しちゃいました。こんなこと、生まれて初めてなんですよね」
などと、あとで思いっきり自己嫌悪に陥りそうな、素直な感激を言い滑らせてしまった。
自ずと顔面も赤らんできてくれて、新しい学生証をあたふたと受けとり、事務局から逃げ出すように離れたことも、事務局長を始め職員全員には、お慰み程度の道化には映ってくれたはず。
そう願うしかない、オレとしてはこれで精一杯だ。
──本館から飛んで出て、深深と一息吐いた。
でも、そこではオレを草豪が待ち受けている。金樟はどこへ消えたか知らんけれど、気なんか全然ぬけやしない。ホント現実は緊張の連続……。
「どう、この私を蹴落として、特待生に成り上がった御気分は?」
「……知るかよ。ったく、そっちが勝手に雁首そろえて自滅したんだろうが。ヴィーだけじゃ飽き足らず、オレなんかにまで負け腐りやがって。在栖川の秘蔵っコってのは、剣橋一人だったのかよ、恥を知れ恥をっ」
「はぁ? 何よそれぇ」
「いつも要らんことばっか言って来るクセに、大事なことは黙ってやがってっ。何がなんだかさっぱりわからねぇじゃんか。ホントはこの全部、おまえらが仕組んだドッキリなんだろ?」
「そう思いたければ御勝手に。あぁそう言えば、あのヴィーってコ、なんか結構騒がれてたわよ。下萌えづいてる連中の気が知れないけど」
「知るか! それどころじゃないってのっ……」
「まぁ水埜もその内、その年鑑の重みが萌え萌え~と、全てが現実だってわからせてくれるわよ」
「ったく……」
「だけど盛者必衰、一炊の夢と言うのもまた現実よっ、前期は精精踏ん反り返っていればいいわ。あんたの場合、こっちからプライドってヤツを用意してやらなきゃ、圧し折ることもできないんだから。秋には、闘志に火が点くって感情を、たっぷり教えて差しあげるわよ」
「お断りだね。そもそも、おまえらみたいな争い好きの圧倒的勝者ばかりが、国連で世界平和のために働けるなんてのは、根本的な大間違いだよなっ」
「アラァ。言うじゃない? なかなか」
「こんな年鑑もオレには必要ないってのに、草豪にやるからランチをチャラにしろよ。でなけりゃ、断腸の思いで一万出すから、金樟と二人で精精プチグルメでも気取って来りゃいい。その代わりもう、ズルとか二度と言うなよな」
「豪華版の卒業者年鑑だそうだ。どのページを捲っても、この国に限らず、成功者たちの名が書き連ねられているからね。一つ有効に使ってくれたまえ」
……たまえ、だって。生まれて初めて使われちゃったかも。
そして、事務局長が恭しくオレに、あのヴィーに投げつけられたのと全く同じ、ブ厚い包みを授与してくれる。
すると、事務局内の職員たちも起立して、疎らながらオレに拍手を送ってくれた。
眼鏡のおネエさんも、ようやく笑顔を見せてくれたけれど……ってことは? それって、つまり!
ますます混乱してはいたものの、ここは元気に返事と礼を述べておくという、もはや反射と化した処世術が発動──。
「いやぁ~、いきなりの意外な出来事で緊張しちゃいました。こんなこと、生まれて初めてなんですよね」
などと、あとで思いっきり自己嫌悪に陥りそうな、素直な感激を言い滑らせてしまった。
自ずと顔面も赤らんできてくれて、新しい学生証をあたふたと受けとり、事務局から逃げ出すように離れたことも、事務局長を始め職員全員には、お慰み程度の道化には映ってくれたはず。
そう願うしかない、オレとしてはこれで精一杯だ。
──本館から飛んで出て、深深と一息吐いた。
でも、そこではオレを草豪が待ち受けている。金樟はどこへ消えたか知らんけれど、気なんか全然ぬけやしない。ホント現実は緊張の連続……。
「どう、この私を蹴落として、特待生に成り上がった御気分は?」
「……知るかよ。ったく、そっちが勝手に雁首そろえて自滅したんだろうが。ヴィーだけじゃ飽き足らず、オレなんかにまで負け腐りやがって。在栖川の秘蔵っコってのは、剣橋一人だったのかよ、恥を知れ恥をっ」
「はぁ? 何よそれぇ」
「いつも要らんことばっか言って来るクセに、大事なことは黙ってやがってっ。何がなんだかさっぱりわからねぇじゃんか。ホントはこの全部、おまえらが仕組んだドッキリなんだろ?」
「そう思いたければ御勝手に。あぁそう言えば、あのヴィーってコ、なんか結構騒がれてたわよ。下萌えづいてる連中の気が知れないけど」
「知るか! それどころじゃないってのっ……」
「まぁ水埜もその内、その年鑑の重みが萌え萌え~と、全てが現実だってわからせてくれるわよ」
「ったく……」
「だけど盛者必衰、一炊の夢と言うのもまた現実よっ、前期は精精踏ん反り返っていればいいわ。あんたの場合、こっちからプライドってヤツを用意してやらなきゃ、圧し折ることもできないんだから。秋には、闘志に火が点くって感情を、たっぷり教えて差しあげるわよ」
「お断りだね。そもそも、おまえらみたいな争い好きの圧倒的勝者ばかりが、国連で世界平和のために働けるなんてのは、根本的な大間違いだよなっ」
「アラァ。言うじゃない? なかなか」
「こんな年鑑もオレには必要ないってのに、草豪にやるからランチをチャラにしろよ。でなけりゃ、断腸の思いで一万出すから、金樟と二人で精精プチグルメでも気取って来りゃいい。その代わりもう、ズルとか二度と言うなよな」