273 _____________ ‐2nd part‐
文字数 1,403文字
「あぁ……」
「高周波も照射してー、それは、そこのテラス全体で増幅される。高周波ってゆーのは、無線に使われる周波数帯や高めの音波も指すーけど、ボクはー、高い周波数の強い電磁波って意味で、ゆってるの」
「…………」
「それでー、楯クンが立っていた方向に、強い磁気の乱れが起こって、そこにいる人間の脳に影響を及ぼすー。特に側頭葉は磁気に対してデリケートだし、感情と記憶に関係してるから、そこに居合わせた人の脳は、いろいろな幻覚をつくり出しちゃうことになるー」
「幻覚、あれが……」
「実際には受けてもいない感覚刺激を、受けたーと誤認すれば、誰かに触れられたと錯覚するし、そもそもー人体の筋肉は、プラスイオンとマイナスイオンが混在してるから、受けた電磁波で収縮を起こして、錯覚がよりリアルになるんだねー」
「そう言うのも全部、込みで?」
「勿論、幻聴だって起こり得るー。楯クンはさっきー、自分の脳ミソの誤認識‐誤作動と、必死に格闘ーしてたんだよ」
「…………」
「言わばー独り相撲だけど、人によっては幻覚から、自分の背中にしがみついて離れない、相手の顔を、はっきりと見るー。それが痴漢とかー、さらには怨霊ーだとか、ゆわれることになるわけ」
「……幻覚ですか、全部……」
「セイレーンたちは千状万態な、波動とゆー歌声で、人の心を眩惑するんだよ。どー? ムッシュさんって、物凄い才能の持主でしょー」
「……奇才、って言うより鬼才ですよね……」
「彼女たちのハード的な構造が一体どーなってるのか、ボクにもイマイチわからない。チョ~ット分解して、中身を覗くこともできなーい、まさに神の所業、この世のモノじゃーないとしか、言明できない」
「……ザ・レルム・オブ・ザ・シェイズ、ってわけですか……」
「もーっと早く、ムッシュさんが、ザ・レルム・オブ・ザ・シェイズだと気づいて、もーっと早くからここへ侵入して、覗いとけばよかった。もー手遅れ、モ~お手上げ。ムッシュさん自身、ちゃんと全部を憶えてるのかどーか?」
う~ん。確かに凄いし、現に凄かった。こんなモノを創るなんてタダ者じゃない。
でも、天賦の才能の使い方が、どうにも間違っているような……。
ま、オレが知ってる天才的に凄い人は、そんな人だらけだけれど、この葉植さんからして。
「それじゃ、今オレが聴いた女性の声も全部、幻聴ですか?」
「全部じゃーない。セイレーンの声は、誰もが、いつまでも聞き惚れていたくなるよーな、快美な声質。海千の船乗りどもが、我が身を顧みず、徒波 へ飛び込んででも近づきたいよーな、ね。だから、赤ん坊の泣き声や、老婆の怨み節とかは幻聴だねー」
「……でも、区別は……ムリそうですよ、はっきりとは」
「突然襲われた幻覚の恐怖感から、混乱した楯クンの脳が、ここで非業の死を遂げた僊婆のことを連想したりするとー、老婆が鬼気と迫って来てー、呪いの言葉を吐いたりしちゃうわけ。それも、自分自身が心の中で、いつも呪ってるよーな言葉でね」
「…………」恐怖の原因は、自分自身での因果応報、自縄自縛ってことなのか。
「赤ん坊の泣き声とかもー、下のY字路で、妊婦を乗せたクルマが衝突事故を起こしたことから、オーヴァーラップされるんだろーね」
「……ヤバいですって、やっぱりこのままじゃ。その事故での死産、つまりはこのセイレーンたちのせいってことでしょ? ほかにも、布団屋のオヤジとピザ屋のバイトが事故ってるし」
「高周波も照射してー、それは、そこのテラス全体で増幅される。高周波ってゆーのは、無線に使われる周波数帯や高めの音波も指すーけど、ボクはー、高い周波数の強い電磁波って意味で、ゆってるの」
「…………」
「それでー、楯クンが立っていた方向に、強い磁気の乱れが起こって、そこにいる人間の脳に影響を及ぼすー。特に側頭葉は磁気に対してデリケートだし、感情と記憶に関係してるから、そこに居合わせた人の脳は、いろいろな幻覚をつくり出しちゃうことになるー」
「幻覚、あれが……」
「実際には受けてもいない感覚刺激を、受けたーと誤認すれば、誰かに触れられたと錯覚するし、そもそもー人体の筋肉は、プラスイオンとマイナスイオンが混在してるから、受けた電磁波で収縮を起こして、錯覚がよりリアルになるんだねー」
「そう言うのも全部、込みで?」
「勿論、幻聴だって起こり得るー。楯クンはさっきー、自分の脳ミソの誤認識‐誤作動と、必死に格闘ーしてたんだよ」
「…………」
「言わばー独り相撲だけど、人によっては幻覚から、自分の背中にしがみついて離れない、相手の顔を、はっきりと見るー。それが痴漢とかー、さらには怨霊ーだとか、ゆわれることになるわけ」
「……幻覚ですか、全部……」
「セイレーンたちは千状万態な、波動とゆー歌声で、人の心を眩惑するんだよ。どー? ムッシュさんって、物凄い才能の持主でしょー」
「……奇才、って言うより鬼才ですよね……」
「彼女たちのハード的な構造が一体どーなってるのか、ボクにもイマイチわからない。チョ~ット分解して、中身を覗くこともできなーい、まさに神の所業、この世のモノじゃーないとしか、言明できない」
「……ザ・レルム・オブ・ザ・シェイズ、ってわけですか……」
「もーっと早く、ムッシュさんが、ザ・レルム・オブ・ザ・シェイズだと気づいて、もーっと早くからここへ侵入して、覗いとけばよかった。もー手遅れ、モ~お手上げ。ムッシュさん自身、ちゃんと全部を憶えてるのかどーか?」
う~ん。確かに凄いし、現に凄かった。こんなモノを創るなんてタダ者じゃない。
でも、天賦の才能の使い方が、どうにも間違っているような……。
ま、オレが知ってる天才的に凄い人は、そんな人だらけだけれど、この葉植さんからして。
「それじゃ、今オレが聴いた女性の声も全部、幻聴ですか?」
「全部じゃーない。セイレーンの声は、誰もが、いつまでも聞き惚れていたくなるよーな、快美な声質。海千の船乗りどもが、我が身を顧みず、
「……でも、区別は……ムリそうですよ、はっきりとは」
「突然襲われた幻覚の恐怖感から、混乱した楯クンの脳が、ここで非業の死を遂げた僊婆のことを連想したりするとー、老婆が鬼気と迫って来てー、呪いの言葉を吐いたりしちゃうわけ。それも、自分自身が心の中で、いつも呪ってるよーな言葉でね」
「…………」恐怖の原因は、自分自身での因果応報、自縄自縛ってことなのか。
「赤ん坊の泣き声とかもー、下のY字路で、妊婦を乗せたクルマが衝突事故を起こしたことから、オーヴァーラップされるんだろーね」
「……ヤバいですって、やっぱりこのままじゃ。その事故での死産、つまりはこのセイレーンたちのせいってことでしょ? ほかにも、布団屋のオヤジとピザ屋のバイトが事故ってるし」