265 ______________ ‐3rd part‐

文字数 1,275文字

「いえ、『ジィオン』を知ってたのは、昨日来たおハルってお客さん。彼女は、ムッシューのファンで、『ジィオン』も実際に実物を見てたから。殺人事件があったことまで聞いたせいかな? 珍しくピンときたんですよね」

「なんだー。テレパスにも何か誘導物は要るだろーって、含意を込めた写真にしたのが、余計だったー」

「あの、ハガキにしてた写真ですけれど、葉植さんも、実際にソールズベリーまで行って来たんですか?」

「行ってなーい。ボクもムッシュさんがそーだってわかる前から、ザ・レルム・オブ・ザ・シェイズのファンだっただけー。わかる前から、とーってもいー人だったから、ずっぷし恋に落ちゃってたしー」

「……そうですか」

 むぅ~、そういう発言を何の違和感もなくしちまうから、要らぬ誤解と凶事を招くことになるんじゃないの?
 気をつけるなら、その辺からにして欲しいんだけれど、葉植さん!

「あの、ハガキにした写真はー、ボクのお父さんが、ブリストル大学の講演に呼ばれた時ー、帰りに観光で立ち寄って、気球に乗って撮ったんだー」

「そうだったんですか……」

「お父さんは、高い所と妙絶な物には目がないからー、見つけるたび、ボクにも必ず教えてくれるー。ムッシュさんの、シベルネティゼ以前の作品もね、そーゆー理由で知ってたわけ」

「なるほど。含意ってのは、シベルネティゼつながりってこと?」

「それだけじゃーなく、ボクはソールズベリーには行ってないけど、ミラーノには行って来ちゃったんだー。一昨日帰ってきたばかりー」

「マジですか? そんないきなり……」

「勉強したイタリア語が通じるか、確かめたーいってお願いすれば、簡単にゆかせてくれるんだー。ミラーノには、お祖父ちゃんの教え子だった人たちもいるしー、一晩くらいなら、どこも歓迎してくれるー」

「な! 向こうで一泊しかして来なかったんですかっ? 飛行機代、勿体なぁ~」
 葉植家の血筋って、恐ろしすぎ……。

「まさかー、お泊りナーシの約五四時間のイタリア滞在だよ。僊河姉妹との取り引きをー、有利にするため、探偵しに行ったんだから、夜も眠っちゃ意味ないしー。キャンドルを幾らつくっても、イライラするだけで、全然眠れないから行ったんだものー」

「……それで、探偵の成果はあったんですか?」

「そもそもー、どーして、ここにシベルネティゼがあると思う?」

「え~っ、そんなことを? 僊河青蓮がムッシューの作品を気に入ったからですよ、聞いてくれれば教えたのに。ここに、シベルネティゼを置くことと引き換え条件みたいにして、セイレネスブランドが正式に、日本へ入ってくることにもなったんですって」

「それはボクも知ってるー。でもー果たして僊河青蓮が、ムッシュさんの作品を、気に入ることなんかできるのかなー?」

「……って、どう言うことです?」

「僊河青蓮は、もー死んでるってこと。あの姉妹が殺したってゆーか、死なせちゃったかも。セイレネスを中核で支えているのも、あの二人だねーきっと。それがミラノ嬢の、楯クンにも話せなーい秘密」

 一体、何を言い出すのやら葉植さん……「そんな、まさかぁ」
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登場人物紹介

登場人物につきましてはイントロ的に一覧で掲載しておりますぅ


当作は主人公:楯の一人称書きをしておりますので、本編内で紹介されるプロフィール情報のムラは、楯との関係性によるところが大きくなりまっす


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