249 ______ ‐2nd part‐

文字数 1,283文字

「ボクは、自分の存在を完全に消すために、勝庫織莉奈が残した靴跡から、彼女と同じスニーカーを探し出して購入し、そっくりな特徴が残るよう手まで加えて履いて行った。さらには殺したあとも、一日の間に、彼女の靴底に余計なキズが付いてないかまで確認たんだから」

「…………」

「殺害場所は、始めから、足跡が残らないロケーションと言うことで選んでいたんだけど、アスファルトから離れなければならない数メートル程度の範囲は、あらかじめツルンとした石を幾つか埋めておいて、二人を殺したあとの偽装工作には、その上を移動したりもした」

「…………」

「何より、彼女の家の屋根に付着する足跡だけはヘタに消せないもんね。最近のコは成長が良いとは言われ続けているけど、ボクより五サイズも大きいんだからイヤになるよ。反面、それも相手が中学生ならではの、カムフラージュと言える」

「カム……どして?」

「子供は、毎日履くクツを替えたりしないし。特にクツの機能が、アビリティーに直結する競技クラブに入っていたコは、普段履きから、大事なステイタスにしている傾向があるしね。それは、楯クンがボクに教えてくれたことでしょう?」

「オレが? そんなこと、教えたりしてない、そんな──」

「直接にはね。だけど一緒にいればありありとわかる、いろいろと。この三千大千世界の中心に、たとえ神仏がお座しましたとしてもだ、畢竟、今の楯クンみたいに、運や偶然とゆう形で人間を動かして干渉するしかないらしい」

「…………」

「天罰が下されるのも、人間の手によってとゆうことさ。天災を、きっちりボク一人にだけ与えるなんてムリでしょう? 晴天の霹靂もまずは雷鳴からだし、逃げ込める人家が一軒もない山奥には、ボクは用事がないので独りでゆくことはないし」

「…………」

「だから、人さえ理解すれば、何をしたってこの世界は怖くない。人を学ぶためには、人と一緒にいなくちゃダメなんだ。だから楯クンたちは、今のボクを形成するための、重要な先生だったかもしれないね」

「やめてよ、オレや、みんなにまで罪を着せるようなことっ……」

「ン~、だって、あの広場に集まっていたみんなは、それぞれ自分のやりたいよう、好き勝手に生きてるじゃない? ボクも、トドのつまりはボクのまんまでいいんだと教えてもらった、物凄く救われたんだ」

「オレたちは、少なくとも犯罪はしてないよ……人殺しなんか」

「まぁ殺人はね。だけど同じく法律に違反していないかとなると、怪しいもんだよね。飲食物を屋外で売るには、それなりの基準をクリアした設備や認可が要るし、珂児也クンの売れ筋商品の多くが、肖像権の侵害に抵触しちゃう」

「…………」

「楯クンだって、本来ハンダは金属の接合剤だよ。そんなモノを肌に近い場所に飾ったら、アレルギーを引き起こしかねない。それに、宴会のたび楯クンの泥酔を容認するオトナたちは、明らかな未成年者飲酒禁止法違反だ」

「…………」

 確かに、法律には触れてしまうんだろうけれど、確かに、殺人と同じく犯罪ってことにはなるんだろう、でも同じでなんか絶対ない。罪の重さと罰の厳しさが違うんだから。 
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登場人物紹介

登場人物につきましてはイントロ的に一覧で掲載しておりますぅ


当作は主人公:楯の一人称書きをしておりますので、本編内で紹介されるプロフィール情報のムラは、楯との関係性によるところが大きくなりまっす


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