218 囲んだらボコらないとだろ ‐1st part‐
文字数 1,207文字
──スペシャルのオーダーは、実にすんな~り。何の滞りもなく済ますことができてしまったものの、残念無念っ。代金はオレが出すことが確定だぁ。
畏れ多すぎる現在の預金額ゆえに、引き出し難いとは言え、こんな、当然みたいな調子でタカられ続けたら、スグに泡と消えちまいそうなこの恐怖感。
根性をふり絞って、さっさと、セイネレスのオトナ買いに踏みきっておかなくっちゃだっ!
「あ、注文しちゃったけれどトリノさん、お寿司って、フツウに大丈夫?」
「大丈夫。出前なんて初めてなので、興味があるわ」
「よかったぁ。おハルさんも、いくら特上スペシャルとは言え、天草灘で揚がるネタとじゃ、比べ物にならないかもしれないって、今気づいちゃいましたけれど。何なら、アンティグア・バーブーダ料理でも頼みましょっか?」
「さっきの傾奇なワザと言い、やっぱ猪口才なガキだわね。まぁいいワ、その辺のこともじっくり聞かせてやるわよ。お寿司は大好物だし、東京のド真ん中のネタがどれほどの物か、私も興味あるワ」
「そいつはよかった」
「なんかアンタ、ウリウリ可愛がってやりたくなるキャラなんだワ。こんがらがるから、アンタが楯ね。私のことは、言い易いようだから、おハルのままでいいワ」
「ん~それはどうも。光栄ですとか言ったら、ウリウリされそうなんでやめときますね。けれど苗字と名前がアベコベだなんて、ホント奇遇ですよねぇ」
そんなやり取りを交わしている間に、LDへ降りて来た有勅水さんがガラス戸を開けた。
早速おハルの体を気づかいだしている。まぁ新聞紙での連打よりも、錐揉み回転しながら吹っ飛ぶ方が派手だからねぇ。
さらに有勅水さんから促され、おハルとトリノさんは庭を廻って玄関へと引き返して行く。そしてオレには一言もなく、ガラス戸までが閉められる。
まぁ、その際に有勅水さん、チラと、微笑みが湛えられた目を向けてはくれたんだけれど、それに喜んじまったら逆にヤバいし、今のオレは──。
……おそらくは、おハルとトリノさん、オレが玄関前でモタモタやっている間に、出撃のスタンバイを終えていたに違いない。
ウチには勝手口がないから、オレが玄関前を離れたとともに、玄関を出て、反対側から庭へと廻り込み、息をコロして、奇襲のタイミングを待ちかまえていやがったわけだ。
きっと全ては、オレが、鍵をもち忘れていたことで仕組まれたに違いない。
センパイのぬけ目のなさならば、和室をざっと見渡しただけで、溘然 と作戦の段取りが思いつけたことだろう。
クッソ~、人間の出来の違いは、ガチで意識力の差だってかぁ?
いや、チョット待てよ……もしかしてミラノ、またやりやがったのか?
この時季、あのニットに合うのは、色落ちが多い方のジーンズだと言って、オレに穿き替えさせたのはミラノだった。
慌しかった出がけにもかかわらず、ワザワザ。
……未来はわからないとか言ったクセに、ホンット嫌んなる!
畏れ多すぎる現在の預金額ゆえに、引き出し難いとは言え、こんな、当然みたいな調子でタカられ続けたら、スグに泡と消えちまいそうなこの恐怖感。
根性をふり絞って、さっさと、セイネレスのオトナ買いに踏みきっておかなくっちゃだっ!
「あ、注文しちゃったけれどトリノさん、お寿司って、フツウに大丈夫?」
「大丈夫。出前なんて初めてなので、興味があるわ」
「よかったぁ。おハルさんも、いくら特上スペシャルとは言え、天草灘で揚がるネタとじゃ、比べ物にならないかもしれないって、今気づいちゃいましたけれど。何なら、アンティグア・バーブーダ料理でも頼みましょっか?」
「さっきの傾奇なワザと言い、やっぱ猪口才なガキだわね。まぁいいワ、その辺のこともじっくり聞かせてやるわよ。お寿司は大好物だし、東京のド真ん中のネタがどれほどの物か、私も興味あるワ」
「そいつはよかった」
「なんかアンタ、ウリウリ可愛がってやりたくなるキャラなんだワ。こんがらがるから、アンタが楯ね。私のことは、言い易いようだから、おハルのままでいいワ」
「ん~それはどうも。光栄ですとか言ったら、ウリウリされそうなんでやめときますね。けれど苗字と名前がアベコベだなんて、ホント奇遇ですよねぇ」
そんなやり取りを交わしている間に、LDへ降りて来た有勅水さんがガラス戸を開けた。
早速おハルの体を気づかいだしている。まぁ新聞紙での連打よりも、錐揉み回転しながら吹っ飛ぶ方が派手だからねぇ。
さらに有勅水さんから促され、おハルとトリノさんは庭を廻って玄関へと引き返して行く。そしてオレには一言もなく、ガラス戸までが閉められる。
まぁ、その際に有勅水さん、チラと、微笑みが湛えられた目を向けてはくれたんだけれど、それに喜んじまったら逆にヤバいし、今のオレは──。
……おそらくは、おハルとトリノさん、オレが玄関前でモタモタやっている間に、出撃のスタンバイを終えていたに違いない。
ウチには勝手口がないから、オレが玄関前を離れたとともに、玄関を出て、反対側から庭へと廻り込み、息をコロして、奇襲のタイミングを待ちかまえていやがったわけだ。
きっと全ては、オレが、鍵をもち忘れていたことで仕組まれたに違いない。
センパイのぬけ目のなさならば、和室をざっと見渡しただけで、
クッソ~、人間の出来の違いは、ガチで意識力の差だってかぁ?
いや、チョット待てよ……もしかしてミラノ、またやりやがったのか?
この時季、あのニットに合うのは、色落ちが多い方のジーンズだと言って、オレに穿き替えさせたのはミラノだった。
慌しかった出がけにもかかわらず、ワザワザ。
……未来はわからないとか言ったクセに、ホンット嫌んなる!