202 ____________ ‐3rd part‐

文字数 1,564文字

 まったくもう、オレの方が気をつかっちゃう。

「……そこまでして、ってことなんでしょうけれど」

「その辺はもう、医師の技術と費用次第で、どうにでもなるんだろうから。そして私は、産まれたばかりのミラノに、急かされるみたいな早産だったらしいので」

 ……やっぱり。ただならぬ出生であるとは思っていたけれど。

「でもさ、トリノさんたちってよく似てるよね? 印象は全然違うけれど、体格とか顔のこまかい造作一つ一つが」

「それは、遺伝子のせいだけでなく、受精卵をつくる工程で、人為的な操作も多分に加わっているはずなので仕方がない。もしかすると、クローン培養されたのかもしれないし」

「二人は……デザインチルドレンってこと?」

「デザインしきれていないけどね、その

なのかも。でも幸いミラノがもっているチカラまでは似ないで済んだので、そう言う意味では、私はフツウの人間ってこと。だからテストも公平なので、安心して受けてくれてかまわないので」

「う、うん……もしかして、テストに参加することをオレに納得させるために、そんなビミョ~なことまで話してくれたの? 普段は、余計なことなんか言わないトリノさんなのに」

「ほらね、キミこそ微妙に誤解と言うか、思い違いをしてるので。今まで話したことだって、余計なことでもないと思うけれど?」

「思い違いって、オレのどの辺が?」

「必ずミラノと比べながら私を判断しようとする。姿形が似ていることに囚われすぎている。言ったでしょ? 私とミラノはそれぞれ別個であって、そっくりとか全然違うとか、そんな極端になんか存在してない」

「……それは、すみませんホントに」

「私は余計なことだって言うし、キミやミラノとはまた別の意味で、今日のテストに期待しているので。キミが認識をあらためないと、私がキミを不合格にさせるかもしれない。そうなってからゴネられても、困るってこと」

「……ミラノがトリノさんのこと、オレより強いって言ってたよね、それってどう言う意味でなの? 確か、前にもそんなこと言ってたんだけれど」

「さぁ? それはミラノに聞いて」

 トリノさんは、両手で抱えたカップから立ち上る湯気の向こうで、また片笑んだ。
 笑うと、さすがにミラノそっくり。

 ……確かに。宝婁センパイがトリノさんを選んだ理由は、単に身近だったというだけではないはず。
 トリノさんなら充分安全に立ち廻り、センパイの相棒役を、無事に務められると踏んでのことに決まっているんだ。

 トリノさんまでが、オレのテストに何を期待してるのか見当もつかないけれど、つまりは

という忠告なんだろうし。
 ただそう言っただけでは、オレが冗談だと受け取って、トリノさんへの認識など変えようもないから、プライヴェートなことにまで、オレを踏み込ませて教えてくれたのかな? 

 う~む。とりあえず、認識はあらためておくべきだな。
 ミラノさんの妹ではなく、あくまでセンパイの助っ人、オレ的には、快楽殺人女として立ち向かわせていただこう。

「わかったよ。トリノさんだからって遠慮なんかしない、実際できないしね。ただ、オレを追いつめた時には気をつけてよね」

「……フフ。それは、どう言うこと?」

「笑い事じゃなしに、先輩から教わってない、まだ見せてもいない方法で逃げるかもしれないからね。もし顔とかキズつけちゃったとしても、オレには謝ることしかできないんだから」

「了解。私も、キミがあのスパイダーシルク製のニットを手に入れていることを、しっかり念頭に置いてやらせてもらうので。ポールにも、そのことは伝えておくよ」

 ──まさかとは思うけれどトリノさん、オレを使って、あの防弾ニットに関するデータでも取る気でいたりして?
 
 白兵戦時に、実際どれくらいニット以外を攻撃できるか、とか……。
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登場人物紹介

登場人物につきましてはイントロ的に一覧で掲載しておりますぅ


当作は主人公:楯の一人称書きをしておりますので、本編内で紹介されるプロフィール情報のムラは、楯との関係性によるところが大きくなりまっす


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