266 行方不明者の生存率 ‐1st part‐
文字数 1,499文字
「僊河青蓮はかれこれー、一四年前から誰にも姿を見られていな~い。それまで親交のあった人たちとも、突然みたいに連絡を絶ってるー。まー僊河青蓮は、イタリア語は流暢でないらしーから、イタリアでの親交ってのは、さほど深いモノではないんだろーけど」
「そう、なんですか……ガチに?」
やっぱ、ラテンのノりって強烈だぁ。会話もロクに成立してないのに、国際結婚しちゃうだなんて……。
「僊河青蓮はパリやロンドンで活躍してたからー、フランス語と英語は相応にできても、結婚してミラーノへ移ったのは、四〇代も半ば過ぎだからねー。でも全然問題ない~、御亭主のヴェンデェッタ氏が、日本語ベーラベラだから」
「なぁんだ、道理で。……僊河青蓮が多忙を極めていたって、ミラノもトリノさんも日本語が達者なわけですね」
「若い頃に、日本の染織や織物の技術を学びに来てたそーだよ。それに、僊河青蓮が、意思の疎通を図り易ーくするために、日本語に興味があるスタッフを、自分の傍に集めたからー、今でも結構な人数の社員が、ある程度の日本語を理解するみたいだー」
「ぁあ。でしょうね、それも納得ですよ」
……あのジェレさんも、そんな社員の一人だったってことか。
「僊河青蓮はー、結婚したあとも、ミラーノで見かけられなくなるまでも、相当ーの気紛れ者で、世界を飛び廻ってたし。当時は事実、セイレネスブランドの立ち上げで忙しかったそーだから、今はミラーノを離れてるって、一辺倒にごまかし続けてる内に、誰もが彼女と親しかったことなんか、どーでもよくなったんだろーね」
「……そんなもんですか、世界的セレブでも?」
「でも、同じくして、御亭主もあの姉妹も、ミラーノを離れてるんだよ。それもバラバラー」
「バラバラ? ですか……」
「御亭主のヴェンデェッタ氏は、トリノ嬢を連れてパリにー。ミラノ嬢はNY、六歳なのに一人でだよー。勿論お付の人が一緒だけど、顧問弁護士だった爺様とじゃ~、一人っきりも同然でしょー」
「ん~それで? ミラノたちのこと、ミラーノで何がわかったんですっ?」
「ま、ミラーノでは、僊河青蓮がミラーノにいないってことだけは、はっきりわかったー。けど、言われたとーりパリやらNYに電話をかけても、ロンドンにいる、ハリウッドにいる、ドバイにいる、モナコにいるーって具合に、盥 まわしにされて諦めざるを得なくなるー」
「……でも、それってフツウじゃないですか? それこそ、親交からしてないんですから」
「ボクは今ー、日本で僊河姉妹と一緒に暮らしてる者で、ミラノ嬢に頼まれて、僊河青蓮の大好物だった思い出の和菓子をお届けしたーいと、騙ってそーなんだから、フツーにかけたら、盥まわしにすらされず、無下もいートコだったろーね」
「けれど、本当に忙しく飛び廻っているのかもしれないでしょ?」
「あり得ないねー。お祖父ちゃんがボクをー、ひょこっと、海外の主要都市へゆかせることができるのはー、世界の主要な航空会社に顔が利くからなんだものー。僊河青蓮なんて有名人が搭乗すれば、内緒でスグに教えてもらえるー」
「……すみません。葉植さんも、世界的セレブの一員だったってこと、本当にたった今気づいちゃいましたっ」
「お祖父ちゃんもないよー、そんな意識は。だけど、そんな記録はどこにもなかったしー、僊河青蓮ともあろーお人が、偽造パスポートなんか使う道理がないからねー」
「……そうだ、自家用ジェットとかがあるんじゃないですか?」
「そんなの使ってたら、調べてもらうまでもないー。お忍びなほど、ミーハーな空港関係者の話題になるし、会社名義でも、現在は自家用ジェットの登録はないのー」
「そうなんですか……」
「そう、なんですか……ガチに?」
やっぱ、ラテンのノりって強烈だぁ。会話もロクに成立してないのに、国際結婚しちゃうだなんて……。
「僊河青蓮はパリやロンドンで活躍してたからー、フランス語と英語は相応にできても、結婚してミラーノへ移ったのは、四〇代も半ば過ぎだからねー。でも全然問題ない~、御亭主のヴェンデェッタ氏が、日本語ベーラベラだから」
「なぁんだ、道理で。……僊河青蓮が多忙を極めていたって、ミラノもトリノさんも日本語が達者なわけですね」
「若い頃に、日本の染織や織物の技術を学びに来てたそーだよ。それに、僊河青蓮が、意思の疎通を図り易ーくするために、日本語に興味があるスタッフを、自分の傍に集めたからー、今でも結構な人数の社員が、ある程度の日本語を理解するみたいだー」
「ぁあ。でしょうね、それも納得ですよ」
……あのジェレさんも、そんな社員の一人だったってことか。
「僊河青蓮はー、結婚したあとも、ミラーノで見かけられなくなるまでも、相当ーの気紛れ者で、世界を飛び廻ってたし。当時は事実、セイレネスブランドの立ち上げで忙しかったそーだから、今はミラーノを離れてるって、一辺倒にごまかし続けてる内に、誰もが彼女と親しかったことなんか、どーでもよくなったんだろーね」
「……そんなもんですか、世界的セレブでも?」
「でも、同じくして、御亭主もあの姉妹も、ミラーノを離れてるんだよ。それもバラバラー」
「バラバラ? ですか……」
「御亭主のヴェンデェッタ氏は、トリノ嬢を連れてパリにー。ミラノ嬢はNY、六歳なのに一人でだよー。勿論お付の人が一緒だけど、顧問弁護士だった爺様とじゃ~、一人っきりも同然でしょー」
「ん~それで? ミラノたちのこと、ミラーノで何がわかったんですっ?」
「ま、ミラーノでは、僊河青蓮がミラーノにいないってことだけは、はっきりわかったー。けど、言われたとーりパリやらNYに電話をかけても、ロンドンにいる、ハリウッドにいる、ドバイにいる、モナコにいるーって具合に、
「……でも、それってフツウじゃないですか? それこそ、親交からしてないんですから」
「ボクは今ー、日本で僊河姉妹と一緒に暮らしてる者で、ミラノ嬢に頼まれて、僊河青蓮の大好物だった思い出の和菓子をお届けしたーいと、騙ってそーなんだから、フツーにかけたら、盥まわしにすらされず、無下もいートコだったろーね」
「けれど、本当に忙しく飛び廻っているのかもしれないでしょ?」
「あり得ないねー。お祖父ちゃんがボクをー、ひょこっと、海外の主要都市へゆかせることができるのはー、世界の主要な航空会社に顔が利くからなんだものー。僊河青蓮なんて有名人が搭乗すれば、内緒でスグに教えてもらえるー」
「……すみません。葉植さんも、世界的セレブの一員だったってこと、本当にたった今気づいちゃいましたっ」
「お祖父ちゃんもないよー、そんな意識は。だけど、そんな記録はどこにもなかったしー、僊河青蓮ともあろーお人が、偽造パスポートなんか使う道理がないからねー」
「……そうだ、自家用ジェットとかがあるんじゃないですか?」
「そんなの使ってたら、調べてもらうまでもないー。お忍びなほど、ミーハーな空港関係者の話題になるし、会社名義でも、現在は自家用ジェットの登録はないのー」
「そうなんですか……」