188 殺人整理士の業務は暗中飛躍が鉄則ですので ‐1st part‐
文字数 1,354文字
オレにだって関係ないっ。
在栖川で過ごした歳月が築きあげたオレの世界観で、絶対的アッパーエンドな存在として君臨するおまえら五人に、ヴィーなんかがつけ入る寸隙もなく、特待生の座を占め尽くして欲しかったんだ。
そもそも、そのために、ワザワザおまえらと関わったはずなのに……こんな様なら、おまえらのチカラを借りようだなんてことは考えなかった。
ミラノさんたちを、ウチに招くなんてこともなく、緑内も、あの日、あんな所で、殺されなかったし、根上も死なずに済んだかもしれなかったんだ……。
オレは、オレは、オレは一体何をしちまってたんだぁっ!
≪水埜楯ダメダメッ!≫
……ミラノさん? が叫んだような、気がした。
辺りを見まわしてみるものの、ミラノさんの影も形も、見える範囲にはどこにもない。
はっきり聞こえたオレの名前以外にも、今し方の話の間中、すっかり失念してしまっていたことが響いていたってのに……。
ヤケに立体感まである空耳だったけれど、そんなオレへ、ちょうどヴェスティビュールへ入ろうとしていた草豪が、目を向けてきやがるから矢庭に非常にバツ悪くなる。
──しかし『危険な女神』が鳴りだして、本日早くも、二度目になる世界の終わりから救出された。
「はい、もしもし!」
「プルォント(もしもし)、当たりぃ、私だよ水埜楯」
「どしたの? ミラノさんじきじきに、って言うか、今そっちでオレのことを、思いっきり呼んだりなんかした?」
「呼んだよ呼んだよ。通じちゃってビックラこんだよ」
「そうなんだ? ふへぇ~、そんなこともできちゃうんだ?」
「たぶん、それは水埜楯のチカラなんだよ。でも私の用は、そのあとのことこと」
「……あとのことって、オレの頭の中で響いた、思い出したこと?」
「それは私が言ったんじゃないない。私が呼んだ反動で飛び出てきた、水埜楯が忘れてたことのエコーみたいなモノだから、それを自棄になって、眞弓たちにまで教えたりなんかしちゃダメダメ。今までの話の間中、ずっと黙ってた意味がないじゃん」
「……うん。とにかく、ミラノさんを信じてなかったわけじゃ全然ないんだよ、つい草豪の口車のトランクに、まんまと押し込められたって言うかさぁ」
「あははぁ。理知華の、油断も隙もない監視まであったもんね~」
「一体どこまでお見通しっ? ……でもさ、言っておかないとマズいでしょ? もし先に犯人が捕まりでもしたら、あいつらの思惑が全部オジャンになって、根上の葬式ができなくなっちゃうよ」
目をやると、草豪はまだ中へ入らずにこっちを見て──と言うより、訝しげに睨んでいやがった。
何なんだろ、この変な勘の良さ?
オレのこの声が届く距離ではないにせよ、スマホで話し難いことこの上ない。
「私を信じてくれてるのは嬉しいけど、犯人が全然別の男だってこと、絶対ヘマしないで話せるの水埜楯? 失敗って、今度は眞弓たちが、犯人に狙われちゃったらどうするどうする? 死んだ同級生のお葬式をするのと、同級生がまた殺されるのどっちがいいの?」
「…………」
そんなことまでは考えていなかった、全然。
オレはただ、さっき聞かされた草豪たちが計画のコアにするであろう方便話を、吟味しなおす必要性をカンジさせることができるんじゃないか? などと、チラリ思っただけ。
在栖川で過ごした歳月が築きあげたオレの世界観で、絶対的アッパーエンドな存在として君臨するおまえら五人に、ヴィーなんかがつけ入る寸隙もなく、特待生の座を占め尽くして欲しかったんだ。
そもそも、そのために、ワザワザおまえらと関わったはずなのに……こんな様なら、おまえらのチカラを借りようだなんてことは考えなかった。
ミラノさんたちを、ウチに招くなんてこともなく、緑内も、あの日、あんな所で、殺されなかったし、根上も死なずに済んだかもしれなかったんだ……。
オレは、オレは、オレは一体何をしちまってたんだぁっ!
≪水埜楯ダメダメッ!≫
……ミラノさん? が叫んだような、気がした。
辺りを見まわしてみるものの、ミラノさんの影も形も、見える範囲にはどこにもない。
はっきり聞こえたオレの名前以外にも、今し方の話の間中、すっかり失念してしまっていたことが響いていたってのに……。
ヤケに立体感まである空耳だったけれど、そんなオレへ、ちょうどヴェスティビュールへ入ろうとしていた草豪が、目を向けてきやがるから矢庭に非常にバツ悪くなる。
──しかし『危険な女神』が鳴りだして、本日早くも、二度目になる世界の終わりから救出された。
「はい、もしもし!」
「プルォント(もしもし)、当たりぃ、私だよ水埜楯」
「どしたの? ミラノさんじきじきに、って言うか、今そっちでオレのことを、思いっきり呼んだりなんかした?」
「呼んだよ呼んだよ。通じちゃってビックラこんだよ」
「そうなんだ? ふへぇ~、そんなこともできちゃうんだ?」
「たぶん、それは水埜楯のチカラなんだよ。でも私の用は、そのあとのことこと」
「……あとのことって、オレの頭の中で響いた、思い出したこと?」
「それは私が言ったんじゃないない。私が呼んだ反動で飛び出てきた、水埜楯が忘れてたことのエコーみたいなモノだから、それを自棄になって、眞弓たちにまで教えたりなんかしちゃダメダメ。今までの話の間中、ずっと黙ってた意味がないじゃん」
「……うん。とにかく、ミラノさんを信じてなかったわけじゃ全然ないんだよ、つい草豪の口車のトランクに、まんまと押し込められたって言うかさぁ」
「あははぁ。理知華の、油断も隙もない監視まであったもんね~」
「一体どこまでお見通しっ? ……でもさ、言っておかないとマズいでしょ? もし先に犯人が捕まりでもしたら、あいつらの思惑が全部オジャンになって、根上の葬式ができなくなっちゃうよ」
目をやると、草豪はまだ中へ入らずにこっちを見て──と言うより、訝しげに睨んでいやがった。
何なんだろ、この変な勘の良さ?
オレのこの声が届く距離ではないにせよ、スマホで話し難いことこの上ない。
「私を信じてくれてるのは嬉しいけど、犯人が全然別の男だってこと、絶対ヘマしないで話せるの水埜楯? 失敗って、今度は眞弓たちが、犯人に狙われちゃったらどうするどうする? 死んだ同級生のお葬式をするのと、同級生がまた殺されるのどっちがいいの?」
「…………」
そんなことまでは考えていなかった、全然。
オレはただ、さっき聞かされた草豪たちが計画のコアにするであろう方便話を、吟味しなおす必要性をカンジさせることができるんじゃないか? などと、チラリ思っただけ。