292 _____________ ‐3rd part‐
文字数 1,336文字
トリノさんと言い、ミラノまでそんな、どうしてフツウ知らないことなんかを知っているのやらだけれど……でも、なるほどと納得するだけ、脱力感を覚えてしまうよねぇ。
「……ん。……」
「いいのいいの、これは楯がまだまだ壊れてないって証拠なんだから。チョットの間だけ体がいつもの仕事を放り出して、ココロを守ることに全力をあげてガンバってるんだよ」
オレの耳までおしぼりで拭いきると、ミラノはオレの頭を軽易に持ち上げ「オップラ~」と膝枕に置いた。そのかけ声は、オレの頭の下へ、自分の脚を滑り込ませるためのモノだったみたい。
「…………」
そしてドリンクを飲ませてくれたが、オレは丸っきり哺乳瓶で授乳されている赤ん坊……ダメダメもいいトコ、退行現象はとうとう底方 にまで達しちまった──。
「そんなの、ダメダメでいいんだってば。だって、体が強くてやさしい人は大勢いるけど、心の強い人にやさしい人なんかいないんだから。体も心も弱くたって、ワタシはワタシに一番やさしい楯が、一番いいに決まってるんだよ」
「……ぅあ、ん……」
「今は、楯の心を守る体の警備隊長も悪戦苦闘中なの。その場凌ぎやデタラメな報告まで逐一楯に報告してくるから、楯も処理しきれずに気持悪くなっちゃうんだよ。だから楯は相手にしないで、のんびり愉しいことだけ考えてればいいのいいの」
──ボトル一本五〇〇ミリリットルを飲み干すと、また、どうにも抗い難い、強烈な眠気が襲ってきた。
気分は未だ最悪の域を脱するまでに至ってはいないけれど、オレの後頭部が受けている温とさと感触だけは別天地。
声も、思いっきり嗄れてはいたけれど何とか出せるようになったので、ゴメンではなく「ありがと」を言って、重い瞼に逆らうのをやめた。
「うんうん。おハルにも、楯は菩薩のバチに当ったんだって説明したら、けんちん汁と太巻き寿司をつくって行ってくれたんだよ。ショージン料理の定番メニューなんだって。だから、芭場里衣が帰って来るまでに、お腹が減っても大丈夫~」
「…………」
「うんうん。おハルには、お礼に葉植木春菊のキャンドルをあげといたし、『シレーヌ』も唏が観せに行ってくれたからね。何も心配しないで、グッスラこんと眠る眠るぅ」
──そっか。まあ、おハルにはGWに会えるわけだし……ホントに免許、一発でとらせてくれたら、サイコ~なんだけれどなぁ……。
オレはジェレさんの愛車、イカしているに違いない、ステアリングフィールと乗り心地を妄想している内に、ぐんぐん甘眠へとロケットダイヴ──。
しかしながら……ここは既に夢の中なんじゃないの? と感づいた時には、インパネ内に納まった六連メータの配置があやふやだったジェレさんの愛車から、いつしかリアリティー溢れる、レストア寸前のオープン軽へと変わってしまっていた。
それでも、袖触り合うようなスグ隣でシートに座るミラノは、ふわふわと靡く髪を片手で押えながらも、拈華微笑とニコやかな横顔だった。
──さすれば。一旦目覚めて再び夢を見なおすのも面倒クサすぎる。
オンボロもオレに相応しく、ミラノにも御愛嬌だろう。
このままオープン軽のアクセルを、六本木通りから銀座‐有楽町方面へと、踏ませていただくことにしちゃいましょうかぁ!
「……ん。……」
「いいのいいの、これは楯がまだまだ壊れてないって証拠なんだから。チョットの間だけ体がいつもの仕事を放り出して、ココロを守ることに全力をあげてガンバってるんだよ」
オレの耳までおしぼりで拭いきると、ミラノはオレの頭を軽易に持ち上げ「オップラ~」と膝枕に置いた。そのかけ声は、オレの頭の下へ、自分の脚を滑り込ませるためのモノだったみたい。
「…………」
そしてドリンクを飲ませてくれたが、オレは丸っきり哺乳瓶で授乳されている赤ん坊……ダメダメもいいトコ、退行現象はとうとう
「そんなの、ダメダメでいいんだってば。だって、体が強くてやさしい人は大勢いるけど、心の強い人にやさしい人なんかいないんだから。体も心も弱くたって、ワタシはワタシに一番やさしい楯が、一番いいに決まってるんだよ」
「……ぅあ、ん……」
「今は、楯の心を守る体の警備隊長も悪戦苦闘中なの。その場凌ぎやデタラメな報告まで逐一楯に報告してくるから、楯も処理しきれずに気持悪くなっちゃうんだよ。だから楯は相手にしないで、のんびり愉しいことだけ考えてればいいのいいの」
──ボトル一本五〇〇ミリリットルを飲み干すと、また、どうにも抗い難い、強烈な眠気が襲ってきた。
気分は未だ最悪の域を脱するまでに至ってはいないけれど、オレの後頭部が受けている温とさと感触だけは別天地。
声も、思いっきり嗄れてはいたけれど何とか出せるようになったので、ゴメンではなく「ありがと」を言って、重い瞼に逆らうのをやめた。
「うんうん。おハルにも、楯は菩薩のバチに当ったんだって説明したら、けんちん汁と太巻き寿司をつくって行ってくれたんだよ。ショージン料理の定番メニューなんだって。だから、芭場里衣が帰って来るまでに、お腹が減っても大丈夫~」
「…………」
「うんうん。おハルには、お礼に葉植木春菊のキャンドルをあげといたし、『シレーヌ』も唏が観せに行ってくれたからね。何も心配しないで、グッスラこんと眠る眠るぅ」
──そっか。まあ、おハルにはGWに会えるわけだし……ホントに免許、一発でとらせてくれたら、サイコ~なんだけれどなぁ……。
オレはジェレさんの愛車、イカしているに違いない、ステアリングフィールと乗り心地を妄想している内に、ぐんぐん甘眠へとロケットダイヴ──。
しかしながら……ここは既に夢の中なんじゃないの? と感づいた時には、インパネ内に納まった六連メータの配置があやふやだったジェレさんの愛車から、いつしかリアリティー溢れる、レストア寸前のオープン軽へと変わってしまっていた。
それでも、袖触り合うようなスグ隣でシートに座るミラノは、ふわふわと靡く髪を片手で押えながらも、拈華微笑とニコやかな横顔だった。
──さすれば。一旦目覚めて再び夢を見なおすのも面倒クサすぎる。
オンボロもオレに相応しく、ミラノにも御愛嬌だろう。
このままオープン軽のアクセルを、六本木通りから銀座‐有楽町方面へと、踏ませていただくことにしちゃいましょうかぁ!