203 積み木を崩させるのは誰なんだよっ ‐1st part‐
文字数 1,677文字
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「ねえ、ミラノとは違うのに、トリノさんが、オレより強いって言う理由を教えてくれない? 護身術でも本格的にやってるとか」
家を出て、少ししてから、それとなくミラノに聞いてみる。
「ウンウン。ヴィーが、楯にプレゼントしてくれたウチのニット、楯が思ってるよりも似合ってるてる」
「え、そう? でもなんかやっぱ派手じゃない? ほかに、セイレネスのショップマネージャーさんのウチなんかへ、着て行けるモノがなかったとは言え、暖色ばかり使ったヤツなんて」
「楯は小さい頃、お母さんに、明るくて可愛い色ばかり着せられてたんだよ。それで、もっと女の子に間違われるようになったから、そう言う色合がイヤイヤになっただけなのなの」
「そうだったかなぁ、ってもう違うでしょ? どうしてトリノさんが、オレより強いのかって話じゃん、はぐらかないでよね」
「はぐらかしてないない。ホントの犯人が、どれくらい強いのか教えてないのに、トリノの強さを教えちゃダメじゃん」
「……まぁ、確かに」
「ワタシは、ポールのテストが簡単じゃないって教えただけだけ。なのに楯は、テストにどんな問題が出るのかまで教えてって言ってるぅ。ダメダメ、そんなの教えないない」
「それも、御尤もなんだけれどさぁ……」
「ワタシは楯の味方だけど、合格して欲しくなんか全然ないない。だから絶対、トリノの強さは教えないんだよ。一生懸命応援するからね、ガンバってトリノに負けちゃえ負けちゃえ」
「…………」
まいったなぁ、旗幟鮮明なまでに理屈じゃん。
しかし、またもや、そんなことを言ってくれちゃうわけですか。
ミラノのそうした相反する気持を、アウフヘーベン(アゲて統一)させるためにも、オレはテストに合格して、犯人逮捕へとつなげなくちゃいけないってのに……。
「楯は楯のためにガンバるガンバる。ワタシもワタシのために、楯がダメダメで全然いいのいいの」
「……何なのそれ?」
「楯はね、犯人のことを全部教えるにはダメダメなだけで、楯が思ってるほど、ダメダメじゃないんだよ。やっぱり意識の問題問題、ワタシには、どうして楯が犯人を捕まえないとダメダメなのか、全然サッパリこんなんだよ」
「だって、ダメダメでしょう? 同級生を二人も殺した真犯人の見当がついてるのに、何もしないなんて、男として人としてさぁ」
「全然思わないんだよ。ワタシなんか、いろいろわかってるのに何もしたくないもん。わかってるだけじゃ、何もできないこともわかってるし。だからって、楯みたく、ガンバろうなんてことも思わないない」
「それはわかるよ。イチイチ他人の事件に首を突っ込んでたら、命が幾つあっても足りなくなるし、知ってて黙っているツラさみたいなのも、なんとなくだけれど実感してるつもりだし」
「楯にだって、ホントは関係ないんだよ。殺された二人は、偶偶、同じ大学まであがっただけでしかないない、仲好しでも全然なかったもん」
「お見通しも、そこまでだったとは……」
「楯はね、悲しくないことに悲しんでたんだよ、仲好しなんか、一人もいなかったことに気づいちゃって。だから楯は、バスケを通じて、ガッコの外で遊び仲間に入ってはポイ、入ってはポイを繰り返したんだよ」
「ん~……」
まぁ正確には、オレから仲間をポイしたのではなく、ポイされたからそのまんま、って補足する以外は、否定しようもない事実なんだけれど。
「楯には、よくわかってるはずだよ。楯がワタシを好きになってくれてるのは、楯のダメダメとワタシのダメダメが、つり合ってるからだって」
「そんなこと思ってないよ、つり合うとか全然っ……」
「でも、ワタシのダメダメは、ガンバってもなおらない。楯だけダメダメじゃなくなったら、バランスが崩れて、どんどんワタシを許せなくなって、どんどん好きじゃなくなっていくんだよ。こうして、手をつないでもくれなくなるなる。私はよくよ~く知ってるんだもん」
「あのねぇ……」
そんなこと、まだまだ全っ然っ。
バランスなんか、つり合う道理もないんだから、せめて自分の意識の中だけでも、ダメな自分から脱皮したいってのに……。
「ねえ、ミラノとは違うのに、トリノさんが、オレより強いって言う理由を教えてくれない? 護身術でも本格的にやってるとか」
家を出て、少ししてから、それとなくミラノに聞いてみる。
「ウンウン。ヴィーが、楯にプレゼントしてくれたウチのニット、楯が思ってるよりも似合ってるてる」
「え、そう? でもなんかやっぱ派手じゃない? ほかに、セイレネスのショップマネージャーさんのウチなんかへ、着て行けるモノがなかったとは言え、暖色ばかり使ったヤツなんて」
「楯は小さい頃、お母さんに、明るくて可愛い色ばかり着せられてたんだよ。それで、もっと女の子に間違われるようになったから、そう言う色合がイヤイヤになっただけなのなの」
「そうだったかなぁ、ってもう違うでしょ? どうしてトリノさんが、オレより強いのかって話じゃん、はぐらかないでよね」
「はぐらかしてないない。ホントの犯人が、どれくらい強いのか教えてないのに、トリノの強さを教えちゃダメじゃん」
「……まぁ、確かに」
「ワタシは、ポールのテストが簡単じゃないって教えただけだけ。なのに楯は、テストにどんな問題が出るのかまで教えてって言ってるぅ。ダメダメ、そんなの教えないない」
「それも、御尤もなんだけれどさぁ……」
「ワタシは楯の味方だけど、合格して欲しくなんか全然ないない。だから絶対、トリノの強さは教えないんだよ。一生懸命応援するからね、ガンバってトリノに負けちゃえ負けちゃえ」
「…………」
まいったなぁ、旗幟鮮明なまでに理屈じゃん。
しかし、またもや、そんなことを言ってくれちゃうわけですか。
ミラノのそうした相反する気持を、アウフヘーベン(アゲて統一)させるためにも、オレはテストに合格して、犯人逮捕へとつなげなくちゃいけないってのに……。
「楯は楯のためにガンバるガンバる。ワタシもワタシのために、楯がダメダメで全然いいのいいの」
「……何なのそれ?」
「楯はね、犯人のことを全部教えるにはダメダメなだけで、楯が思ってるほど、ダメダメじゃないんだよ。やっぱり意識の問題問題、ワタシには、どうして楯が犯人を捕まえないとダメダメなのか、全然サッパリこんなんだよ」
「だって、ダメダメでしょう? 同級生を二人も殺した真犯人の見当がついてるのに、何もしないなんて、男として人としてさぁ」
「全然思わないんだよ。ワタシなんか、いろいろわかってるのに何もしたくないもん。わかってるだけじゃ、何もできないこともわかってるし。だからって、楯みたく、ガンバろうなんてことも思わないない」
「それはわかるよ。イチイチ他人の事件に首を突っ込んでたら、命が幾つあっても足りなくなるし、知ってて黙っているツラさみたいなのも、なんとなくだけれど実感してるつもりだし」
「楯にだって、ホントは関係ないんだよ。殺された二人は、偶偶、同じ大学まであがっただけでしかないない、仲好しでも全然なかったもん」
「お見通しも、そこまでだったとは……」
「楯はね、悲しくないことに悲しんでたんだよ、仲好しなんか、一人もいなかったことに気づいちゃって。だから楯は、バスケを通じて、ガッコの外で遊び仲間に入ってはポイ、入ってはポイを繰り返したんだよ」
「ん~……」
まぁ正確には、オレから仲間をポイしたのではなく、ポイされたからそのまんま、って補足する以外は、否定しようもない事実なんだけれど。
「楯には、よくわかってるはずだよ。楯がワタシを好きになってくれてるのは、楯のダメダメとワタシのダメダメが、つり合ってるからだって」
「そんなこと思ってないよ、つり合うとか全然っ……」
「でも、ワタシのダメダメは、ガンバってもなおらない。楯だけダメダメじゃなくなったら、バランスが崩れて、どんどんワタシを許せなくなって、どんどん好きじゃなくなっていくんだよ。こうして、手をつないでもくれなくなるなる。私はよくよ~く知ってるんだもん」
「あのねぇ……」
そんなこと、まだまだ全っ然っ。
バランスなんか、つり合う道理もないんだから、せめて自分の意識の中だけでも、ダメな自分から脱皮したいってのに……。