086 _______________ ‐2nd part‐
文字数 1,724文字
かけたスマホに有勅水さん、差し当たっては焦らすことなく出てくれる。
「ぁ水埜ですっ。今会うことができました、って言うか見つけていただきました。でもどうしてオレの名前を御存知なんですか? スケッチブックに書いたあの意味は何だったんです?」
「そお、よかったわ。とり敢えず彼女に代わってくれる?」
「……わかりました」
ったく。ともあれオレは、オレの右隣で腕を組み、休めの姿勢で立っているタママヨさんへスマホを差し出すしかない。
「有勅水さんがお話したいそうです」
タママヨさんは「どうも」と受けとると、突としてイタリア語らしき言葉を話しだした。
ってことは、相手である有勅水さんも、イタリア語で返答していることになるだろうから、やっぱ女神はユニヴァーサル、腐ってもV&M。
オレはつくづく、大変な人の旋毛を曲げさせちまったもんだ。
しかしこのタママヨさん、マジで手ぶらで来ちゃったのか?
まぁ、それなりのホテルに宿泊すれば事欠かないし、ピアスや、コートの革質、その鞣 し具合で判断する限り、それが充分できそうな御身分ぽいし……。
それとも、はぐれたお姉さんに、全部押しつけて来ちゃっているのかな?
そのお姉さんとやら、トイレだろうか? 何かトラブってるわけじゃなければいいんだけれど……。
そんな、杞憂 でなければガチで困る心配をしていたところ、タママヨさんは通話を勝手に終えてオレにスマホを返してきた。まだ全然オレの用件が済んでないのにぃ。
「唏が、愉しみながらゆっくりおいでと言っていた。一切を君に任せればいいそうなので、よろしくお願いするわ」
「……あ、はいっ。こちらこそ、どうぞよろしくお願いしますっ」
「姉はともかく、私はこの国に来るのが全くの初めてになるので。私はトリノ・僊河・ヴェンデェッタ、そして、彼女が姉のミラノ」
!
度肝をぬかれて声を呑み込んだから助かったものの、タママヨさんが指したオレのスグ左隣には、いつの間にか人がいた──。
< ミラノ‐イメージイラスト >
魂消たけれど、タママヨさんと全てが同じくらいの女のコ……でも、オレを見つめている顔は朗らかに微笑んでいて、なんだかカワイ~。
どうにも、全体的に明るくぼんやりと目に映る、印象派の絵に描かれる少女みたいな印象だまさに、知らんけれど……。
彼女も肌の白さは茹で玉子、でも、艶と色のぬけきった金髪はクリンクリンのまま、両肩を隠すくらい鬱茂と広がっている。
唇は、形こそ妹そっくりでも、水飴でコーティングしたようにツヤツヤな桜色。
前髪が、跳ねながらも眉までを隠しているからか、はっきり二重の切れ長の目も、妹みたいなキツさはなく、むしろ愛嬌たっぷり……でも、間違いなく双子だこの二人。
しかしながら姉の方は、モコモコした白く毛皮っぽいハーフコートを羽織っていて、その中が若苗 色をしたハイネックのニットワンピース。
そして、キャメルのスエードブーツがまた妙チキリンで、足を包み込んだあと、その足首をヒモで縛っただけみたいなプリミティヴなデザイン。
服装からして対蹠的な姉妹なカンジ。細面 の輪郭に納まった栴檀 の瞳、隆鼻の形は瓜二つなものの、心証的にはまるで別人。
まぁ別人なのは当然なんだけれど。
オレは、つい下げた視線のまま、姉の方にお辞儀をしかけたけれど、それでは妹に悪かろうと思い、一歩退いてからあらためて二人に挨拶をした。
「水埜楯です。とにかく、不行き届きな点は多多あるでしょうけれど、どうぞよろしくお願いします」と、そこまで告げてオレはやっと悟了した。
ミラノは姉の名前、だからtoは不要だったんだ。
そして僊河・ヴァケラッタとか言っていた。つまり僊河青蓮の娘たちか何か、要するに僊婆の孫たちなんだろうって事事を──。
「何か?」
「あ、いえっ。あのオレ、何て言うか、あなた方のお祖母さんにですね、チョットお世話になっていた者なんです。だからきっと有勅水さんは、それで、急にオレを出迎えによこしたんだと思います」
「そう?」
……タママヨさんの声調はともかく、口調は恰も、寸鉄殺人ならぬ、寸語殺人級の素気 なさときた。
亡きお祖母さんへ、ガチの世話をかけたと思われちまったかぁ?
「ぁ水埜ですっ。今会うことができました、って言うか見つけていただきました。でもどうしてオレの名前を御存知なんですか? スケッチブックに書いたあの意味は何だったんです?」
「そお、よかったわ。とり敢えず彼女に代わってくれる?」
「……わかりました」
ったく。ともあれオレは、オレの右隣で腕を組み、休めの姿勢で立っているタママヨさんへスマホを差し出すしかない。
「有勅水さんがお話したいそうです」
タママヨさんは「どうも」と受けとると、突としてイタリア語らしき言葉を話しだした。
ってことは、相手である有勅水さんも、イタリア語で返答していることになるだろうから、やっぱ女神はユニヴァーサル、腐ってもV&M。
オレはつくづく、大変な人の旋毛を曲げさせちまったもんだ。
しかしこのタママヨさん、マジで手ぶらで来ちゃったのか?
まぁ、それなりのホテルに宿泊すれば事欠かないし、ピアスや、コートの革質、その
それとも、はぐれたお姉さんに、全部押しつけて来ちゃっているのかな?
そのお姉さんとやら、トイレだろうか? 何かトラブってるわけじゃなければいいんだけれど……。
そんな、
「唏が、愉しみながらゆっくりおいでと言っていた。一切を君に任せればいいそうなので、よろしくお願いするわ」
「……あ、はいっ。こちらこそ、どうぞよろしくお願いしますっ」
「姉はともかく、私はこの国に来るのが全くの初めてになるので。私はトリノ・僊河・ヴェンデェッタ、そして、彼女が姉のミラノ」
!
度肝をぬかれて声を呑み込んだから助かったものの、タママヨさんが指したオレのスグ左隣には、いつの間にか人がいた──。
< ミラノ‐イメージイラスト >
魂消たけれど、タママヨさんと全てが同じくらいの女のコ……でも、オレを見つめている顔は朗らかに微笑んでいて、なんだかカワイ~。
どうにも、全体的に明るくぼんやりと目に映る、印象派の絵に描かれる少女みたいな印象だまさに、知らんけれど……。
彼女も肌の白さは茹で玉子、でも、艶と色のぬけきった金髪はクリンクリンのまま、両肩を隠すくらい鬱茂と広がっている。
唇は、形こそ妹そっくりでも、水飴でコーティングしたようにツヤツヤな桜色。
前髪が、跳ねながらも眉までを隠しているからか、はっきり二重の切れ長の目も、妹みたいなキツさはなく、むしろ愛嬌たっぷり……でも、間違いなく双子だこの二人。
しかしながら姉の方は、モコモコした白く毛皮っぽいハーフコートを羽織っていて、その中が
そして、キャメルのスエードブーツがまた妙チキリンで、足を包み込んだあと、その足首をヒモで縛っただけみたいなプリミティヴなデザイン。
服装からして対蹠的な姉妹なカンジ。
まぁ別人なのは当然なんだけれど。
オレは、つい下げた視線のまま、姉の方にお辞儀をしかけたけれど、それでは妹に悪かろうと思い、一歩退いてからあらためて二人に挨拶をした。
「水埜楯です。とにかく、不行き届きな点は多多あるでしょうけれど、どうぞよろしくお願いします」と、そこまで告げてオレはやっと悟了した。
ミラノは姉の名前、だからtoは不要だったんだ。
そして僊河・ヴァケラッタとか言っていた。つまり僊河青蓮の娘たちか何か、要するに僊婆の孫たちなんだろうって事事を──。
「何か?」
「あ、いえっ。あのオレ、何て言うか、あなた方のお祖母さんにですね、チョットお世話になっていた者なんです。だからきっと有勅水さんは、それで、急にオレを出迎えによこしたんだと思います」
「そう?」
……タママヨさんの声調はともかく、口調は恰も、寸鉄殺人ならぬ、寸語殺人級の
亡きお祖母さんへ、ガチの世話をかけたと思われちまったかぁ?