297 ___________ ‐2nd part‐

文字数 1,386文字

 ったく。はぁ? はこっちの感嘆詞だっての。

「知らんけれど、わかって欲しけりゃ、わかるように言えよなっ」

「フ~ン。でもなんだか、暫くってカンジよね水埜? 少し見ない内に、どこか変わった印象だわ。精悍になったと言うか、(やつ)れたと言うか、顔が益益小さくなって。でなければ、肩幅の方が広くなったのかしら?」

 チッ……草豪一人に狼狽えている内に、明王どもの本隊までが到着しちまいやがったぁ。
 その上、剣橋は剣橋で「元気そうで何よりね」と、また随分な御挨拶だこと。

「ウン、そうねぇ。ホント目つきもなんだか以前と違って、チョット気軽には、声をかけられなくなったカンジがしちゃう。水埜も、この一箇月余りで成長したわけね」

 ……川溜まで、そんな放言をしやがるか? 

「悪かったなぁ、僊河姉妹が帰った途端、気疲れが本格的に祟り返しちまって、ガチに今朝までブッ倒れてたんだよ。笑いたけりゃ笑えっ」

 オレは、腹と言うよりケツを割っちまうしかなかったってのに、剣橋は目つき一つ変えずに言ってくれる。

「そう? それはお大事に。休み中はお互いいろいろあったから。それで? オープニングの方はどうだったの、盛況だった?」

「……オープニング? 何の」

「ダメダメ理知華、こいつマジで、全然さっぱり何にもわかってないみたいだから。単にズルして、のらくら出て来ただけなのよ」

「ダメダメ、ズルズル言うなってのっ」──マズい、マズいよなぁ。この状況で草豪が逃がしてくれる道理がないぃ……。

「言ってないけど、ズルズルなんて」

「……今朝だって、まだ体調が悪かったのにムリして出て来たってのに。のらくらしたっていいじゃんか」
 ワザとらしいことこの上ないけれど、一応咳き込んでも見せてみたりして、ゴホゴホ……。

「しっかりなさいね、ちゃんとそれなりの自覚をもって。まぁ、とり敢えずはおめでとう。また僊河姉妹が日本に来たら、送別会が開けなかった分まで歓迎してあげましょうね。では咲実と梓と私はこれで」

 へ? また何が、おめでたいって言うんだ剣橋は? それに三人って、じゃぁ残りの二人、金樟とこの草豪はぁ?

「ほら、ズルはランチで内緒にしてあげるから、モタモタやってないで、事務局へ行って来ちゃいなさいよ。当然、学外のデザート付きだからね」

 そう草豪はオレの背中を押しやがるけれど……剣橋は、金樟までこの場に残して、オレが来た方へと曲がり、どんどん行っちまう。

 よくわからんけれど、要するにタカりかよ~。
 二人してサイフでも忘れたってか? でも選りに選って、なぜにオレなんかに昼メシを? 
 
 それとも、またオレをもっと別の面倒事に引き込もうって狙いかよ?
 だよな、そうに決まってる。だからこそ剣橋は、またゴリ押しのエキスパート草豪と、万事を駆け引きで生きてるような金樟の、最強タッグを差し向けてきたんだ。

 事務局へと歩きだしながら、物凄~く憂鬱になってくる。
 でも、もうズルはやっちまっているわけだし、草豪にマジでチクられたら、去年のズルまで誰かが思い出して、疑う余地ナシってことになりかねないし……。

 事務局長に目をつけられると、この先、卒業したあとも、何かと煩わしいことになるって噂なんだよなぁ。
 でも、ズルをネタにタカられるのも、また妙な役まわりを強要されるのも嫌だ。こうなりゃもう、オレも伸るか反るかの対抗手段に出るしかない。
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登場人物紹介

登場人物につきましてはイントロ的に一覧で掲載しておりますぅ


当作は主人公:楯の一人称書きをしておりますので、本編内で紹介されるプロフィール情報のムラは、楯との関係性によるところが大きくなりまっす


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