240 _______________ ‐2nd part‐
文字数 1,527文字
だのに葉植さんも、まざまざと伝わってくる存在感そのものは、いつもと変わらず至ってフツウっぽくって……ホント、何がなんだか?
プレハブの中と外では、世界線自体が違うんじゃないかぁ?
「いやはや、フツウ考えもしないテレパスなんかが現れては、通常では完璧な証拠隠滅にも、破綻が生じる。熟思した愚策が、本当に愚策と化してしまう」
「だねだね~」
「通常では完璧だったがゆえ、今更ヘタに動けないし。疑いながらも裏を取った警察が、ボクを訪ねて来るXデイはいつなのかって、ここ一週間は、熟睡できないほどの妄想に苛まれる毎日だったんだ」
「うんうん」
「ボクの行動が度を超えていたとしたら、それは、あなたたちへの畏怖の念が、初めて会ったその須臾から、潜在意識に強烈に刷り込まれたからさ。別にこの期に及んで、責任を少しでも転嫁しようって意図でうち明けてはいないんだけど、それは間違いない」
「フーン。そんな葉植木春菊を、内側から暴慢に支えてるあのコへの気持が、ワタシたちとの契約期間が終わるまで、長続きするといいんだけど」
「……続くさ。だって、あのコは変わらない、あのままずっと、きっと……」
「あ、それから、二番目に殺しちゃった楯の同級生のことを、できればどうにかして欲しいんだよ」
「……根上翔輔って方? どうにかって?」」
「今のままだとお葬式ができなくて、悲しみきれないコが出ちゃうから。きっと楯も、あのコと葉植木春菊のことを、突き止めようとするのを諦められないんだよ」
「ん、らしくないのにね。ボクも、楯クンの同級生が二人もだなんて偶然には、ムカつかされたよ。ホント、つくづくツいてない。世間が狭いってことは、しっかり間尺 に入れていたんだけどね」
「で、どうどうなのなの?」
「たぶん、葬式はできると思うよ。楯クンの同期連中が、SNSを中心に展開している根上翔輔の名誉回復運動に、ボクがお祖父ちゃんだとわかる文体で参加して、彼女たちの所思 への賛同を促してもあるから」
「う~ん?」
「無関係なことだろうと、お祖父ちゃんが発言すれば、敏感に反応を示す、文化人や出版関係のお偉いさん方が少なくないんだ」
「うんうん」
「畢竟 、週刊誌なんかで、警察の見解が再考されれば、それで世論は簡単に掌を返すさ。さっきの話じゃないけど、人間てのは、どうでもいい相手のことなんか、ホントどうでもいいからね」
「うんうん、だよだよ~」
「そんな世間のほとんどは、あとから与えられる情報に上書きされるどころか、すっからかんと忘れてて、新規の書き込みも同然だしさ」
「じゃぁ、その週刊誌が出るまで、眞弓たちを応援してあげてあげて」
「ウ~ン。まぁやってみる。お祖父ちゃんから出版社へ直接──」
「葉植さん! どう言うことか説明してよっ。根上や緑内を殺しただなんて、悪い冗談にもほどがある。それに、男だったなんて……そんなの、そんなことあるわけないじゃないかっ」
辛抱堪らず、オレはプレハブ小屋へ駆け込むなりそう吐き出していた──。
真正面で、オレのデスクチェアに馬乗りしていた葉植さんは、何度か目を大きく瞬 かせたあと、スグまた毎度の表情のない顔つきへと戻ったものの、オレの闖入 には驚いたと言うより、迷惑そうに受け取れる。
……それに葉植さん、なんだか今日は、目に馴じみのない活動的な格好をしてる。
上から下までダークカラーのジャストフィッティングで、エプロンみたいなオーヴァーワンピの裾から続く、九分丈のスリムジーンズ。
鉛灰色のソックスに黒のプロケッズが、如何にも軽捷な行動派ってカンジ。
それが、たちあげられていたオレのPC画面に表示される、バナー広告の粗放 な動きとは対照的に、なぜか、とても不吉な予感を喚起させてくれた。
プレハブの中と外では、世界線自体が違うんじゃないかぁ?
「いやはや、フツウ考えもしないテレパスなんかが現れては、通常では完璧な証拠隠滅にも、破綻が生じる。熟思した愚策が、本当に愚策と化してしまう」
「だねだね~」
「通常では完璧だったがゆえ、今更ヘタに動けないし。疑いながらも裏を取った警察が、ボクを訪ねて来るXデイはいつなのかって、ここ一週間は、熟睡できないほどの妄想に苛まれる毎日だったんだ」
「うんうん」
「ボクの行動が度を超えていたとしたら、それは、あなたたちへの畏怖の念が、初めて会ったその須臾から、潜在意識に強烈に刷り込まれたからさ。別にこの期に及んで、責任を少しでも転嫁しようって意図でうち明けてはいないんだけど、それは間違いない」
「フーン。そんな葉植木春菊を、内側から暴慢に支えてるあのコへの気持が、ワタシたちとの契約期間が終わるまで、長続きするといいんだけど」
「……続くさ。だって、あのコは変わらない、あのままずっと、きっと……」
「あ、それから、二番目に殺しちゃった楯の同級生のことを、できればどうにかして欲しいんだよ」
「……根上翔輔って方? どうにかって?」」
「今のままだとお葬式ができなくて、悲しみきれないコが出ちゃうから。きっと楯も、あのコと葉植木春菊のことを、突き止めようとするのを諦められないんだよ」
「ん、らしくないのにね。ボクも、楯クンの同級生が二人もだなんて偶然には、ムカつかされたよ。ホント、つくづくツいてない。世間が狭いってことは、しっかり
「で、どうどうなのなの?」
「たぶん、葬式はできると思うよ。楯クンの同期連中が、SNSを中心に展開している根上翔輔の名誉回復運動に、ボクがお祖父ちゃんだとわかる文体で参加して、彼女たちの
「う~ん?」
「無関係なことだろうと、お祖父ちゃんが発言すれば、敏感に反応を示す、文化人や出版関係のお偉いさん方が少なくないんだ」
「うんうん」
「
「うんうん、だよだよ~」
「そんな世間のほとんどは、あとから与えられる情報に上書きされるどころか、すっからかんと忘れてて、新規の書き込みも同然だしさ」
「じゃぁ、その週刊誌が出るまで、眞弓たちを応援してあげてあげて」
「ウ~ン。まぁやってみる。お祖父ちゃんから出版社へ直接──」
「葉植さん! どう言うことか説明してよっ。根上や緑内を殺しただなんて、悪い冗談にもほどがある。それに、男だったなんて……そんなの、そんなことあるわけないじゃないかっ」
辛抱堪らず、オレはプレハブ小屋へ駆け込むなりそう吐き出していた──。
真正面で、オレのデスクチェアに馬乗りしていた葉植さんは、何度か目を大きく
……それに葉植さん、なんだか今日は、目に馴じみのない活動的な格好をしてる。
上から下までダークカラーのジャストフィッティングで、エプロンみたいなオーヴァーワンピの裾から続く、九分丈のスリムジーンズ。
鉛灰色のソックスに黒のプロケッズが、如何にも軽捷な行動派ってカンジ。
それが、たちあげられていたオレのPC画面に表示される、バナー広告の