310 まだ波動えたいことがあるんだ ‐3rd part‐

文字数 1,185文字

 そして、ジェレさんが騒いでいるのが、オレとヴィーだってことで、救急車まで呼ぶ必要が本当にあるのかと、セレモニー中に水を差された女神様は、懐疑的な反応を示している……。

 なーんかヤバげ。
 有勅水さんには、まだオレの作戦が失敗したことを、きちんと報告できていなかったんだよね……。

 オレも、特待生になれちまったって奇捷(きしょう)でもって、冥罰は不問に付してもらえないかなぁ。

 とにかく、救急車だけはスグに呼んで欲しいんだけれど。
 オレだけのためじゃなく、きっとテラスの下で大ケガしていて、それこそキレイな脚をズタズタの台ナシにしちまっているだろう、救いようもなくダメダメなヴィーのためにもね。

 ──でも、ホント。なんとなく、状景として見えたわけでもなく……声として耳に響いたわけでもなく、ユラユラ……グルグル……オレの頭の中でわかる。

 なぜか、さらに、ミラノがベッドの横で、受話器を握り締めながら、立ち尽くしているのもわかる。
 暗い部屋で、枕元に置かれたスタンドの、小さな光が照らすだけなのに、その顔が涙でグシャグシャなのも。

 届いていたオレのブルーレターを、封も開けぬまま枕の下に入れて、オレが途中で起こしてしまったものの、自分が双子の娘を産むなんて夢を、ぬくぬく見ていたことまでも……。
 そして、とにかく、オレまで死んではダメダメって、混乱しきっていることがわかる。
 ……そうなんだ? グアスタさんはとうとう……。

 悪かったよホント、今更だけれど、猛省どころか、もう慎んで、悔い改めちゃってます~。

 ミラノは、こんなことになる前に、ちゃんと教えといてくれたのにね。ヴィーはもう、以前のヴィーとは違うかも、って。

 随分前にも、徒疎かにしてると怖いって……。
 それに、
≪どんな物だって、ちゃんと固有の波動を発してて、しっかり自己主張してるんだからぁ。人間だって物だもん、粗末にしたら可哀想なんだよ≫
 とも、確か言ってくれてたし。
 忘れてはいなかったんだけれど、オレって、ホント頭悪いもんだから……。

 でも、そんな、泣かないでよミラノ。オレは本当、ガチに大丈夫だから。

 今、オレは、最高にツいてるみたいだし。とにかく、自分なりに諦めずに、ガンバってさえいればどうにかなるって、この一箇月で、身をもって経験済みなわけだし……。
 今度だって、きっとヘッチャラこんだよ。

 ──ただチョット、傷口の周りを除いて肌寒いカンジがするだけ。……なんだか、眠いと言うか、目がかすむと言うか……視界が、薄暗くなってきただけ……。

 それに、妙に気分がいいんだ……なんか、勝手にいろんなことが、清清してきちゃってるんだよねぇ。

 やっぱりイカレちまったのか、スマホも、今度はなかなか鳴り止まなかった。

 いつしか、それに合わせるように、オレの耳にはぼんやりと、優しげな乙女たちの四重唱が聴こえていた。


【 訖 】
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登場人物紹介

登場人物につきましてはイントロ的に一覧で掲載しておりますぅ


当作は主人公:楯の一人称書きをしておりますので、本編内で紹介されるプロフィール情報のムラは、楯との関係性によるところが大きくなりまっす


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